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MASERATI/Z

★★★★

事故により急逝したドラマー/Jerry Fuchs参加のラストアルバム"Pyramid Of The Sun"から2年。往時の構成が素晴らしかっただけに、なんとなくこのまま消滅してしまうんだろうなぁとちょっぴりセンチな気分に浸っていた自分にとって、わずか2年のスパンでリリースされたこの新作は嬉しい驚きだった。

ドラマーにCINEMECHANICAのMike Albaneseを迎えて製作された5thアルバム。マシーンのように精緻なJerryのリズムこそ無くなったが、代わって持ち込まれたアグレッシヴな展開が熱い。おそらくはこれまでで最も「攻めている」アルバムだ。フロアを揺らすアッパーなビート、宙を穿ち、旋回するスペィシーなギター・リフが炸裂するオープナー"San Angeles"は、加味されるシンセがどこか近未来チックなフレーバーを醸し出す。他にも"The Eliminator"や"Earth-Like"といった楽曲では、従来のバンドサウンドをビルドアップしたようなアグレッシヴさが見える。対して"Martin Rev"を筆頭に、個人的には本作中のベストトラックだと感じる"Abracadabracab"や"Solar Exodus"といったトラックでは、ミニマムな音数を効果的に鳴らし拡げていくサウンドでサブリミナルな感情を刺激する。

ドラマーが代わったとはいえ、そこにCINEMECHANICAばりのマス・コアな展開を持ち込むわけでなく、ベースに拡がるのは驚くほどに「これまで通り」のMASERATI節だ。反復という名の「リフ・レイン」を降らせるディレイ・ギターの合唱は随所でこれまでになく攻めており、片やそのギターを押さえ、太いリズムと、終局の解放へと向けて抑制された電子音を配置する楽曲においては従来型を脱構築しようとしているようにも聴こえる。

失ってよりいっそうその偉大さが分かるJerryのリズム。あのグルーヴ感を超えることはおよそ容易ではないけれど、その大きな山へ向かう力強い一歩がハッキリと感じ取れた良作。

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