THE BLACK ANGELS/Passover

★★★★

テキサス州オースティンの6人組による1st。Brian Jonestown Massacreより脈々と連なるこのドラッギーな西海岸サイケ・ガレージサウンドは、もう個人的にドツボなわけで。非常に昂奮します。

暴力衝動を喚起する歪んだギター/ベースの反復と、バシバシと叩き込まれるひしゃげたドラム・ラインの重たいループ。背後で蠱惑的にクネるキーボードがもたらす酩酊がそこへ加われば、抗い難き魅力を放つ強烈にドラッギーな音場が立ち現れる。

紫煙漂う地下世界の暗い昂揚・・・
そんな情景を想起させる鍵盤の旋律が湧き上がるTr.2"The First Vietnamese War"を聴けば、BRMCWarlocksLow Flying Owls好きなんかはもう一発でやられるはず。粗く凶暴にひずんだリフが突き刺さり、ラリった歌唱から突発的に吐き出されるヴォーカルと共にファズ/ノイズが吹き荒れるTr.3"Sniper at the Gates of Heaven"を始めとし、アルバム前半部ではS3やJ&MCからの影響が特に色濃く感じられる。

さらには終盤。どこまでもロックな原初の音塊を、ラリっていながらもストレートにぶつけてくるTr.8"Better Off Alone"はStoogesへの傾倒を感じさせ、続くTr.9"Bloodhounds on My Trail"はそのブルージーなガレージ・サウンドがClinicあたりを思わせる。そしてラストトラック"Call To Arms"は、全ての始祖たるVelvet's直系の音模様・・・その爆走っぷりが素晴らしい。

この系譜における音、それ以上でもそれ以下でもないけれど、↑に挙げたバンド・サウンドが好きな人は是非ご一聴を。時間を割くだけの価値はあると思います。

Directions To See A Ghost

★★★★

テキサス州オースティンのサイケ・ガレージバンドによる2nd。根本の仕様は変わらずも、「BJM直系〜」とか書いておけばとりあえず事足りた前作と比べると、文字通り化けた!ナイスな内容になっている。

とりあえず「ヴォーカルこんな良かったっけ?」と昂奮しながら首ヒネる、Alex Massの変化はイリュージョン。気怠るいダンスを踊る歌唱のフラツキが、全体を幽玄的な怪しさで囲い込む。変な話、眩いギターが降り注ぎ、底抜けのリズムが踊る"Doves"なんて、Ian Brownの亡霊めいたヴォーカルも相まってまるでSTONE ROSESのよう。ただしズブズブの沼地にハマったローゼズ。この、やる気があるのか無いのかわかんない声と歪んだリヴァーヴ空間が、独特の気配を醸してるのは間違いない。

WARLOCKSの破滅的な陽性とはまた違い、既に死んだ人間がこの世に戻って楽しんでるような不気味な音界。撓んだ全体を膨張したリズムが牽引し、ファジーなギターの轟音が其処彼処で邪悪に充満する。

シタールの調べを練りこんだ"Deer-Ree-Shee"、一層のオリエンタル・カオスにうずまりながら、中盤から一転して攻撃的な音像が走り出す"Never/Ever"などで見られるように、トラック毎の色づけも巧みにこなす。その一方で、あくまで楽曲個別的な印象が強かった前作と比較して、圧倒的にトータルのムードが勝ってる今作は、まさにそれこそが勝因。得体のしれないヴェールを纏った音像に、類似バンドから一歩抜き出た感触を覚えました。

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Phosphene Dream

★★★★

THE WARLOCKSと並び、BJM直系のイカしたサイケデリック・ガレージを鳴らすTX州オースティンの6人組。個人的に大っ好きなバンドなのになんてこったい!2010年リリースの本作をすっかり見逃していた。で、Grumble Monsterさんのレビューを見て慌てて購入。

さながらIan Brownの亡霊が降りたかのようなvo./Alex Massの変幻に魅せられた前作"Directions To See A Ghost"に続くこの3rdアルバムでは、プロデューサーに敏腕Dave Sardy(Oasis、The Dandy Warhols、The Icalus Line…etc.)を迎え、バンドの持つユニークなヴィジョンに、さらなる深みや揺れを加えることに成功している。

気怠るく、退廃的なビートとファジーなリフに釣り込まれるオープナー"Bad Vivrations"は一転、終盤にきてその酩酊をカチ割るかのような加速を見せる。この、従来路線にプラスαを織り込むアプローチにとどまらず、本作でバンドは、これまでのドラッギィな"お花畑"の酩酊だけでない多様な「60sサイケデリア」を混入させる。そこにはある意味"誰が聴いても格好よい"サイケ・ガレージだけでなく、シニカルに歪んだポップネスや、重厚なのにやけに透き通って見える幻想のヴェールを見ることができる。そうした先人から連綿と受け継がれる「サイケデリック」なエレメントが、非常にセンス良く鳴らされているナイスなアルバム。FUJIでライブ見れた人が羨ましい!

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