THE WARLOCKS/Phoenix

★★★★

LA発の一応7人組(メンバー出たり入ったりしてるから、良く分からない・・・)、Warlocksの2nd。強烈な陶酔感を生み出すサイケデリックなサウンドと、驚くほどに素直なメロディーが理想的な形で結びついた、最高のサイケガレージロックアルバム。ギターが4人にドラムが2人っていう構成からも分かるように、聴覚を刺激する音が次から次へと波のように押し寄せてくる(そしてなんとギターにはソニックブームも参加している)。

ラウドなギターとベースが反復するコードを刻み、徐々に覚醒感を膨らませていくTr.2や、シタールやハーモニカ、オルガンにラップスティールと、大編成バンドであることを最大限に生かした音の洪水に身を委ねていると、この上ない気持ちよさを感じることができる。持ち味である音の覚醒感はそのままに、それを自分たちだけのオナニーに終わらせることなく、よりアクセッシブルなサウンドとして作り上げたこのアルバムは、お見事の一言。

Surgery

★★★★☆

 3本のギターとツインドラムを擁するL.Aの7人組、The Warlocksの3rdアルバム。前作ではソニック・ブームがゲストギタリストとして参加するなどして話題になったが、この"Surgery"は前作以上にストレートな昂揚感/陽性のヴァイヴ満ち溢れる、非常にアクセッシブルな作品だ。

 そのドラッギーでサイケデリックな質感はそのままに、従前まで大勢を占めていたドローンな雰囲気が良い意味で削ぎ落とされ、陶酔の音因子が実にストレートに聞き手の昂揚感を掻き立てる。嫋やかに織り込まれるめくるめくファズの洪水を背景に、扇情的なギターリフを出し惜しみせずに爆発させるタイトルトラック"It's Just Like The Surgery"からしてそれは顕著で、終局のカタルシスに至るまである一定の忍耐を必要とした前2作(とりわけ1枚目)とは対極に、ストレートに感覚中枢を刺激する楽曲が大半を占めている。「ドリーミー」「スウィート」なんて形容をこのバンドに用いるなんて思いもよらなかったが、Tr.4"Angels In Haven, Angels In Hell"において溢れ出す甘美なノイズの奔流と浮遊感、胸を甘く締め付けるメロディと柔らかなディストーションギターの咆哮が織り成す空間は、J&MCを思わさずにいられないビタースウィートなノイジーチューン。The Raveonettesの新譜に肩透かしを喰らったように感じた人には是非とも聞いてほしい、素晴らしいナンバーだ。

 全11曲中、演奏時間が5分を超えるものは3曲だけ。このことからも、弾き出されるアンサンブルがいかにタイトになったかが分かるだろう。「ドラッグをやりながらドラッグに浸るための曲を作っていた」彼ら。クスリの幻覚に引きずり込まれず、そこから得られる昂揚感のみを引き出し、音に昇華させたような楽曲群。かなりの良盤。

Heavy Deavy Skull Lover

★★★★

カリフォルニアのサイケ・ガレージバンド/The Warlocksの4th。レーベルをTee Pee(Brian Jonestown Massacre、Earthlessなどが在籍)へと移籍し、4人体制でレコーディングされたらしい。ハイな多幸感を放出した前作"Surgery"が一種躁状態のアルバムだとしたら、今回のサウンドは多分に鬱的。前回とはまた違った鳴りを見せるノイズが、しかし非常に気持ち良い。

ドラムレスで、ひたすらにメランコリックなアルペジオが彼岸で紡がれるTr.1"The Valley of Death"。その聴感はまるで瀕死のレディオヘッド(笑)。ただちに死んでしまいそうなか細く儚いヴォーカルが揺れ、その遥か後景では幾重にも被さった深いノイズが鳴っている。反復するベースライン/伸びやかに咆哮するディストーション・ギターが共鳴し、ノスタルジックな歌を支えるTr.3"So Paranoid"は、Galaxie 500を思わせる柔軟で、しかし力強い昂揚感。深いリヴァーヴの中、異常に歪められたギター・ノイズが轟くTr.4"Slip Beneath"は、MBVの甘美的な空間が抽出されたよう。

ギター・ノイズへの偏愛っぷりがマジマジと伝わってくる音作り。冒頭で「鬱的だ」と書いたが、己の内へ自慰的に篭るだけのツマラン作品ではなく、中後半にひたすら爆音に塗れたナンバーを配置する他、メランコリックに堆積する楽曲においても、聴き手もろともその澱に沈み込め酔わせてしまう強烈な引力がある。ファジーなオルガンが鳴り渡り、オリエンタルなギター・ノートが明滅するラストまでしっかりと惹きつける。ドラッグ喰らって、どうにもならんジャムをグダグダと演ってた最初期と比べると、最近では非常に"健全な"キモチ良さが出てきてるような。個人的にかなり好きなバンドです。ライブ観てみたいわ。

Mirror Explodes

★★★★

1年程の短スパンでリリースされた5thアルバム。レーベルは引き続きTee Pee。果たして今作で聴かれる音もまた、浮世離れして美麗な彼岸花を咲かせるサイケデリック・ガレージロック。まるで福音のような純白のノイズが横溢した前々作、ひたすら内へ内へと篭りながらも、その果てに途轍もない恍惚を拓いて魅せた前作に勝るとも劣らないアブナイ曼荼羅様が、此処でもまた描かれる。

かつて「ジャム・セッション」と呼べるかどうかも怪しい酩酊音を延々繰り広げていたのは既に昔。今作では明確な意図を孕んだ音と音とが共鳴する、凝縮された全8トラックが連鎖。気怠るく、亡羊とした景色の中で、アノ世へ先導するような単音ギターが鳴り渡るTr.1"Red Camera"、あらゆるコトをヤメてしまいたくなる甘やかなメロ/ファズ/ノイズが充満するTr.2"The Midnight Sun"へと連なる序盤で早々にワタシのココロは陥落よ、、、どこまでもどこまでも際限なく沈み込んでいくような世界観は不動。凶悪なまでにナイーヴで、胸をエグるほどに鋭い感傷の破片が織り成す音像は、回を重ねるごとにその細部に至るまでの美しさを増している。甘やかな昂揚と、鉛色の焦燥/不安が交互に押し寄せる43分間に脳内で溺れ死ねばいいと思う。一度でいいから生で触れてみたい・・・

http://www.myspace.com/thewarlocks



back