GALAXIE 500/Today

★★★★☆

1987年、共にケンブリッジ大の学生であった
Dean Wareham(guitar,vocal)
Damon Krukowski(drum)
Naomi Yang(bass)
の3人により結成。

Galaxieサウンドを色で思う時、浮かんでくるのは青と白。青は穏やかな凪ぎの海であり、また内に強い熱を孕んだ青の炎でもある。そして周囲を漂う白い霧の幻想。幼少期の憧憬と、決して後ろ向きではないメランコリーが絶妙に溶け込んだ彼らの音は、時に柔らかく、時に激しい昂揚が渦巻く世界への扉を開き続ける。

この88年リリースのデビューアルバムから、既にその音のスタイルは確立されている。第4のメンバーとも言える名プロデューサー/Kramerは、ともすれば『ヴェルヴェッツ好きな垢抜けないインディーバンドの1つ』に陥りかねないその音に、リヴァーヴという幻想の膜を厚く多い被せることで、その楽曲の本質的な魅力を突出して感じさせることに成功している。

バタつくドラムと、たどたどしく紡がれ震えるギターの旋律。朴訥なベースラインと共に揺らめくボーカルが穏やかな昂揚を醸成していく。Tr.3"Parking Lot"で息せき切って駆け抜ける、新緑の如き初々しいアンサンブル。強烈なリヴァーヴの霧中を歌が漂い、やがて何度も小爆発を繰り返す歪んだギターが立ち現れるTr.9"Tugboat"

メロディも、そのアンサンブルも、決して高いクオリティを持っているとは言えない。しかし既にしてこれは完璧なギャラクシー・サウンドであり、無二である。ここから彼らの旅が、始まった。

On Fire

★★★★★

89年リリースの2nd。前作よりもそのメランコリーの色合いを濃くしたメロディ、旋律がゆっくりと蕩揺たう"Blue Thunder"によるオープニング。終盤のファルセットにより、霞がかった美しい群青の世界へと聴き手を連れ去っていく。

前作に比べ、より強くスポットライトを浴びて輝く歌。感傷の源をそっと包みこむようなその歌は本当に素晴らしく、シンプルでありながらこれ以上ないほどの昂揚感で心を高めてくれる。その時々によって別方向を向いていたアンサンブルのベクトルも、本作ではその歌を中心にしっかりと脇を固めるようであり、楽曲トータルの完成度が格段に高まっている。

それぞれの相乗で全体を盛り立てると共に、各器楽のフレーズもまた、さらにその響きのインパクトを強めて耳に届く。ほぼ全ての楽曲の終局で立ち上がるDeanのギターソロは、本当に身体が痺れるほどにカッコ良く、メロディを裏からなぞる粒立ったベースラインもまた同様に素晴らしい。

彼方で打ち震えるタンバリン、力強いドラムの拍動と共に、眩い光を湛えた美しい稜線を描いていくシューティング・ギター。胸を熱く焦がすセンチメンタルなサキソフォンが、青から橙へと景色を染め替えていくTr.5"Decomposing Trees"は、今作における個人的なベストトラック。素晴らしい作品だ。

This Is Our Music

★★★★★

90年リリースの3rd、にしてラストアルバム。そして個人的には彼らのベストアルバムだと思う。柔らかな光を横溢させながら紡がれるメロディと歌。視界を仄白く霞ませる、リヴァーヴがかったノスタルジックなサウンド・アレンジメントの景色の中で次第に熱を帯び、終局で膨大なカタルシスを描き出すギター/ベース/ドラムの至高のアンサンブル。ヴェルヴェッツ・チルドレンと言われた3人は、もはや本家を越えんばかりの昂揚を此処では産み出している。

全ての楽曲はその全ての面において、従来の一つも二つも上を行く素晴らしい完成度を誇っている。中でも個人的に大好きなのが下の2曲。

Tr.1"Fourth Of July"
フィードバックノイズによりフェードイン。宝石を散りばめたように美しく、粒立ちの良いベースラインが素晴らしい。その光の絨毯をマーチするドラミングの洒脱なリズム・・・スポークン・ワーズを交えて紡がれる珠玉のメロディの上昇気流・・・煌めくギターはどこまでも上へ、上へと高く昇っていく。終局でブワリとベースが膨張し、一気にドライブ感を増しての掛け合いは圧巻。全ての器楽が活き活きと奔放に咲き乱れ、そしてしっかりと全体で一つの大きな華と成り、美しく舞い散っていく。

Tr.6"Listen The Snow Is Falling"
クリア・ディレイの眩い残響がゆっくりと、次々に空間へと降りしきる。強くエコーがかったNaomiの歌は決して巧くはないが、聴き手の琴線をメランコリーと憧憬がゴチャ混ぜになった渦で洗い流し、言いようの無い感情の奔流と成って胸中を漂う。穏やかな立ち上がりからゆっくりと、そのアンサンブルの大洋は春の嵐へと巻き込まれていく。力強く叩き込まれるスネアの躍動、咆哮を挙げながら揺らぎノタウツ巨竜の如きギター/ノイズの爆発。天空へとマーチするドラムに担がれて、強烈なワナナキと共にディストーションギターが飛翔するラストが圧巻。

メロディ、演奏、アレンジメント、その全てが最高水準で結びついた感のあるこのアルバム。さながら白昼夢の如きアザーサイドを現出せしむる、多幸感に満ち充ちたギャラクシー・サウンドが完璧に描き出された傑作。

...This Is Our Music...
揺ぎの無い確固たる世界が 静かな昂揚を投げかける

http://www.myspace.com/galaxie500official