BLACK REBEL MOTORCYCLE CLUB/ST

★★★★☆

サンフランシスコにて結成されたBlack Rebel Motorcycle Clubの1st。バンド名は1950年の映画「乱暴者(あばれもの)」に登場するバイカー・チームから取ったそう。ロバート(B、Vo)、ピーター(G、Vo)、ニック(Dr)という黒ずくめの3人組が生み出したこのデビューアルバムは、強烈な覚醒感と轟音が渦巻く、とても3ピースとは思えない分厚いサウンドに覆われた傑作アルバムだ。

冒頭1曲目"Love Burns"では、沸々と湧き上がるようなアコギに生々しい低音を響かせるドラムが力強く絡み、そこへバーストしたギターが一気に雪崩れ込んでくる。そしてその轟音渦巻く、混沌とした音世界の深部へとさらに引き込むのがTr.2、"Red Eyes And Tears"。反復するリフとlyricsの背後で轟音ギターが唸りをあげるこの曲は、自らが影響を受けたバンドとしてS3やジザメリを挙げている彼らの音のルーツがはっきりと感じられる轟音サイケデリックサウンド。そしてアルバム中最も攻撃的に加速するガレージパンクサウンド、"Whatever Happened To My Rock'n'Roll?"では、荒れ狂うノイジーギターを背後に織り成されるロバートとピーターの掛合いが最高にスリリングな瞬間を生み出している。4曲目にして早くも一つの山場を迎えるのが"Awake"。アルバム中唯一、大々的にストリングスが取り入れられたこの曲は、しかしながらそのストリングスをかき消すかのような轟音ギターと「Take Me On...」と叫ぶボーカルと共に、強烈な覚醒感を撒き散らしながら昇りつめていく。圧巻。続く"White Palms"では、ギタリストのようにプレイするロバートの特異なベースサウンドが機関銃のように乱射されるブルージーなサイケデリックサウンド。"As Sure As The Sun"、"Rifles"で再び混沌とした世界へと引きずり込まれ、ドライブ感抜群のロバートのベースが再び炸裂する、必殺の"Spread Your Love"を経て、「救い」と名づけられた終曲によりこの轟音とカオスが渦巻く世界へ射し込む一筋の光が照らし出され、アルバムは幕を閉じる。

宗教観にも似た神聖な雰囲気が漂うこのアルバムにおいて、余計な装飾は一切なし。しかしそこで鳴らされているのは強靭な意志を持ったサウンド。故に強烈。陳腐な言い方だけど、「本当にカッコ良い」。

Take Them On,On Your Own

★★★★

前作から2年4ヶ月の期間を置いてリリースされた2nd。1stの世界観はそのままに、ストレートなロック色を強めた瞬発力のある曲群が増えている。

Tr.1の"Stop"は、彼らの持つ骨太なグルーヴ感とダイナミックな疾走感が絶妙に絡み合った、前作からの橋渡し的な役割ももった名曲。そして今作では、"Six Barrel Shotgun"、"US Government"、"Rise And Fall"、"Heart+Soul"などのように、前作では"Whatever~"でしか見られなかった、疾走するノイズギターと熱いエネルギーを放出するようにシャウトするボーカルが現れる、攻撃的でドライブ感のあるナンバーが印象的だ。特に終曲の"Heart+Soul"は、ファズギターと共にどんどん加速していくドラム、ベースが、前作とはまた違う高揚感を伴ったサウンドを生み出している。こういったストレートなナンバーが増えただけに、Tr.4、"In Like The Rose"では、前作譲りの暗い轟音が蠢くサイケデリックサウンドが、より強烈な存在感を放って鳴り響いている(個人的にはアルバムのベストトラック。終盤のたたみかけるようなギターとベースの展開が凄い)。

個人的には前作のほうが好きだが、今作は彼らの音の魅力がよりとっつきやすい形で現れている良盤だと言えると思う。

Howl

★★★★

 変転の3rd。前作リリース後、所属レーベルとの契約打切りやドラマーのニックの離脱などが相次ぎ、一時はどうなることかと思ったが、ニックともども無事に復帰し、今作のリリースと相成った。さて、冒頭で「変転」と書いたが、漆黒のグルーヴを打ち立てていた前2作から一転、今作ではフォーク、ブルース、カントリーといった、バンドの音のルーツとも言えるサウンドが色濃く滲み出た作品になっている

Time won't save our sowls...
冒頭、魂を揺さぶるようなコーラスワークにより導入される"Shuffle Your Feet"からして顕著なように、荒れ狂うファズギターは鳴りを潜め、アコースティックギターやパーカッションなど、生の響きを基調とした朴訥とも言えるサウンドが展開されていく。と書くとえてして地味な印象を抱きかねないが、各パートにエコー処理をほどこすことで深み・厚みを持たせたサウンドからは、これまでにない生々しい骨太さが感じ取れる。先行シングルとなったTr.4"Ain't No Easy Way"では、強靭に跳ねるドラムスにアコギの峻烈な響きが乗り、ブルージーなハーモニカとともに熱く・土臭い、新たなグルーヴを生み出すことに成功している、正直、Tr.11"Complication Situatin"のようなまんまディラン風な弾き語りナンバーには閉口したが、一方でTr.10"Gospel Song"やTr.13"The Line"の後半部などは、徹底的に純化された音が放つ光により、次第に神の世界へと肉薄していく、近年のSpiritualizedにも通じる宗教的な神秘性をたたえる素晴らしい楽曲。

 漆黒のグルーヴ渦巻く1st、ファズギターの錯綜する2nd、そして生の質感を全面に打ち出した今作と、常に変転する作風が非常に面白い。近々来日の噂もあり、これまた非常に楽しみだ。ちなみにUK限定盤は、絵本のような装丁で最後にCDが挟み込まれたお洒落な仕様。US盤はCCCDなのでくれぐれもご用心を。

Howl Sessions

★★★★

 詳細についてはイマイチ不明だが、3rdアルバムHowl製作時にレコーディングされ、そのアルバムでは未収となっていた6曲がカップリングされたLimited EP。

 「これはエドウィンのCMか!?」と思うような枯れたアコギが鳴り渡るTr.1"Grind My Bones"は、下手すりゃこのまま最後まで弾き語るかも、と勘ぐってしまうぐらいに地味渋な楽曲。続くTr.2"Mercy"は、トーンを上げた柔らかなアコギの響きとピアノがシンクロし、穏やかな上昇気流を形成していくノスタルジックなナンバー。ハンドクラップとバウンシーなリズム隊がチアフルに躍動するTr.3"Wishing Well"は、"Ain't No Easy Way Out"の双生児的楽曲であり、その流れのままに一層の勢いとロウな質感のグルーヴ渦巻くTr.4"Steel A Ride"へと突入する。その後グッとトーンダウン、伸びやかなスライドギターとピアノの旋律を基とし、闇から聖域を見つめるかのような厳かさを伴って響くTr.5"Feel It Now"へ。あらゆる者を赦し、サルベージする終曲"Pretend"へと至る。

 ここにサプライズは無い。Howlの世界観を副次的に再生したような楽曲群は、当然にして高いクオリティを持つものながら、既存のファン以外に訴えかける真新しさは無い。そういう意味でこのリリースは、いわば一種のファンサービスのようなものなのかも。しかし個人的にはそろそろデビュー時における混沌漆黒のサイケデリックグルーヴが懐かしくなってきた。

Baby 81

★★★★

4thアルバム。フォーク/ゴスペル/ブルースといった自らの音のルーツを(半ば露悪的に)曝け出して見せた前作"Howl"の渋い世界から一転、今作では再びプリミティヴな音の衝動を解き、シンプルでストレートな昂揚を煽る刺激的な楽曲群で攻めている。

空間をなぶる野太いベースリフ、ささくれ立ったファズギター、荒々しくリズミカルに打たれるドラムライン。原初的で暴力的で抜群の破壊力を伴った、分厚く熱いバンドサウンド。アップテンポに畳み掛け、その怒涛を叩き込む直情型のロック・ナンバー"Berlin""Weapon Of Choice"、暗闇の鮮やかな高揚を描くようにカラフルなメロディが踊る"It's Not What You Wanted"、降り注ぎ拡散する旋律が、憂いを伴った恍惚を醸成する"All You Do Is Talk"、大胆にトグロを巻く漆黒のダイナミズム/熱を帯びやがて弾ける音のグルーヴが素晴らしい"Lien On Your Dreams"、反復する音の扇動性を知り尽くした3人が織り成す、混濁と酩酊の快楽世界"American X"に至るまで、絶妙に色づけられ放たれる漆黒のサウンドは、これまでに無くストレートにこちらの昂揚中枢に揺さぶりをかけてくる。

生々しい重みと肉感的なグルーヴを放つ音塊を基盤に、それぞれに異なる表層を与えて送り出される楽曲は、どれもこれも非常にアクセッシブル。スタイルとしては2ndに最も近いのだが、種々の創作を行う中途で、最終的には自らのプリミティヴな音の基盤部(の勢いや衝動)に呑まれるに任せてしまった感のするそれに対し、本作では最後まで放棄せず、その魅力的なサウンドの色づけを徹底してやり抜いたような、そんな意志の強さとでも言うべきものが感じられる。

その真意は不明ながら、これまでになくストレートな昂揚感を響かせる楽曲群からは、『原点回帰』的なナチュラルさというよりも『存在の証明』とでも言うべくバンドの強い自我や意識を感じる。Strokesと同時期に登場し、New Rock Generationsと煽り立てられたデビュー時の狂騒は、ココ日本においては今では見る影も無いけれど、これだけカッコイイ音を鳴らすバンドって、たぶんそうそう居ないと思う。今作もオススメです。

Beat The Devil's Tattoo

★★★★

ダウンロード・オンリーの5th、および初のライブ盤を経てリリースされた6thアルバム。先に編成のことを書いておくと、今作ではかねてより不安定な動向を見せていたドラムのNick Jagoに代わり、The Raveonettesのツアー・ドラマーも務めていたLeah Shapiroが加わるという新体制となっている。

が、イントロが鳴った瞬間にそうだと判る、その音が放つアイデンティティはまるで変わらず。警告めいた光を放つ硬質のクールネス、揺らぐ紫煙のような退廃の色香が匂い立つ漆黒のグルーヴ。泥臭いパーカション、気怠るい歌唱が輪廻し有機的な轟音へと膨れ上がるオープナー"Beat The Devil's Tattoo"からしてカッコ良すぎる!泥臭いそのルーツを曝しながらも、今時のスマートさを十二分に備えたプリミティヴなロケンロー。3rdを洗練したようであり、2ndを煮詰めたような、あるいは1stを膨らませてみせたようでもある印象の今作は、要するにこのバンドでしかありえない音を鳴らす、裏切ることのないヴィジョンに充ちている。

ライブではかなりヤヴァいことになりそうな"Conscience Killer"は、かつてなく性急に爆ぜる音がコトバが鮮烈なキラーチューン。韻律や歌いまわしにOASISばりの大衆性も感じる"Shadow's Keeper"、紅蓮のノイズが背後で迸る"Mama Taught Me Better"、日常のささやかな祈りにも似た光が充ちる"Sweet Feeling"、振り落とされるヴァイオレンスなリフに、「声」という人力の昂揚が混濁する"Aya"などなど、随所で殺傷性の高い爆弾を炸裂させながら、ある意味一つの到達点でもあった4th"Baby 81"をうまい具合に煮詰め、溶解させている。そうした意味でアルバム全体が描く輪郭は少し漠とはしているが、それが逆に全像のスケール感を増しているようにすら感じられ、なにより、アルバム全体が描くバランス感がかつてなく素晴らしい!アコースティックな柔らかさ、ブルージィな渋み、パンキッシュな鮮烈さ、あるいは剥き出しの煽情性までも、そのどれもがナチュラルにハマって響く今作の出来は相当に良い。内々のゴタゴタは別として、作品としてはかなり良い具合に数を重ねていっている感じがする。そしてそして、祝・来日決定!

http://www.myspace.com/blackrebelmotorcycleclub



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