英国/ロンドンのポストロックバンドによる09年発新作。EP等も合わせるとこれが5作目になるようだが、正直、こんな良いバンドが居たのか！と驚いた。ピアノ/ストリングスを多用したインストゥルメンタル・ロック、と言えばそれだけなんだが、初めに「あ、なんかイイな」と感じた感触が、5回6回とリスニングが回を重ねる毎にどんどんと膨張。気づけばドップリとその深い音の重奏に魅せられていた。バンド自身、自らのサウンドを「聴く毎に違った表情を見せていく」と言うように、シンプルなようでいて、その実無限にも近しい万化をみせる音のレイヤーがたまらなく気持ち良い。
ピアノの打音が柔らかに揺れるナイーヴな情操曲"Dream"に導入され、一変、APOFも思わせる蒼きセンチメンタルが吹き荒れる"Black Snow"へ。リリカルなフレーズがループ/ループし気づけば次のフェーズへと移行している滑らかな音の嵐は、ひとときも途切れることなく時に静かな吐息を洩らし、時に感情の極相を突き破る爆音のクレシェンドで景色を様々に変えていく。所々で滑らかな渦を巻き、しかし一片の澱みもなく奔る川面を見るような、清々しいまでに澄んだ音の連鎖模様。例えばそのスタイルとしては、TRACER AMCやALWAYS THE RUNNERあたりともリンクするんだが、決定的に違うのがそのリズム。聴感上のスムーズさに隠れがちだが、相当にユニークな拍子立てで現れる楽曲群こそが、先に書いた「聴くたびに〜」といった感触の源泉かもしれない。とにかく、素晴らしい。ポストロック以降の新たな流れを感じたSHELTER REDやASIWYFAFといったバンドとはまた違った方向で、同じくその萌芽を感じるサウンド。形式としてのメタル的な要素こそないものの、MAYBESHEWIILのサウンドが好きな人もハマると思う。ちなみにこのバンド、これまで全ての作品をダウンロード・オンリー（全てフリー）で発表している。
http://www.myspace.com/lossofachild