SUNLIGHT ASCENDING/All The Memories, All At Once

★★★★

「叙情系ポストロック」でカテゴライズされるものほど、事前にその音ざまが想像出来てしまうジャンルも他にないかもしれんが、それでも10や20に1枚、理屈ぬきでムンズと琴線を鷲掴まれる音景に巡り合っちゃうところに、まだまだこのジャンルから離れられない魅力があるのです。

SUNLIGHT ASCENDINGは米・ミシガン発の若手バンド。これがおそらくデビュー盤となるフルレングス。まずは初っ端、このタイトルトラックがタマラナイ。ナイーヴに揺らめく感傷的なメロディが積もり、重なり、次第に浮き世を離れた広大な世界を描き出していく。そのサマをdreamyだというもよし、渦中にshoegaze的なwhirlpoolを見出すのもいいだろう。ひとたび掴まれた感覚中枢は、あとはひたすらに高み高みへと連れ去られ、壮麗な轟音に揉まれて洗われる。穏やかな凪の景色を美しいアコースティックギターのストロークが彩る"Four"、嵐のようなザワメキをSEに美麗なノイズを燻らせる"Continental Drift"へとアルバムは続き、そこに「多彩であれ」と画すバンドの意図も視えるよう。今の時点ではそのどれもが他と一線を画すほどの出来栄えだとまでは言えないけれど、そのスタンスや奥底にしっかり息づく音作りのセンスの良さにはキラリ光るものを感じて魅せられる。それらを挟み、さながら感傷的な世界を謳歌するような旋律に乗せて再び直情的な昂ぶりの螺旋へと誘う"Out Of This Place II"、吹き荒れる音はイメージこそ暗い嵐だが、そこに抑えきれない昂ぶりが宿るゴッドスピードな"Reverse Dragons"といった楽曲で再び強く、魅了する。例えばCASPIANASIWYFAのように、ポスト"叙情系"なネクストレベルにまではいってないけれども、個人的にはかなり久しぶりに、通してのリピートを促す結果になった好盤。MONOの新譜とも音の形式としてそう大きく異ならないが、この手のサウンドの好き嫌いはわりと微妙な感性の差異に依るところが大きいとも思う。とりあえず、気になる人は一曲だけ試聴してみても損はないかと。

You Don't Belong Here

★★★★☆

米ミシガンの5人組による2010年新作EP。若手POST ROCK勢の中で、個人的にかなり気に入ってるバンド。というかこのEPで一気にそのポジションに来た感じ。4トラック/32分という尺も良いほうに作用し、昨年リリースのデビュー盤を大きく上回るインパクトが結集している。

息つく間もなく姿を変え、激しく畳み掛ける展開が「ポストメタル」界隈のそれを思わせるオープナー"Diorama Dream"は、逆にその激しさが背後で通奏され舞い上がる旋律の美麗を際立たせる。古いラジオから洩れ来るような、アナログな質感のアルペジオが反復する"Like Coming Home"は、何かが終わった後のノスタルジックな感覚を喚起。クリアディレイの黄金律がゆったりと降り注ぐ"The Golden Plane"でもまた、激烈に蒼い感情が波立ち、巨大な爆音のウネリへと巻き上げられていく。そしてラスト"Old Friends Part Ways"では、それこそ初期頃のEITSを思わせる不穏で、ナーバスなテンションから破裂する轟音と、やがてそれが肯定的な光を放つ音の渦へと変じていく美しい音像/展開を見せる。なお、こちらの作品も現在はデジタル配信のみ。ぜひCDも出して欲しい!何度聴いても良いです。

http://www.stereokiller.com/SunlightAscending
http://www.myspace.com/sunlightascending