EXPLOSIONS IN THE SKY/Those Who Tell The Truth Shall Die, Those Who Tell The Truth Shall Live Forever

★★★★☆

01年リリース、テキサス州オースティンのポストロックバンドEITSの2nd。各3曲が2つの大きな物語に分かれた、全6曲49分。殺伐とした雰囲気はGY!BEに近いか。時に穏やかに、そして時に猛々しく乱れ打つドラムが印象的で、クライマックスでゴオォォォォオオっと炸裂するノイズギターの爆音が最高に気持ち良い。"Have You Passed This Night"の冒頭では、映画"シン・レッド・ライン"中の台詞が読み込まれている。アルバムを通じて混沌とした雰囲気に包まれているように聴こえるが、そんな世界の中でも必死に生きる人間の放つ光が見えるような、美しいアルバム。ものすごく好きな作品。

The Earth Is Not A Cold Dead Place

★★★★☆

3rdアルバム。1."First Breath After Coma"、2."The Only Moment We Were Alone"、3."Six Days At The Bottom Of The Ocean"、4."Memorial"、5."Your Hand In Mine"という5つのタイトルが付けられた各パートから成る今作は、そういった区分が不必要なほどに、全体で大きな一つの世界を作り上げている。澄んだ音色を丁寧に丁寧に積み重ねていくクリーンなギター、大きな時の流れを刻むように鳴り渡るドラム、アルバム中で鳴らされている一つ一つの音の響きが本当に美しい。ゆっくりと昇りつめていき、最後の高みで鳴り響く、祝祭のような輝きに満ちた轟音。今作に溢れているのは光。

決して奇をてらった展開があるわけではない。けれども4人のメンバーが持つ卓越した音の構築力と、自らのサウンドに対する真摯な姿勢が生み出した至福の45分37秒。2003年度ベストアルバム。

Friday Night Lights Original Soundtrack

★★★★

全米公開映画のサントラ。収録曲全14曲中、実に11曲がExplosions In The Skyの楽曲という構成。

 トレモロギターが叙情的にたゆたい、ゆっくりと雄大な景色を描き出していく。Tr.2"Your Hand In Mine"は、深まる秋を思わせるチェロの美しいストリングスが導入された別テイク。この曲とTr.8を除き、他は全て未発表曲であるが、サントラということもあってEITSの十八番とも言える轟音ギターが炸裂する展開はない。ドラムも非常に控えめな上、曲自体も4分前後と短めなので、どの曲も起承転結の起の段階で終わる感じで、既発アルバムと比べると極めてアッサリとした内容といえる。

 しかしながら、ギターの澄んだ音色が紡ぎ出すメロディーの美しさはやはり半端でなく、涙腺をダイレクトに刺激するメランコリックな音空間には、他に比するものが思い浮かばないような天賦の才を感じさせる。晩秋から初冬へ、この季節にピッタリの美しい旋律が溢れ出る、良質な作品。が、なぜにこのスポコン映画のサントラにこの音なのかは理解に苦しみます。笑

How Strange Innocence

★★★★☆

 2000年に300枚限定のCDRでリリースされたEITSの1stアルバム。当初バンド側はリイシューしない旨のコメントを発していたが、ネットオークション上でコピー品が高値で取引されるといった状況を見かね、リマスター並びにジャケットを一新し、この度めでたくTemporary Residenceから再発されることとなった。

 オープニングトラック"Song For Our Fathers"、荒廃した無人の街を一人きりで彷徨うかのような物悲しい旋律を奏でるバスラインと、単音ギターのフレーズが絡み合う。その寂寞の音風景の中、取り残された獣の悲痛な咆哮を思わせるフィードバックノイズとともに、トレモロギターのほの暗いメロディが空間を震わせる。初期GY!BEに大きく通ずるものを感じる楽曲だ。Tr.3"Magic Hours"では、2nd/3rdアルバムでは聴くことのできないムーディーなスケールをなぞるベースが序盤を飾り、高みへと向かう積上げ式のクリアディレイギターが煌く中盤を経て再びトーンダウン、EITS十八番の鼓笛隊ドラミングにより再上昇し、粗い粒子のフィードバックノイズ、ディストーションが炸裂するクライマックスへと展開していく。マーチングドラムとざらついた質感のディストーションギターが融合し、爆ぜる様はTr.5"Glittering Blackness"においても散見される。一転、Tr.4"Look Into The Air"では、近年の作風に近い柔らかな質感のギターフレーズが緩やかに揺蕩い、木漏れ日にも似た柔らかな音のベールで空間を満たしていく。そして本作中最も激しい展開を見せるTr.6"Time Stops"、穏やかな立ち上がりを見せる導入部に続き、さり気なく挟み込まれる絶妙のチェロストリングスを経て滑らかに転調・加速。流麗なギターアルペジオの上に叩き鳴らされるハイハットの破片が降り注ぎ、それらを飲み込むように吹き荒れるディストーションギターが、連続して劇的な瞬間を生み出していく。

 デビュー作ということもあり、GY!BEやMOGWAIといった先達の影響を色濃く感じる瞬間は確かにある。が、Tr.2で立ち現れる、琴線を鷲掴みにするような単音ギターの響き・放ち方などには、既にして非凡なものがありありと窺える。川面に浮かぶ一枚の葉が澱みに揺蕩い、やがて清らかな流れに乗り加速、最後には渦巻く濁流へと飲み込まれていく様を思わせるスリリングな展開もまた素晴らしい。これまでの作品が好きな人は勿論、まだEITSの音に触れたことの無い人にもオススメできる良盤です。

The Rescue(Travels In Constants Vol.21)

★★★★☆

Temporary Residenceがmailオーダーのみでリリースしている同シリーズの第21弾。8日間でレコーディングされた全8曲/32分が収録されている。

あたかも、疾駆する汽車の内燃機関の胎動を模したかのようなベースラインに導かれ、一閃する軽やかなドラミングとクリアギターの煌めきにより飛翔する"Day One"、珠玉のノスタルジアを描き出すクリアディレイの旋律が、初めて大々的に導入された壮大なコーラスワークに包み込まれる"Day Two"、これまでに無くアップテンポなパーカッションや、チャイミーな音色群が流麗に、瞬く間に後方へと飛び去っていく"Day Five"など、前作の延長線上にありながらも、随所で新たな音の片鱗を覗かせる素晴らしい内容。

中でも、力強く踏み抜かれるバスドラムに牽引され、その一瞬ののち、夜空を焦がすオーロラの如く一面に敷きつめられるクリアディレイのベール中を、無垢な響きのピアノラインが螺旋を描きながら上昇していく"Day Four"の昂揚感は絶品。

旅立ちの昂揚
新緑蒼く萌え盛り
夜気清々しく澄み渡る
拡散するオーロラの煌めきに
見上げればそこに降る星数多にして
語らい、別れ、物語は憧憬の彼方へ

自身の世界観をさらに突き詰め、聴き手の脳裏に様々な情景を現出させる素晴らしい作品。年内にも発売が噂される新譜が待ち遠しい。下記にて試聴可。

http://www.explosionsinthesky.com/albums.html

All Of A Sudden I Miss Everyone

★★★★☆

約3年の期間を置いて届けられた4thアルバム。全6曲/47分。鳴り渡った瞬間に彼らだと判る、音の粒子の煌めきと爆発的な昂揚感。デビュー時より変わることなく、微塵のブレも見せずに打ち立てられる独自の世界。音に対する真摯なアプローチが創造するその空間は、他の模倣追随を許さぬまでに圧倒的に美しく、劇的に胸を打ち震わせ撃ち貫く。徹底的に純化された音が織り成す昂揚が、ここには濃密に詰め込まれている。

限りなく余剰を廃したクリーンな因子を掛け合わせ、眩い純白の高みへと昇っていった前作と比べると、随所で突発的な躍動とドラマチックな展開を見せる今作は、彼らの初期に近い手触りも感じさせる。と同時に、旅路の終焉にて胸を焦がすソレを思わせる、膨大な感傷/郷愁の感覚を随所に迸らせる音景には、先の『Rescue EP』以降をハッキリと感じ取ることが出来る。どこまでも上向きのベクトルを持った素晴らしい昂揚を突き詰め醸成し、強靭な推進力と共に描き出していく。

明滅する鍵盤器楽/幻想的なフィードバックノイズが霧がかった情景を喚起するシネマティークな導入部から、クリア・ディレイの織り成す柔らかなノスタルジー、キリキリと旋回するトレモロ・ギターの美麗なる飛翔へと連なるTr.3"It's Natural to Be Afraid "における13分間を始め、先のEPにて初めて大々的に導入された壮麗なピアノの旋律が、漆黒の宙空を走る雷鳴のように輪舞するTr.4"What Do You Go Home To?など、その一貫した『世界』を描く手法は、一層の拡がりを持って展開されていく。

さらに、従前からの道程をしっかりと感じさせる今作において驚きだったのがChristopher Hraskyによるドラミング。EITSの十八番とも言えるマーチング・ドラムに加え、今作ではシャープな輪郭を持ったバスドラがまさしく「音」で「圧する」かの如く精緻に弾け飛び、非常に劇的な瞬間を随所で創造している。突如として地平線に現出し、砂塵と共に押し寄せ驀進するこのドラム・ラインが起爆装置となり、荒々しい昂揚を突沸的に突き立てるTr.1"Birth and Death of the Day"における豪胆な天地創造、Tr.5"Catastrophe and the Cure"における強烈な上昇気流が立ち現れる瞬間は、間違いなく本作におけるハイライト。

極めてオーソドックスな器楽により、どこまでも正攻法のアプローチを見せ続ける4人の音楽は、しかしその確固たる軸を持った真摯な姿勢を基盤とすることにより、誰も真似ることの出来ぬ世界を創り上げる。だから、彼らの音は強い。だから、胸を強く打ち奮わせる。こうした付帯文など全く不要に思われるほど、ただただ素晴らしい、本当に素晴らしいアーティストだ。

http://www.explosionsinthesky.com/home.php
http://www.myspace.com/texasband



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