英ウェールズ発3ピース・シューゲイザーバンド、The Voicesのデビューアルバム。朧げな輪郭を成しながら渦を巻く音の洪水が、深い混濁の彼方へ意識を導く。
シンセサイザーの細かなパルスの明滅を、きめ細やかな質感のファズギターのヴェールが覆っていく。美しい残響（ディレイ）の彼方から漏れ聞こえる、男女混成ヴォーカルの柔らかな「歌」。絶え間なく溢れ出す催眠的ともいえる多層的な音のリフレインが、意識を混濁と覚醒の狭間にて揺れ動かし、心地良い昂揚空間へ飲み込んでいく。一方、Tr.3"Nobody
Knows The Way I Feel"では、サイケガレージ風の尖ったギターリフと深いリヴァ-ヴがかったボーカル、攻撃的なベースラインが反復し、Spacemen3の"Revolution"のような横顔を見せる他、Tr.7"Take
The Pain Away"でも、Spiritualizedを思わせる(というかほとんどある楽曲のカヴァーに聞こえる、、、)浮遊感に満ちたファズの洪水を、空間いっぱいに横溢させる。
良くも悪くも、アルバムを通してのメリハリは薄い。先人達のモノマネだと言ってしまえばそこまでだが、楽曲のクオリティは中々に高く、その昂揚感もまた素晴らしい。休日の晩などに聴くシュチュエーションは限定されそうだけれども、個人的には非常に好きな音だ。美しい音の洪水に浸ってしばし我を忘れたい人なんかにも結構オススメ。Slowdive好きな方も是非ご一聴を。
英国ウェールズの3人組シューゲイザー・バンドによる2nd。悪流通のため入手困難だったのが、なぜか最近国内盤がリリース。これも間もなくコンプリートBOX SETが出るよ出るよと言われている（そして結局また延期になったらしい）御大の煽り効果か？
デビュー作では『シューゲイズ』を謳われながら、その実Spacemen3やSpiritualized直系の、スペーシィなFuzz絵巻の側面を色濃く繰り広げていたこのバンド。そうした事からすれば本作の前半部では、純然たる意味でのゲイザー要素が増している。即ちSlowdiveしかり、My
Bloody Valentineしかりの美しくたわみ歪んだ音の層。シューゲイズといえばRide！蒼く爆ぜる轟音にこそ恍惚を！！派な自分としては、実はこの辺の耽美なヴェール・サウンドにはあまり興奮を覚えない。
オープニングトラック"The Sound Of Young America"は、APOF系譜の星空を駆け抜けるスター・ゲイズ(既に死語？)なサウンドで聴き手を掴む。しかしTr.234では抽象美の恍惚を鳴らすシンセを中軸に、キメ細かい音のドレープが垂れる夢幻サウンドを続けざまに展開。なのでエクスタシーというよりドリーミー、昂揚するっちゅうよりは眠くなる。
が、Tr.5"You Broke A Heart I Gave To You"から、先のSpiritualized要素が前面に飛び出し様相一変。ササクレ立ったファズが幾重にも突き刺さり、積み重なるドラッギーな轟爆音の旋回が確実に、脳内を昂揚の焦土へと変えていく。明滅するシンセ/ナイーヴなKeyの反復/儚げなヴォーカルの揺れで導き、リズムボックスのチープなビートから一気に爆音カタルシスへと突入するTr.6"Don't Let Go"、ひしゃげたアンサンブルが歓喜をもって胎動し、一瞬のタメののち爆発的に拡散するクライマックス"Love"へと連なる流れは最高！
前作同様、構成自体のオリジナリティ要素は低いものの、それでいてこの界隈を好む人間を確実に狂喜せしむる楽曲クオリティは素晴らしいの一言。こういう音をライブで浴びてみたい。
http://www.myspace.com/thevoiceslostinconfusion