EARTHLESS/Rhythms From A Cosmic Sky

★★★★☆

うぉーメッチャかっこええ。カリフォルニア州サンディアゴの3ピース/Earthlessの2ndアルバム。聴けば思わず「へヴィ・サイケデリック・プログレッシブ・エクスプロージョン!」とか雄叫びたくなる、原初的かつマッシヴなバンド・サウンドが最高。

全3曲/46分。うち2曲は20分超の人力グルーヴ天国。ドラムのMario Rubalcaba(元Rocket From The Crypt)、ベーシストMike Eginton、そしてギターのIsaiah Mitchell。このたった3人でよくもまぁ、と思わずお口アングリな、押して押して押しまくる怒涛のリフ/リズムの応酬に悶絶。

応酬と書いたが、例えば同じく3ピースのインプロ・バンドであるCoptic LightPsychic Paramountのように、3者の馬鹿テクが背反し衝突しながらその予測不能さでもって爆発的な衝撃を放出するのに対し、Earthlessが放つアンサンブルはかなり王道的でストレート。モロに70sハードロックの骨組みを感じさせる、量感溢れるリフ主体の構造美。絶妙なリズム・チェンジで進行していくドラム/ベースも当然の如く巧いのだが、終始に渡って目立ちまくるのは、文字通り地を這い宙を舞う刺激的なギター・リフ。まさしく弾・き・倒・す!が如く弦を唸らせ場を震わせる、永遠に終末を見ないようなラウドなシークエンス。有りそうでいてなかなか無い、古典解釈による斬新なCosmic Rhythmsに強い昂揚を覚えます。

オマケ的につけられたTr.3"Cherry Red"は、英国のハードロックバンド/The Groundhogsのカヴァー。ファンキーなヴォーカル踊る豪腕仕様のキャッチーな空間は、Cato Salsa Expelience(というか70年代のブルース・ハードロックバンド)好きに、やはり強く訴えそうな魅力的なナンバー。アルバム最後に至るまで、弛緩の瞬間を一切感じさせない展開がお見事。前のアルバムもチェックしてみたいと思います。

Tracklist:
1. Godspeed 20:55
a. Amplified
b. Passing
c. Trajectory
d. Perception
e. Cascade
2. Sonic Prayer 21:12
3. Cherry Red 4:36

Total Time 46:43

http://www.myspace.com/earthless

Sonic Prayer

★★★★☆

05年リリースのデビュー・アルバム(EP?)
各トラックとも20分超。非常に狂ってます。

まずは"Flower Travelin' Man"
ロールするドラムによりキック・イン。ウネリ立つベース・リフはひたすらに同一ラインを殴り描き反復し、厳ついギター・リフの咆哮が両サイドのスピーカーから掴みかかる。毛穴がブワリと拡張し、血中アドレナリン濃度が増し増す原初的な快楽感。強烈なフィードバック・ノイズの放電、落雷の如く振り下ろされる豪胆なリフを主体とした、とてつもなくシンプルかつ分厚く熱くドラッギーな音塊がヒジョーに気持ち良い。

続く"Lost In The Cold Sun"では、最下層へと重心を落とし込む崩れた輪郭のリズム隊が、暗黒模様のグルーヴを燻らせる。極端にメタリックな色彩を増したギター・フレーズは、その悪魔的な様相でもってブラック・サバスを彷彿とさせる世界を描き、ジットリとしたたるように重いフレーズは、のたうつグルーヴに相乗しながら、渦巻く黒雲と成り空間を塗り潰していく。

陰陽の属性で巧く塗り分けられたような各楽曲。どちらも過去のバンドからの影響を強く感じさせるものながら、そのあり得ん長さの構成へと仕立てることで、全体で強い独自色を醸すに至っている。アグレッシヴなリフ主体の、執拗なまでに増幅され行われる展開は、頭であれこれ考える以前の極めて本能的な快楽欲求に実に忠実。ロックの根源的な昂揚を見事に煽り立て、聴いていてとにかく半端なく気持ち良い。

Live At Roadburn

★★★★

オランダで毎年開催されているROADBURN FESでの演奏を収録したライブ盤。オフィシャルサイトを見ればわかるがこの祭事、好きな人にはマジでタマラン!面子になっている。08年からは全公演のライブ録音/音源化を始めたようで、果たしてどれだけリリースされるかは不明ながら、なかなか楽しみな企画となっている。

さておき本作。どうやら当初の予定では、EARTLESSは3つある中で最小キャパ(約200名入るらしい)のBatcaveステージでトリが予定されていたらしい。ところがメインステージのトリが持ち時間を大幅に余らせたとかなんとかで、急遽そのメインステージ(キャパ2000人)の大トリに抜擢されたという逸話付。しかしてこのトリオ、不意の大舞台に呑まれるかと思えばそんな気配は毛ほどもナイ。無尽に駆け巡る爆音は空間を完全に我が物カラーで席捲し、アルバムで炸裂させていたダイナミックなグルーヴは、むしろ器のデカさを利用していっそうの拡大転写を果たしてる。

のっけからの40分超にて新曲(もしかしたら誰かのカヴァーかもしれんが)を2連発。猛り狂う高圧放水ホース然としたMario Rubalcabaのギターがトマラナイ"Blue"でニンマリし、小気味よく爆ぜるIsaiah Mitchellのドラムがアッパーなビートで中枢を発破する"From The Ages"へと進入する。とは言いつつもはや楽曲の区切りなど一切関係アーリマセンといった具合のシームレスな捻転噴出収斂爆裂拡散の模様はただただ圧巻の昂揚絵巻。無駄な反復や抽象的なコケ脅しがまるで無い精悍な重量構造に圧倒される。DISC2(そう、今作は2枚組なの)では2ndから"Godspeed"と"Sonic Prayer"を引き摺り出し拡げ、三者のゼツミョーなる触発によって半ば∞の熱狂渦を展開する。こう、なんというか、コイツラたぶん半日ほっとってもジャムり続けてるだろうし、こちとら半日浴び続けてアホになってもええよなと思える気持ち良さがある。サバス以降の系譜はもちろん、サイケやブルーズの要素はもちろん感じるのだが、基本の基本にはハードロック的なヌケの良さ/カッチョ良さが在るのがこのバンドの特異な美点であると思う。3つの楽器のどれかが必ずナイスなメロを鳴らしているところもとってもとっても大好きなんですな。というわけで本作もまた、スバラシイ!ちなみに以前eMusicでライブ音源を幾つか落としたものの、未だ全然聴けてない。HAWKWINDをかなり忠実にカヴァーしてるやつとかもありますので興味のある方はぜひどうぞ。長くなりました、それではさようなら。

http://3voor12.vpro.nl/speler/ondemand/39554572
↑で全曲試聴可能

WITCH & EARTHLESS/Split 7"

★★★★

Volcom Ent.Vinyl Clubが『年間定期購買』というユニークな制度でリリースしているsplit 7inchシリーズの第2弾。EARTHLESSによる"Jull"はバンド史上最も突き抜けた疾走ナンバーで、翔け昇る律動が全身を鮮やかに貫き通す。主役は完全にリズム隊、さらに言うならドラムのMario Rubalcabaでありまして、変則シャッフル・ビートのベースを下敷きに終始ご機嫌で打打打ダダァ!終盤のソロではパーカッションも交えてまるでArt Blakeyのアフロ・ドラム・アンサンブルみたい!というのはちょい褒め過ぎだけどもかなりイイ!!!

対するWitchの楽曲は、こちらは黴っぽい湿り気を持ちながらも力強く脳髄に突き刺ささる反復リフを主要な武器に、ハイエナのように抜け目なく忍び寄り感覚を犯す腫瘍じみたヴォーカルが跋扈する281秒。この、やり過ぎなぐらい鼻にかかった駄目人間ヴォーカルがあの誰かにスッゲー似ているのだが、酩酊のアタマでは思い出せない、それがめちゃくちゃ気になるのだが・・・。誰だっけ。ボビー?とりあえずこのシリーズ、結構オモロいです。

http://www.myspace.com/earthless
http://www.myspace.com/witchofficial