sgt./山本精一&XIXEXI/fluid/neco眠る@京都クラブメトロ

先日リリースされた1stフルアルバム"Stylus Fantasticus"を引っさげてのsgt.レコ発ツアーの京都公演へ行って来た。例の如く、御池のアイリッシュパブでギネスを喰らってから丸太町まで歩き、18時半過ぎに会場のメトロへ到着。

先鋒はfluid。京都発の3ピース・ハードコア。前回アバンギルドで観た際と比べると全般的に輪郭が爆音に煙り崩れ気味だったような気もするが、男気溢れるジャキジャキリゴリゴリの音塊を前にすりゃ、ただただ衝動が焚きつけられひたすらにうち踊るだけ。ハードコア本来の焦燥混じりのシリアスさと、NEW WAVEの享楽とのちょうど中間点に位置するような直情鋭角の轟音ナンバーが個人的にめっちゃ好き。気持ちよかった!

続いて19時20分頃から山本精一&キセキ。ユニットの正式形態が分からんのだが、本日はドラムにBOREDOMSの楯川陽二郎、ベースにROVOのJin Destroy!を加えたオイシイ仕様。でもってJin氏はベースをディジュリドゥに持ち替えての参戦。(やや関係ない話だが)兼ねてよりGRAILS来日してほしいぜ!と言っている私だったが、今日この場で展開される音を聴いて覚えた印象は「GRAILSの楽曲を基に、Mark Ribotがセッションしてるような音だわ」というもの。酩酊を誘うドロニッシュな風情のビート、頭上を飛び交うKeyやスチール・ギターの単音がダーク・オリエンタルな波状でもって意識を揺らしにかかり、傍らで数多ジャンルを往き来する山本精一のギターが寄り添い、めくるめき、昂ぶり立て、突き崩しにかかるという展開。ただ、長さの割に明確なクライマックス部の突き抜けを廃してしまっているところが個人的にはやや物足りず。頼む、イカせてくれ!(懇願)という感じ。あと、Jin氏のディジュリデゥは五色のエレクトリック・ライトを装備した怪しげな一品で、加えて指輪に腕輪にとレーザー光線を携えピカピカさせていており完全に変な人。手持ちのストロボ・フラッシュを始終に渡ってフロアに向けしきりに発光させていたのには、口には出さないがたぶん多くの人が内心で「や、やめろよぉ」と思っていたに違いない。

続いて20時10分頃からsgt.。じゃあ行きまーす!といった軽いノリからスタートし、ギター/ドラム/ベース/ヴァイオリンの4者による集中砲火爆音ノイズから、キラーチューン"囚人たちのジレンマゲーム"へ乱入。既に10年以上に渡って活動しているバンドだけあって、その安定感はさすがかなりのモノ。出力される音も機材知識の豊かさを知らしめるように整っており、スタジオ盤に違わぬ壮麗なノイズ・プールを打ち立てていく。が、先のLITEのライブでも感じたのだが、どうも個人的にはも突き抜けきれない煮え切らない。単に整然として隙が無いと言うんではなく、演り手の体温や衝動がコチラに(というか自分に)は伝わってき難いというかなんというか。上手く言えないが、普段CDで聴いていた楽曲が音量を増して眼前で粛々とて行われているだけ、といった感覚に陥る。サウンドの核たるヴァイオリンの豊潤さが、スタジオ盤に比べると薄く聴こえたことや、サポート・ギターの存在感の弱さ、そもそも演奏時間が30分弱と短かったことなど色々あるのだろうが、個人的には正直、不完全燃焼な感のするライブであった。

そして本日のトリはneco眠る。え!?ネコさんがトリですか!?と不思議に思ったアナタ!そう、あなたは正しい。中途のMCでその真相が明らかにされたのだが「本日ドラム氏が勤め先のゴルフコンペに出席を余儀なくされ、会場入りが大きく遅れた」のが原因だと。場内爆笑。だって「重要な取引先の接待も兼ねており、どうしても外せなかった」のだ。そら仕方ないよね。そんなファニーなネコさんが贈る楽曲は、まるでモグワイの和フレーズを思いっきりデフォルメしたような享楽インスト爆音盆踊りチューン。あくまでネタ的な面白さが先行するものの、イマひとつ臨界点を突破しなかった本日の会場を、個人的に(そして傍から見下ろしたフロアの様子からしても)相当ステキで巨大な昂揚の渦に巻き込み錯乱させていた。やんやのアンコール要請に「僕たちトリじゃないんで、アンコールは出来ません。ごめんなさい」と謝ることしきりのギター氏に、キュンキュンした方も少なくないに違いない。

back