THRUSHES/Sun Comes Undone

★★★★

常日頃、シューゲイズというお花畑をせっせと耕作していると、時折驚くほどに甘美なノイズをブチ撒けるバンドに出会うことがあります。古くに遡ればJesus&MC、わりと最近のバンドだとRaveonettesWarlocksなんかが頭に浮かびますが、このUS・ボルチモアの4ピース/thrushesもまた、そうした陶酔のノイズ・ウォールを眼前に打ちたてる素敵なバンドです。

ぼやけた輪郭で打たれるミドルテンポのドラミング、緩やかな退廃の気配を纏って浮遊するanna connerのヴォイス、そして、空間を引き裂き一気に噴出するファズ・ギターの福音。この手のサウンドを好む人間を間違いなく狂喜させるオープニングトラック"Aidan Quinn"にて始まる本アルバム。続く"Heratbeats"は、蕩けるように甘いメロディと、夢中のヴェールに包まれた空間がさながらThe Ronettesへのオマージュのようであり、アップテンポに駆け抜けるビート/逆巻くノイジー・ギターが錯綜し、童話的な詞を歌うドリーミーなヴォーカルと交じり合う"Into The Woods"、こちらも童話的なダークファンタズムを描く"Ghost Train"の狂騒へと連なっていきます。

キャンディーのように甘いメロディ溢れる空間と、聴く者を恍惚の渦へと叩き込む美しいノイズの暴力。サウンド自体の目新しさこそ全くありませんが、そうしたことが全くマイナスポイントとして感じられないほどに、強い魅力を放ちこちらを惹き付ける、そんなアルバムになっていると思います。ノスタルジーに煙る美しい稜線を描きながら、クライマックスでは激しく胸を掻き毟る音の奔流が溢れ出るTr.10"Roy"が個人的なベストトラック。気になる人は是非1度聴いてみてください。

http://myspace.com/thrushes