THE RAVEONETTES/Whip It On

★★★★

Sune Rose WagnerとSharin Fooの二人からなるデンマークのユニット、Raveonettesのデビューミニアルバム。なんでもB♭マイナーキーと3つのコードだけしか使わないという制約のもとで作ったコンセプトアルバムだそうで、収録された全8曲をトータル21分で疾走していきます。音のほうはというと、最初から最後までもうまさにジザメリ直系のノイズノイズノイズ…といった感じで、強烈なFuzzギターが吹き荒れる中を、男女混声のツインボーカルがフワフワと泳ぎまわってます。構成はギターにベース、ドラムマシーンというシンプルなものながら、甘美なギターノイズの聴かせ方を完璧に知り尽くしているとしか思えないぐらい、全ての音がむちゃくちゃ気持ち良いです。メロディーもものすごくキャッチーで聴き易いですし、「ギターノイズ」という言葉がちょっと苦手だなぁって思ってる人にもぜひ聴いてもらいたい作品です。

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Chain Gang Of Love

★★★★

B♭マイナーコードしか使わなかったミニアルバムに続いて、このデビューフルアルバムもB♭メジャーコードしか使わないという制約を課して作られたコンセプトアルバムになっています。そして今作でも畳み掛けるように吹き荒れるギターノイズの洪水は、全く衰えることを知らず縦横無尽に曲中を駆け巡り、体が音の洪水の中に埋もれていくような感覚に陥る、気持ちの良いノイジーポップサウンドを展開しています。相変わらずシンプルな構成ながら、ギターの音の響き一つとってみても、その音響空間の作り方は見事の一言。普通これだけの制約のもとに作られたアルバムだと、どうしても似たような曲調が多くなってしまうと思うんですが、そこがこのバンドの凄いところで、ドラムビートのリズムを変えたり、ギターの音色に様々な表情を持たせることで、しっかりとメリハリを効かせて全13曲を聴かせきってしまいます。ほんとこの2人組の才能、恐るべしと言った感じです。次はこういった制約を取っ払って作ってくれると思うんですが、一体どんなものが出来上がるのか今から凄く楽しみです。

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Pretty In Black

★★★☆

 デンマークの才色兼備な2人組、The Raveonettesの1年半ぶりとなる新譜。数組存在する男女デュオ形態の有名どころの中では、個人的に最も好きなバンドだったりする。

 まずもってそのサウンドスタイルの変化に驚く。3コード・3分以内・さらにはシンバル・ハイハットの廃止といった、前2作に課せられていた制約は解除され、一方で十八番のディストーションギター/フィードバックノイズの狂騒はすっかり鳴りを潜めている。強烈なギターの暴力が去った結果、俄然強くフォーカスされるのはその虫歯になりそうな甘い甘いメロディ。ロネッツを思わせる甘美なポップソング!と思ったら当の本人ロニー・スペクターがゲストボーカルとして参加していたり、60年代のコーラスグループAngelsの"My Boyfriend's Back"をカヴァーしていたりと、2人の好みが咀嚼されずにモロに現れたナンバーが目立つ。

 反響残響する音因子、それ自体が官能的な昂揚感を孕むかのような各インストゥルメンタルの響かせ方はやはり大好きなのだけれど、イマイチそのやらんとせん部分が見えないというか、焦点がブレた感のする作品だ。小悪魔的なシンセのループとリズムボックスのビートが絡み、ファズギターが刺激的に降りかけられるディスコポップな"Twilight"や、前作の危うい色気を継承した"Love In A Trashcan"など好トラックも「散在」するのだけれど。前作で課していた種々の制約は、実はその奔放な想像力や咲き乱れるギターノイズの鮮やかな躍動感を活かす上で効果的に働いていたのかも?とも感じた。しかし何を考えているか分からん2人なだけに、はなから視点は今作通過後の次作に据えられていて、あれこれ批評する馬鹿どもを嘲笑っているのかもしれませんが。笑

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Lust Lust Lust

★★★★

ここ日本ではその存在を忘却の彼方へと葬られてしまった感もする、デンマークのノイズ・デュオによる3rdフル。J&MC直系のノイズ・ポップを演るバンドの中では、この人らが断トツに突き抜けてる感じで、その楽曲センス含め個人的にかなり好きなバンド。

前作"Pretty In Black"ではその爆裂ノイズを封印し、モロ60sガールズポップな甘いメロでめくるめくポップネスを展開していたが、今作ではやはりと言うべきか、そのノイジーさが復活。従前にないダークさで戯れるオープニングトラック"Aly, Walk With Me"は、やがて100人による絶叫のようなファズ/ノイズの渦巻きへと抱き込まれていく。リズムボックスの無表情な打塊と、阿鼻叫喚ノイズのコントラストが凄まじくクール。

溶けてしまいそうに甘く甘くセンチなメロと、完璧に制御されたノタウチ・ノイズのデコレーション。デビューE.Pに近い音作りながら、始終に渡って享楽とは真逆のダークネス/死にたくなるような物憂さを感じるのは、こちらの意識の錯覚か?迸る部分では一気に駆け抜け、落とす部分ではメロウに濡らす展開に、何とも言えぬ刹那的な感傷を覚えます。トータル・コンセプトって面では従来より弱い気がするが、音のクオリティはこれまで同様非常に高く、全くもってハズレ無し。こんなのを爆音で鳴らされた日にゃあ、もうどうしようもありませんな。めっちゃ気持ち良い。最高!

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In And Out Of Control

★★★★

すっかりチェケラが遅れる間にリリースされていた、デンマークのデュオによる4thフル。

万華鏡的なノイズのキラめきで魅せていた初期頃と比べると、今作はこれまでになくポーップ!な仕上がり。ノイズとメロディがベストなバランスで並び立っていた前作から再びチョロっと後退(?)し、60年代風の甘ーいメロディがバブルガムのよにBang!Bang!弾けるTr.1"Bang!"で甘やかな立ち上がり。メロディを立たせる、っちゅうことに専心していそうな楽曲群は、カラフル・ノイジーな暴風雨を期待する向きからすれば正直、チィとばかし肩透かし。とは言えもはやメルヘンチックですらある甘毒の歌詞とともにほお張れば、相応の美味しさは味わえると思う自分は既にこのバンドの中毒者なのかしらん?同じくメロディに重きが寄っていた3rd"Pretty In Black"と比べると、しかし今作では全体を覆うコーティングに統一感があるせいか、アタマからお尻までそのキラッキラとした世界に浸りやすくはありまする。

陰鬱なモノも感じさせるリズム・ループとシュガーなメロディの対比が強インパクトな"Boys Who Rape (Should All Be Destroyed)"、似非アジア的で良い意味での古臭さを感じる"D.R.U.G.S."、さらにはサービス精神旺盛に激美なノイズが奔り回る"Break Up Girls!"なんて曲もあり、若干の物足りなさは感じつつも全体としては結構エェ感触が残る、というなんともビミョーな立ち居地の作品。でもでも、オススメよ!

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Raven In The Grave

★★★☆

J&MC直系のノイズ・ポップを展開するデンマーク産デュオ。1年半のスパンでリリースされた本作は、そのタイトル/ジャケ写も示唆するように彼らのメランコリック/ダークな側面をより濃く打ち出す。

そのキラキラとしたトーンにまだ陽性を感じるのはオープニングの"Recharge&Revolt"ぐらいで、さながらMERCURY REVを思わせる夢幻のSEから導入されるTr2"War In Heaven"から、音像はしっとりとしたメランコリーの暗がりへと沈んでいく。夜霧に包まれた町を抜け、薄からぬ闇が蹲(うずくま)る墓場へ向かう。ときおり光る星屑も、しっとり濡れた露草にとらえられ、煌びやかに舞い散ることはない。死の影がそっと寄り添う現実と、ときおり挟まれる甘やかな懐古の景色。

彼らならではのダークノイズが充満するTr.4"Apparitions"、ノスタルジックなメロディ・ラインの甘やかさが際立つTr.5"Summer"Moonなど、その魅力的な音の芳香/ノイズの咆哮といった持ち味は確かに在るんだけど、全体的にはかなり物足りない。所々のSEにコダワリのようなものが見えこそすれ、全9トラックというコンパクトさもあってか、いまひとつやりたかったことが見え難い作品、という印象。

Myspace
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