MERCURY REV/Yerself Is Steam

★★★★★

91年リリースの1st。Deserter's Songから入った後追いの私は、初めてこのアルバムを聴いたときにはホント心底ブッたまげました。当時の正式メンバーは、David Baker(Vo.)、Jonathan Donahue(G,Vo.)、Dave Fridmann(B)、Grasshopper(G)、Suzanne Thorpe(Flute)、Jimmy Chambers(Dr)の6人。轟音とホワイトノイズ、変な音と変な声が渦巻くカオティックな世界が繰り広げられています。(ちなみに裏ジャケに載ってる各曲のプレイタイム表記も全部嘘っぱち。笑)

デヴィッドの呻くような歌と共に静かに始まるTr.1、"Chasing A Bee"は、その後序盤でホワイトノイズとハウリング音に包まれ、さらにその中から轟音ギターの咆哮がスピーカーの中から噛み付くように飛び出してきます。これ、音量上げて聴いてるとすごい!かつて「音がうるさすぎる」って理由でロラパルーザのステージを途中で降ろされたという逸話も納得してしまいますね。バックで静かに流れるフルートの音色や「la〜la〜la...」って何気に可愛らしいコーラスを飲み込むように暴れまわる轟音が最高に気持ち良い。Tr.2、"Syringe Mouth"では一層傍若無人に飛び回るギターノイズと疾走するポップなメロディーが融合し、最高のノイズポップワールドを展開。かなりカッコ良い。何気にTr.6の"Frittering"なんかを聴くと、背後では時折ノイジーなギターが暴れているものの、Deserter's期の幻想的な音世界も既にバンドの中にあったんだなぁと実感できます(この曲は今でもライブのセットリストに入ってますしね)。とどめは終曲"Very Sleepy Rivers"。12分にわたって繰り広げられるのはまさに狂気の世界。「アィーーン」なんて声が入ってますが笑えないです。

「評論化筋には受けたが一般には全然売れなかった」って紹介されてるアルバムですが、曲の根幹にあるメロディーなんかは驚くほどポップで聴き易いです。「実験的」と銘打って意味不明な騒音を鳴らしているバンドは嫌いなんですが、そんな私でも抵抗無く(ジョナサンとデヴィッドの声のギャップには驚きましたが)入り込めたアルバムです。個人的にレヴのアルバムの中で最も気持ちよくトリップできるお気に入りの作品です。

Boces

★★★★☆

93年リリースの2nd。相変わらずノイジーギターが炸裂しているものの、全体的に前作のドローンとした雰囲気は少し薄まっている感じ。

Tr.1の"Meth Of A Rockette's Kick"は、フルートや「パパパパ」コーラスがフワフワした雰囲気を生み出す中をギターノイズが錯綜する。ラスト1分は「どこまでうるさくなるんだ!?」ってぐらい騒々しいノイズの嵐。Tr.2、"Trickle Down"はなんとなく間の抜けたデヴィッドのボーカルと「トゥルットゥットゥルゥ〜」ってコーラスに奇妙なギターサウンドが掛け合いながら疾走。ポップノイズの洪水の中をジョナサンが歌うキャッチーなメロディーが走り抜けていく"Bronx Cheer"はかなりの名曲。アコースティックギター、フルートの柔らかな響きと、背後で静かに打ち鳴らされるハイハットの響きが美しいTr.5、"Downs Are Feminine Balloons"に続く"Something For Joy"は、次作で顕著に見られるオーケストレーションとノイズギター、キャッチーなメロディーが融合して加速していく展開が気持ち良い。

今作ではメロディーのキャッチーさがより鮮明に現れており、さらにフルートのスザンナを始めとして、個々の楽器が絶妙に絡み合ったバンドサウンドが展開されています。静と動のスピード感覚、静寂とノイズのバランス感覚も絶妙。

See You On The Other Side

★★★★☆

95年リリースの3rd。前作を最後にデヴィッド・ベイカーがバンドを去り、今作からジョナサン・ドナヒューがメインボーカルを務めることとなった。マーキュリー・レヴといえば次作のDeserter's Songがあまりにも有名だが、デヴィッド在籍時のノイジーサウンドと、次作以降のオーケストレーションを多用した幻想的な世界観が見事に融合した今作は、隠れ名盤とも言える傑作アルバム。

その新たな音世界をいきなり示すのが、冒頭の"Empire State"。背後で終始鳴り響くリズミカルなピアノに合わせ、スザンヌの浮遊感のあるフルートが不思議な昂揚感をもたらす。ジョナサンの少し甘い感じの声も曲の雰囲気に非常にマッチしている。中盤からはそこへザクザクとしたギターリフが切り込み、それぞれの音が競い合うように加速しながら一体となり昇りつめていく。ヘロヘロしたメロディアスな曲調から始まり、そこへ引いては打ち寄せる波のように押し寄せてくる音の洪水とのメリハリが最高に気持ち良いTr.5、"Racing The Tide"から、初めてテルミンが大々的に登場するフリーキーな"Close Encounters Of The 3rd Grade"への流れもすごく良い。どの曲も美しいあちらの世界が覗き見えるような華麗さとサイケ感をうまく併せ持っていてめちゃくちゃ聴きやすいです。

Deserter's Song

★★★★★

98年リリースの4th。NMEの年間アルバムチャートで1位にランクインされるなど、ヨーロッパを始めとする各国で大きな反響を見た屈指の名盤。

テナー&アルトサックス/トロンボーン/ピアノ/バイオリン/シンギング・ソー/テルミンまで、数多のインストゥルメンタル群が超自然的に絡み合い、一切の余剰を廃した純度100%の美しいサイケデリアを、独特のヴェールに覆われた夢幻の世界を創出していく。ジャズやブルースのクラシカルな匂いをも織り込みながら、途轍もなく美しい純白のメロディが繊細かつ壮麗なオーケストレーションと絡められていくその様は、本当に筆舌に尽くし難いまでに美しく、純粋で、この上ない昂揚感でもって全編を包み込んでいく。

ここで鳴らされるは まさに 恍惚の 音。
未だ誰も見出し得ぬ 至福の 音の 桃源郷。

耳障りのよいメランコリックなメロディと、完璧に構築された音のアンサンブル。しかしてフトその底を覗き込めば、どこまでも広がっていそうな果て無き深部が垣間見える。全ての音の果実が、鳴るべくしてそこに成っている。そんな無欠といっていいほどにパーフェクトな、本当に素晴らしい作品。

All Is Dream

★★★★★

01年リリースの5th。瞬間にして聴き手を雲上へと舞い上がらせる、とてつもなく壮麗なオーケストレーションが日常を崇高な世界へと刷新する"The Dark is Rising"によって幕を開ける。柔らかに明滅する鍵盤器楽の月光に照らされて、リズム隊の岸壁に打ち寄せ砕けるストリングス/ギター/ハイハットが暗く深遠な昂揚を生み出す"Tides Of The Moon"、夜の海に歌う人魚のような、憂いに満ちたソプラノとジョナサンの不安定なヴォーカリゼーション、そこへ爆発的に拡散するバンドサウンドの対比が素晴らしい"Lincoln's Eyes"は、後半部でライブではお馴染のシンギング・ソーを使ったメロウなナンバーへと続く。

弱々しくもしかし、確かな生命の息吹を感じさせる早春の陽光に照らされた大地にて、小気味良いパーカッションと流麗なストリングスが睦み合い陽性のサイケデリアを描き出す"Nite And Fog"、果てなき可能性を秘めた世界への無邪気な憧憬が、完璧な構築度を誇るオーケストラルによって鮮やかに彩られていくポップナンバー"A Drop In Time"などは、澄んだ闇夜が支配する作品中で絶妙なアクセントとして響いている。

マーキュリー・レヴ史上最も華麗に、深みを伴ったサウンドが舞い散る今作は、耽美といえば耽美なのだけれど、そこにそうした形容に付き纏いがちな「わざとらしさ」や「嫌らしさ」といったものが全く存在しないことに驚く。敷き詰められた音は全て必然的に、彼らの世界を形成するために自然と湧き起こってきているかのようだ。シンプルなピアノの調べとほんのわずかなストリングスが、素晴らしいメランコリーを歌うジョナサンを慈しむ"Spiders And Flies"を聴いていると、そんな思いに捉われる

そしてきみは 陽の光を浴びて飛び
そしてきみは 月の潮に漂う
(Tides Of The Moon)

世捨て人が夢見た恍惚の桃源郷。全ての音がこの上なく美しく、強く、深い響きで鳴り渡っている。本当に素晴らしい作品だ。

Secret Migration

★★★★☆

絢爛豪華な夢の世界から3年半。本当に本当に待ち焦がれたマーキュリー・レヴの6thアルバム。必要不可欠な因子以外を削ぎ落とした、純度100%のピースから構築される楽曲はどれも圧倒的に美しく、眩暈のするようなサイケデリアを放つ。

 前作"All Is Dream"で隙間なく敷き詰められていた壮大なオーケストレーションに変わり、今作では浮遊するシンセ/艶かしいキーボードを基調とした、疾走・浮遊感のあるサウンドスケープが広がる。一方で、一聴して分かるほどに強度を増したジャジーなベースラインが非常に魅力的で、フラフラと彷徨うジョナサンのボーカルと鮮やかな対比を成して響いている。各曲が放出する昂揚指数は半端なく高く、前作が文字通り「夢の世界の音」だとすると今作はさらにその上、肉体を完全に超越した先で鳴り響く「天国の音」

 揺らめくシンセにリヴァーヴがかったフィードバックノイズが覆い被さる導入部から、リスナーを一気に非日常空間へと誘う"Secret For A Song"、ジョナサンの妖艶なヴォーカルと絡みつく鍵盤楽器が、螺旋を成しながら上昇していく"Diamonds"、憂いのあるメロと骨太なベース、そしてこれまでライブ以外ではほとんど聴くことのできなかったグラスホッパーの泣きのギターソロまでが登場する"Vermillion"、シンプルな空間に満ち溢れる哀愁の歌が美しい"My Love"など、完璧と言いきってしまえるほどに素晴らしい楽曲が次々と立ち現れる。

 近年顕著だった重層的な音作りと比べると、今作はかなりタイトな手触りの作品だと言える。が、そのシンプルさの背後にはこれまでの経年変化がまざまざと感じられ、一見さり気なく配置された音のパーツが混じり合い、化学反応を起こして生み出されるクラクラとするようなサイケデリック度は、これまでの作品の中でも最高レベル。「熟年」という言葉がおよそ似合わない、一つの地点に留まることなく次々と新しい世界をリスナーに提示してくれるマーキュリー・レヴ、やはり最高のアーティストだ。果たして今年、このアルバムを上回るような作品は出てくるんだろうか、、、と心配したくなるほどに素晴らしい作品。

The Essential Mercury Rev:Stillness Breathes 1991-2006

★★★★

91年のデビューアルバム"Yerself Is Steam"以来、実に15年を超えるキャリアを誇り、計6枚のフルアルバムをリリースしてきたN.Y州バッファローのバンド/マーキュリー・レヴの初となるベストアルバム。

本作は2枚組の構成となっており、Disc 1は1st(3曲)/2nd(1曲)/3rd(2曲)/4th(3曲)/5th(2曲)/6th(3曲)の計14曲が収録された純粋なベスト盤で、対するDisc 2にはシングルB面や未発表曲などが18曲収録された内容となっている。ここではそのDisc 2について簡単に。

レノンやジェームス・ブラウンの楽曲など、そのカヴァー曲はどれも各アーティストの音の本質を見極め、濃縮して描き出していくように響き、とても高いクオリティをもったものとなっている。一方で、最初期の未発表音源であるTr.10"Clamor"は、モロにS3を彷彿とさせるノイジーギターの殺傷性と、カオティックにリフレインするボーカルが暴力的な昂揚を放つ強烈な楽曲で、一方でこれまた未発表音源であるTr.11"Seagull"は、拡散する光を模したシンセの煌めきと歌うベースライン、メロウなジョナサンのボーカルが睦み合う、近作を思わせる陽性のナンバー。続くビートルズのカヴァー曲"Lucy In the Sky With Diamonds"と共に軽やかに、眩い光を振りまきながら天空へと飛翔していく。

改めてその音の変遷ぶりに驚かされるこのベストアルバム。作品全体で一つの世界を提示するバンドなだけに、初めて彼らの音に触れる人へこれをオススメできるかは疑問だけれど、これまでの歴史を総括する上で、内容的にもタイミング的にもかなり良い感じでリリースされた作品だと思う。

Back To Mine

★★★★

アーティストが自身のFavorite Songsをコンパイルする「Back To Mine」シリーズの第24弾にマーキュリー・レヴが登場。極めて広範なバラエティに富み、そして適度にマニアックな選曲が非常に面白い。

Galaxie 500/Spacemen 3/Velvets等々、ルーツとしてよく知られているアーティストの楽曲を始めとし、ジャズやブルース、カントリーに至るまで、まさしくジャンルレスな曲群が完璧に繋がれていく。中でも素晴らしい瞬間を描き出しているのが下記の3箇所。

フルートとバイオリンの織り成す澱みの中で、柔らかなメランコリーを歌うNicoの"Wrap Your Troubles In Dreams"から、一気に成層圏を抜け飛翔するMercury Revによる新曲"Cecilia's Lunar Expose"へ。さらには到達した宇宙空間にて無数のパルスが明滅し、果て無き昂揚を解き放つSpacemen 3の"Big City"へと続くTr.9〜11の流れ。

ささやくインストゥルメンタルと繊細なサンプリングに乗せて、素朴で暖かな女性ヴォーカルが紡がれるHanne Hukkelbergの"Cast Anchor"から、絶妙な「崩れ」がチャーミングな黒い磁場を型作るRandy Newmanの"Uncle Bob's Midnight Blues"へ、そして最後はなんとCliff Edwardsによる"星に願いを"で締められる。

彼らの音のルーツ探訪という目的はさておき、これほどまでに完成度の高いミックス・テープには中々お目にかかれなさそう。彼らのファンにもそうでない人にも、強くオススメしたくなるような、そんな素晴らしい1枚。

Hello Blackbird

★★★★☆

第18回東京国際映画祭にも出展されていた、ロヴァンソン・サヴァリ監督による長編映画『Bye Bye Blackbird』のサウンドトラック。19世紀のロンドン、巡業サーカス団を舞台に繰り広げられる物語の情景を、まさしくその音のみによって描き出していく、幻想的でシネマティックな素晴らしい作品。

眼前をうっすらとした霧で覆い隠すように、美しく煙ったストリングスが空間を満たしていく。聴こえる限りにおいて、ギターやベースといった基本的な器楽は用いられていない。アナログな質感のシンセサイザーが背後を夢中のヴェールで包み込み、オーボエやピアノ、テルミン、シンギング・ソーが交互に主旋律を担っていく。微小なサンプリングやエレクトロニカがチャイミーに舞い散るその幻想のサウンド・コラージュは、時として余りにも悲愴に、あるいは冷たく暗い昂揚を孕んで鳴り響き、そして多くにおいて白昼夢のようなノスタルジックな昂揚感で聴き手を包みこむ。

夢と現(うつつ)の境界(あわい)で揺れ動く、仄かな光を孕んだ美しい混濁のインストゥルメンタル・ミュージック。フレデリック・ショパンのピアノソナタ第2番を編曲したTr.10"the Last Of the Blackbird"、夢からの覚醒の中途のような、あるいは二度と戻れぬ世界へと踏み込んでいくような、幻想的な歪みに侵されたステージで謳われる女性ヴォーカルが素晴らしい終曲"Simply Because"など、Deserter's期の空気をさらに濃縮したような、素晴らしい非現実世界が繰り広げられています。

Snowflake Midnight

★★★★

途中いくつかのリリースはあったものの、純然たる新作としては3年半ぶりとなる7thアルバム。作品毎に様々な擬態で魅せるバンドだが、今回の路線は結構意外。グルーヴィなバンド・サウンドを軸に、白熱のサイケデリアをいとも容易く昇華させていた前作の「解り易さ」とは対照的な霧中感。昨年リリースされたサントラ盤"Hello Blackbird"の流れを汲む作風は、難解ではないが、幻想を視覚化するような「掴み難い音」を奏でる。

ジョナサン・ドナヒューの繊細なヴォーカルを唯一叙情の奔流に、エレクトロニカの装飾をふんだんに散りばめていく楽曲群。メロディアスだが、同時にこの上なく無機質なフィーリングが溢れるTr.1,2で漆黒の大海へ向け緩やかに飛翔。愚直なマシーン・ビート/湧き起こる喝采ノイズが最初期の狂気/ジャンクネスをチラリ覗かせるTr.3"Senses On Fire"、暗闇で瞬く可憐なメロディを蠢く暗黒が呑み尽くす、これまた初期寄りの怪奇的ビッグバンが観られるTr.4"People Are So Unpredictable"辺りが前半部のハイライト。生楽器と電子音/微小な煌きと大胆なビートが怪しく睦み合うTr.7のようなナンバーを交えつつ、ミニマルな展開と、細部への偏執を感じさせる劇的な(大仰という意味ではなく)創作が緩やかに連帯。ひたすら肉体ではなく意識の深層へと作用し流れていく。

全編に渡ってプレイヤーの存在は希薄。跋扈するフレーズが自らの意思で動いているような不気味さもある。霧中に広がる極彩色の花畑めいて、此方とも彼方ともつかぬ美が至るところに充満し、しかし決して摘み取れない。ユーモラスだが等しく畸形、グロテスクがみっしり詰まったようなファンタジック百景は、既に『音の桃源郷』などという既存の(?)認識を超えており、無二。一方で、インナー・ワールドの描出に全てを置いたようなこの作風は果たしてどうなのか?という思いも少なからずあり、手放しで絶賛するのはちょっと無理。ここを一つの通過点と捉える自分みたいな従来からのファンには全く問題なかろうが、作品単体としてはこれまでになく微妙な位置/捉えどころの無さが際立つようにも感じられる。楽曲の完璧な構築性は回を追うごとに増していると思うが、なんというかこう、「まぁ!コイツラやっぱりブッ壊れてるわネ!」みたいな楽曲自体の面白味がもう少し欲しい。

Strange Attractor

★★★★

上記作品と同時に、ダウンロード・オンリー(無料)でリリースされた双生児。こちらは完全なインスト・ナンバーで、上述した"Hello Blackbird"と密接にリンクしたシネマティックな音像を38分間に渡り展開。実はこちらが主で、"Snowflake〜"が従なのでは?という見方もあるが、それぐらいこの路線は従来と一線を画しており、世界が違う。

プログレッシヴな構成にて小爆発を起こす瞬間瞬間こそあれど、やはりこちらも楽曲の展開ではなく、トータルで描出されるオリジナルの世界像に重心は在る。そうして見ると、個人的には"Hello Blackbird"に軍配を上げたくなってしまうのだが・・・。

Complete Peel Sessions

★★★★

1967年から逝去する04年まで、英BBC RADIO 1においてJohn Peelが手掛けたPeel Sessions。メジャー/マイナーを問わず多くのバンドが関わった名物番組だが、20年近いキャリアを持つMERCURY REVもこの番組との関係は深く、デビューから5thアルバムに至るまで、作品のリリース毎にこの「Session」を行っている。今作はその軌跡をコンパイルした、おそらくバンド側にとっても深い思いを込めたであろう一枚。とりあえず、記録された年代と楽曲を見てもらえばこのディスクの価値も自然と浮かんでくるはず。

Disc 1:
【JOHN PEEL SESSION 27/08/1991】
1.FRITTERING
2.CONEY ISLAND CYCLONE
3.SYRINGE MOUTH
4.CHASIN' A BEE

【JOHN PEEL SESSION 13/07/1993】
5.TRICKLEDOWN
6.DOWNS ARE FEMININE BALLOONS
7.BOYS PEEL OUT

【JOHN PEEL SESSION 02/07/1995】
8.EVERLASTING ARM
9.I ONLY HAVE EYES FOR YOU
10.RACING THE TIDE
11.CLOSE ENCOUNTERS OF THE 3RD GRADE

Disc 2:
【JOHN PEEL SESSION 05/05/1999】
1.I DON'T WANNA BE A SOLDIER MAMA I DON'T WANNA DIE
2.THE FUNNY BIRD/TONITE IT SHOWS
3.OBSERVATORY CREST

【JOHN PEEL SESSION 15/11/2001】
4.TIDES OF THE MOON
5.LITTLE RHYMES
6.SPIDER AND FLIES
7.PLANET CARAVAN
8.GYMNOPEDIES 3
9.HERCULES

ブックレットにはJohn Peelとの「記憶」を巡るJonathanの言葉も収められており、そんなところからもMERCURY REVというバンドが当初からこのSessionに対して特別な思いを持っていたことが伺える。また、それを裏付けるように、本作に収録されたトラックの出来はナントモ非常に素晴らしく、他の作品にはない魅力が濃密に詰められている。スピーカーを通してバンドの姿が浮かぶようなプロダクションは、ちょうど彼らの完璧なスタジオワークと、その圧巻のライブパフォーマンスとの中間に在るようにも聴こえる。

静かに満ちる潮騒のような"Frittering"から始まる初期の楽曲群は、オリジナルと比べて非常に高い明度のイカれた音の重奏が物凄く刺激的。David Bakerのぶっ飛んだヴォーカルに雄叫びを上げるギター・ノイズが呼応する"Chasin' A Bee"、その華やかなカオスをいっそう絢爛にして魅せる"Trickledown"のアレンジを始め、いつもより一段と多彩な表情を覗かせる楽曲群はマジで聴き応え十分。何の違和もなくサバスの"Planet Caravan"へと旅立ち、サティの"Gymnopedies 3"で幻想的に揺れ、ラストの"Hercules"で再び高く飛翔していくという展開も凄くいい。ある意味、先のベスト盤よりも上手くバンド史を総括できているようにも感じる。

http://www.myspace.com/mercuryrevmusic



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