THIS WILL DESTROY YOU/Young Mountain

★★★★☆

テキサスから届けられた4人の新星によるデビューアルバム。この上なくストレートでピュアな音塊が、莫大な昂揚感を幾度にも渡って現出させる素晴らしいポストロックサウンド。

ムーディーな鍵盤器楽による点描、クリアディレイが織り成すノスタルジー、豊潤な音塊を落とし込むバスドラムがゆっくりと円弧を描き、やがて圧倒的に美しい轟音が溢れ出す。一切の余剰を廃した純朴な音の塊は、その一つ一つが極めて美しく、胸を鷲掴む至上のセンチメンタリズムを孕んで鳴り渡る。音のレンジは良い意味で狭く、タイトで、非常に蜜な空気とライブ感を伴いながら空気を震わせ、眼前一杯に降り注ぐ。

朴訥なメロディが真っ直ぐに胸を射抜き、堰を切ったかのように溢れ出す純白の轟音は、留まることを知らぬかのように二重三重のカタルシスを描き出していく。Tr.2"The World Is Our"で織り成される、純度100%の眩い轟音による波状攻撃はどうだ。そのメロディの素晴らしさ/抜きん出た構築力による展開の即効性と同時に、このバンドが放つ轟音パートには、他の類似バンドの比ではない昂揚持続性がある。CDRオンリーでリリースされながら、某海外紙の"Top 50 Instrumental Albums of 2005"の第5位に位置づけれた本作。類似バンドが数多蠢く中で、その抜きん出た才をまざまざと感じ取ることの出来る名盤。

http://www.myspace.com/thiswilldestroyyou

S.T

★★★☆

お山の熊さんから1年半、テキサスの4人組ポストロックバンドによる2ndアルバム。センチメンタルな旋律の昂ぶりから、炸裂する轟音へ・・・静→動への定式アプローチを奏でる「EITS以降のポストロック」の中でも、物凄く"正統的"な印象が強いこのバンド。

今作でもその姿勢は同じ。クリア・ディレイ/トレモロ使いで旋回するツイン・ギターに、悠然と響くリズム隊。言い方は悪いかもしれないが、その衒いの無いストレートな音像からは、"真摯"やら"純粋"だとかの域を飛び超えて、ほとんど"馬鹿正直"なまでの生真面目さを感じる。勿論良い意味でね。

基本姿勢は同じだが、前作と比べて展開における即効性は減少。一瞬間の明快な炸裂ではなく、下から迫り上がる轟音に気づけば呑まれている、といった展開がメイン。アナログ・シンセの柔らかな旋律を始め、微細な電子音を丁寧に織り込んだ柔らかでダイナミックな空間は、最近のSaxon Shoreとタメを張る昂揚感を醸している。

ただ、個人的には今回その手法に若干の回りクドサを感じたのも事実。頭でっかちとは言わないが、もう少し(前作であったような)素直な開放感があってもいいかなと。しかしこの朴訥なクソ真面目さは大好き。これぞテキサス!(の一面)だと思わされる、良いバンドです。

http://www.myspace.com/thiswilldestroyyou