PURE REASON REVOLUTION/Cautionary Tales For The Brave

★★★☆

 久々に青田買い的なバンドを、、、ということで紹介するは英ロンドンの5人組、PRRのミニアルバム。随分前にアラン・マッギーの新興レーベル、POPTONESからシングルをリリースしていた記憶あり。昨今のシーンにおいては限りなく珍種に近づいてしまった感のある、骨太なUKロックサウンドを轟かせる。

 オープニングトラック"In Aurelia"、野太いベースを機軸とするリズム隊が、周囲を睥睨するかの傲岸さで驀進。闇と憂いを背負ったヴォーカルが悠然と覆い被さる。コーラス隊の蕩揺いが生み出すサイケデリックな質感と、デジタルノイズを絶妙に配し「現在っぽさ」を絶妙に取り込んだサウンドスタイルが、KASABIANやTCTCを彷彿とさせる。続くTr.2"The Bright Ambassadors Of Morning"は、大胆にフューチャーされるシンセ/キーボードの旋律がYesやPink Floydのそれを想起させる、10分以上に渡るスペーシーな長尺ナンバー。まだこの長さに対する必然性を感じさせるまでには至らないものの、なかなか面白い。

 4つのパートに分かれた25分強。まだ自らの音に対する確信を持ちえていないためか、ところどころでその大仰さから虚仮脅し的なものを感じてしまう瞬間はあるものの、極めて高い潜在能力を感じさせるのもまた事実。シーンを気にすることなく、初期衝動をブチ撒けるようなデビュー盤を待望!

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The Dark Third

★★★★

大英帝国はロンドンの5人組、PRRのデビューフル。先に紹介したミニアルバムでは、その大仰な音を「虚仮脅し的」とも書きましたが、今作において格段に深みを増したその楽曲の完成度に驚かされました。

雄大に燻らされる骨太なギターリフを軸に、混声のヴォーカルや鍵盤器楽が宇宙的なスケール感を付与していくそのサウンド。プログレッシヴに揺らめき拡散する強靭な音の佇まいは、昨今のUK新人バンドとは全くもって異なる次元に立ち居地を占め、非常に強烈な存在感を放っている。

艶やかな闇に満たされた空間で鳴り響く、屈強なギターと英国らしい影を孕んだメロディの昂揚感が素晴らしいTr.4"The Bright Ambassador Of Morning"、一気に加速しロックのダイナミズムを炸裂させるTr.5"Nimos &Tambos"などは、TCTCの2ndが好きな人にはタマラナイ、最近では希少な感のある骨太で色香の漂う英国ロック。Tr.6の後半部"In The Realms Of The Divine"で炸裂するヴァイオリン・ストリングス、流麗なギター・テクスチャ、コーラスワークの絡み具合も相当にカッコイイ。

拙速に逸らず鈍重に沈むこともないダイナミックな展開は、素晴らしいの一言。浮ついた空気を微塵も感じさせぬ堂々たる音の威容が、全くもって新人バンドとは思えぬどっしりとした昂揚を放つ。彼らの音を評するに「プログレ」という言葉は必ずといっていいほど出てくるが、「プログレ」だといって何も小難しく考える必要は無い。先に挙げたTCTCが好きな人は間違いなく気に入るだろうし、Kasabianの新譜に不完全燃焼を起こした人にも是非聴いてもらいたい、UKロックのダイナミズムと壮麗さを余すところなく体現した、非常にクオリティの高い作品。

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Amor Vincit Omnia

★★★★

プログレッシヴ・ダークの昂揚を現代に甦らせる、英国の希少種による2ndフル。アルチンボルド風のグロテスクをジャケに据えちゃうセンスは(いつもながら)微妙だが、中身のほうはかなり良い!んでもってコレ、初聴時には少なからずエェッ!?と面喰らった。前作リリースから3年の間にあったメンバー・チェンジを反映してか、楽曲アプローチにかなり大胆な変化が起きてるの。すなわち、初っ端から「誰ですか?」ってな押し出しで打ち出るエレクトロニカ/ビートが造る人工的で、平坦な感触。さながら宇宙的な深度が全編でのたくっていた従前のダイナミズムを意図的に分解し、直線的に延べていくようなアプローチが意外すぎる!幅を広げようとして自滅〜って酷評も目にしたが、このバンドの立ち位置にしてこの音は、確かにかなりバッキリと賛否が別れそう。

ほとんどレトロなまでにフューチャリスティックな(変な言い種だが)電子音を躍らせる"Les Malheurs"の嘘クサさや、ヴォコーダーまみれの人造VOICEがやわらかに滴り明滅するエレクトロニカと絡む"Disconnect"、果てはバリバリ(死語)のデジGROOVEがKASABIAN顔負けの傲岸不遜で驀進する"Deus Ex Machina"まで、表層にキワドイ彩色が施された楽曲は、しかし全っ然安っぽく聴こえない。なんちゅうかそのあからさまなイロの背景に、もれなくバンドの独自色が溶け込んで聴こえるのです。

エレクトロニカの微弱な波を、混声のコーラスがかき揺らし様々な表情に変えていくTr.3〜4にかけての組曲風や、ダンサンブルなビートを原動に、眩い音の螺旋模様が重なっていく9分超の"The Gloaming"、漆黒の奔流が一挙に脳内に流れ込み、洗いざらす"Victorious Cupid"などなど、ともすれば濃すぎてクドくなりがちなバンドの大仰な世界観が、即効性の高い電子音によってうまく稀釈されて響く。以前の感想でも書いたような気もするが、どこか今は亡きTCTCと同じ匂いを感じます。ただ、昨年リリースされたライブ盤はイマイチだったので、この出来はプロデューサー/Paul Northfiledの手腕に因るところは大きいのかもしれない。

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Hammer And Anvil

★★★★

前作から18ヶ月のスピードリリースとなった第3作。プログレッシヴ/ダークなUKロックから、漆黒滴るダーク・トロニカへと変貌した前作に続き、今回はさらに80s〜90sへ至るダンスミュージックの沼地へズッポリ片脚を突っ込んだような、レトロともモダンともつきがたい楽曲を展開する。

まさしくビッグバンの如くシンセが炸裂する冒頭"Fight Fire"は、バウンスするビート/沸き起こる旋律/リフレインする女声ヴォーカルが攻撃的に波状する、バンド従前の面影する見つけること不能な異形っぷり。存分なインパクトを叩きつけたうえで続くTr.2"Black Mourning"に至ってようやく、バンド特有の、そしてUKロックに特有のメランコリーがあふれ出す。以降も執拗に空間を埋めるのは、過去の亡霊のようなビートと旋律。と同時にそこには懐古的な温度は微塵もなく、漆黒を思わせる冷たく滑らかな甲殻で全てがスッポリと覆われている。その純黒のスペースを流れ漂うほの暗いメロディと、それに付随する昂揚感。英国特有の暗いメランコリーと、病質的な破壊衝動。その破滅的な魅力へと余人をアクセスさせる楽曲が非常にクール。また言うが、今は亡きTCTCがやりたかっただろうアプローチを、そのテクニック面の巧さもあってどんどんこなしていっているようにも聴こえる。またTr.5"Valour"のように、KASABIANのファン層あたりへも余裕でアピールできそうなポップ・センスも彼らの魅力。

今作について言えば、初っ端のツカミで最後まで離さないだけの起伏のウマ味はまだ薄いように思う。が、確実に次にナニかやらかしそうな、そんな匂いをプンプンさせるには十二分な一枚ではある。

Myspace
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