THE COOPER TEMPLE CLAUSE/See This Through And Leave

★★★★

デビューEPが出た頃から、ここ日本でもやたらめったら騒がれていたTCTCのデビューアルバム。結構待たされた感があったような。あんまり考えすぎて変にまとまり過ぎたら嫌だなぁとか思っていた記憶があるけれど、杞憂だった(笑)。のっけからいきなり神経症的なシンセが耳に突き刺さり、終盤一気に爆発する1曲目から始まり、ブンブン飛び交うベースと疾走感のあるギターが唸る、これぞUKギターロックといった感のあるTr.2。そしてそこにさらにシンセやらなんやら電子音をぶちまけて加速させた"Panzer Attack"へと続く流れは、もう堪らない。迫力ありすぎ。続く"Who Needs Enemies"では、丸太でぶん殴られるかのような太いベースラインに、Vo.ベンのがなり声が加わり、ゆったりと歌い上げられる。ここでも体は横に揺れ、非常に気持ち良い。中盤から後半にかけても、シンセが飛び交い、ギターが津波のように覆い被さる"Let's Kill Music"や、頭を縦に振らずにはいられないようなへヴィーロックサウンドの"Been Training Dogs"など、ロックの醍醐味とも言えるサウンドが、所狭しと詰め込まれている。

あえて一つだけ難を上げるとすると、"Amber" "Digital Observations" "The Lake" "Murder Song"といった、いわゆる「大曲」と言われる曲に関して、あえてこれだけの曲数を入れなくても良かったかな、という気はする。まぁでもこれだけ長い曲を、最初から最後までリスナーを離さずに聴かせるだけの力量まで備えてたらちょっと怖いかな(笑)。

Kick Up The Fire And Let The Frame Break Loose

★★★★☆

前作から約1年半でリリースされたTCTCの2ndアルバム。まず一聴してその音の分厚さに驚いた。前作でも様々な楽器がかき鳴らされ、良い意味で「うるさい」アルバムだったが、今作では放たれる一つ一つの音が本当に重い。確信に満ちた音とでも言えばいいだろうか。例えばTr.1の"The Same Mistakes"にしても、緩やかな立ち上がりから徐々に盛り上がり、爆発するという展開は前作1曲目と同じだが、前作であった散漫な感じが跡形も無い。ライブを積み重ね、ギターやベースのテクニックが向上したことに加え、これまでは衝動的に鳴らされていた感のある電子音が、今作では非常に効果的に配置され、曲群に素晴らしい構築力を与えている。特に、中盤で全ての音が一瞬飲み込まれ、ビッグバンのように一気に吐き出されるTr.8、"Music Box"の宇宙的な広さを感じさせるサウンドは圧倒的。

これはもう、「大人になったアルバム」とか言うレベルではなく、それぞれ強烈な個性と才能を持った6人が、完璧に一体となって生み出された怪物アルバムだと言える。このアルバムには、単なる「初期衝動」という勢いのみでは乗り越えれない壁を簡単に突き崩してしまうような、強烈な破壊力がある。前作で言及した、「最初から最後まで聴かせる」という点でも文句なしの傑作アルバム。

Make This Your Own

★★★★

3年のインターヴァルにて送り出された3rd。ディズ(B)の脱退により5人体制となった影響は、ココからは全く感じられない。相変わらずの基礎体力の高さを感じさせる素晴らしい内容となっている。

一聴して感じるのは、楽曲に対するこれまでに無く投げ遣りな距離感。とか言うと何だか否定的に思われるかもしれないが、勿論良い意味で。シーンを破壊してやると言わんばかりにプリミティヴな衝動を吐き散らし驀進したデビュー盤での力み具合や、ハイプとは言わせぬとその高い楽曲構築力を示し濃密な混沌を充満させた2作目におけるような、時に過剰なまでに表出していた自意識が、今作においては非常に上手く消化(昇華)されている。

過剰な気負いを排除された楽曲はどれも、その胸を打ち震わせるメロディと、美しく構築され暴力的に破壊される類稀な組成・展開の昂揚を実にストレートにこちらに提示する。流麗に刻まれ胸を掻き毟るメランコリックなメロディラインが美しくバーストするTr.5"Waiting Game"、Tr.7"What Have You Gone And Done"などはその最たるもの。前作における同種のナンバー"Blind Pilots"が全体に対する計算をもって配置されていたのに対し、今作におけるこの2曲は、極めて自然発生的にこの場へ沸き上がってきているように聴こえるのも面白い。Tr.9"All I See Is You"にてその自意識がチラと顔を覗かせるが、それもまたラストトラックにて上手く軌道修正されていく。

さらに特筆すべきは、より複雑さを増した楽曲の構成。これまでも各曲中には相当の物量が詰め込まれていたが、今作では曲中で錯綜するその音因子自体に、既にして背反する作用が備わっているかのよう。地響きを立てる獰猛なギターリフと空間を瞬間的に冷却するクールなエレクトロニカ、がなり立てられる衝動のメロディとメロウにメランコリックに場を揺らす旋律の双璧。前作と同様に作品のアタマを張るTr.2"Homo Sapience"を始め、アルバム前半部を聴けばその吹き荒れる嵐の背後で為されている緻密な構成に驚くだろう。

これまでシングルBsideで行われていた奔放な(実験的というのとはまた違う)取り組みと、その自由の場で表出したストレートな昂揚感が、今作では本当に強く感じられる。それ故に楽曲の並びの必然性や、トータルにて打ち立てられる世界観といったようなものは、たぶんこれまでで最も小さい。が、こんなにもやかましく、そして美しく胸を奮わせるナンバーが充ち溢れるアルバムは、たぶん他に探してもなかなか無い。オススメです。

http://www.myspace.com/thecoopertempleclause



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