MASERATI/The Language Of Cities

★★★★

ツインギター、ベース、ドラムから成るアセンズの4人組ポストロックバンドの2nd。彼らは自らの音を「instrumental U2」と評しているそう。Tr.1〜3は、ゆったりと空気中に染み入るように鳴り響くギターサウンドとかなり分厚いベースラインが壮大な雰囲気を醸し出していて、劇的な変化はないものの横揺れの心地良い空間を生み出している。その空気がガラっと一変するのがTr.4"Keep It Gold"。パンキッシュなリフを性急に刻むギターから始まるこの曲は、それまでとは一変した攻撃的なサウンドを奏で、轟音ギターとともに一気に加速する。そして個人的にベストトラックなのが続く"Being A President Is Like Riding A Tiger"。ソロギターの緩やかな立ち上がりにドラムが入り、転調を繰り返しながら次第に加速。そして残り3分となった頃に登場する螺旋を描くようにメロディアスなベースラインがもうホント最高に気持ち良い!その全てを飲み込むように轟くディストーションギターの轟音とともに締めくくられるこの曲は、これ1曲だけのためにアルバム買ってもいいかなと思えるぐらいの高揚感が味わえる。個人的にはゆったりと聴かせるアルバム前半部よりも疾走感のある後半部のほうが好きです。

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Inventions For The New Season

★★★★☆

ジョージア州アセンズのインストロックバンド、Maseratiの3rdアルバム。解散したものとばかり思っていたが、実に5年ぶりとなる本作にてリターン。

前作での音空間を刷新し、大きく化けた感のあるサウンド。その立役者はおそらく、新しくバンドに加入したJerry Fuchs(!!!のドラマー)。シンプルだがおよそ単調ではないリズムセクションが、アルバム全般にダンサンブルで持続的な(加えて本能的な)ビートの快楽を与えている。Maseratiのサウンドの核は、度重なるリフレインとループにより生み出される巨大な音の螺旋模様だが、その幾重にも渦巻く反復の構造物を、全くストレスなく牽引していくこのドラムの駆動力は、トータルにおいて相当強力な武器になっている。

Ash Ra Tempelから影響を受けたというオープニングトラック"Inventions"。サイケデリック、かつヒロイックな表情をも併せ持った雄大なメロディが旋回し、クライマックスにてスペーシーなギターリフが空間を一掃する、ドラッギーな宇宙系中篇ナンバー。ミドルテンポの反復作用の恍惚がジワジワと神経を侵していく展開から、高速の3連ビートが跋扈するハイライトトラック"Show The Season"へ。燦然と砕け散るハイハット/メロディアスに転回するベースリフの暴力的な躍動がAudionomを彷彿とさせる、今作中で最もエキサイティングな瞬間が描き出される。

ポストロック的手法を採りながら、描かれる空間は非常にダンサンブルでスペーシー。独自の様式美に拘りながら、本能に強く訴え躍らせるファクターを孕んだ楽曲は、インストロックの一つの理想像を成しているとも言えそう。リリースはTemporary Residenceから(いかにもこのレーベル!なサウンドは、ラストの"The World Outside"だけ)。04年の来日公演も良かったが、このアルバム内容で是非もう一度ライブが観てみたい!

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MASERATI-ZOMBI/Split

★★★★☆

なんも言えねぇ、、、
って顔で恍惚とした最高のsplit盤。前作は07年のBESTにも入れるぐらい聴きまくっていたUSアセンズの4人組/Maseratiと、先日Relapseからリリースした新譜では、70sのprog/psychを妄想的に膨らませたような楽曲を密生させていたピッツバーグのデュオ/Zombiによる共闘盤。

Maseratiの楽曲は"Inventions〜"の良い流れを踏襲。かつて‘instrumental U2’とも評されたドラマティックな拡がりを持つ空間がマジで気持ち良い。クラウト的な牽引力と、ポストロックの上昇アプローチが最高の形でメルトしたダンサンブルなインスト・ロックに、個人的にはもう文句の付けようがありまへん。

対するZombiは13分超の1発勝負。柔らかな闇を描出するアナログシンセの重奏に、ランブルなドラミングを載せていく序盤から、スペーシーな水平展開でサーフする後半へと遷っていく流れがめっちゃ美味。全5パート/30分弱とヴォリュームこそ控え目ながら、その質は最高!今のところLPのみでのリリースで、調べた限りではTemporary Residenceからの直買いが最安。1,500円ぐらいで買えました。

1. MASERATI: Join Us, Mystic Sister
2. MASERATI: No More Sages
3. MASERATI: Monoliths
4. MASERATI: Thieves
5. ZOMBI: Infinity

http://www.myspace.com/maseratirocks
http://www.myspace.com/zombi

Pyramid Of The Sun

★★★★

2009年11月、交通事故により急逝したドラマー/Jerry Fuchsの死を乗り越えんと発表された、3年ぶりとなる4thアルバム。

前作で「ポストロック」の頚城を離れ、ミニマル/ダンサンブルな宇宙奏へと飛び立ったトラック群は、今作でいっそうその純度を増している。轟音部がもたらすカタルティックな起伏が抑え気味になった分、折り重なるリフレインが生み出すトランシィな昂揚感に、よりいっそうのフォーカスが絞り込まれてくる。今作には既に録音済であったJerry Fuchsのドラム・パートと、Steeve Moore(Zombi)によるパートが混在している、とされている。クレジットがないため確認こそ出来ないが、おそらくこれがJerryだと確証を持てるほどに、その流星の如きドラミング・センスは光る。方法論としてはかなりオーソドックスなインスト・ロックに、眩いばかりの疾走感と強烈な精緻とを投げ与えるそのプレイアビリティはやはり無二。だけに今後のMASERATIがどういう方向で進んでいくのか心配でもあるのだが、とにかくもこの1枚のリリースには並でない意味が宿っていると思う。

Myspace

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Z

★★★★

事故により急逝したドラマー/Jerry Fuchs参加のラストアルバム"Pyramid Of The Sun"から2年。往時の構成が素晴らしかっただけに、なんとなくこのまま消滅してしまうんだろうなぁとちょっぴりセンチな気分に浸っていた自分にとって、わずか2年のスパンでリリースされたこの新作は嬉しい驚きだった。

ドラマーにCINEMECHANICAのMike Albaneseを迎えて製作された5thアルバム。マシーンのように精緻なJerryのリズムこそ無くなったが、代わって持ち込まれたアグレッシヴな展開が熱い。おそらくはこれまでで最も「攻めている」アルバムだ。フロアを揺らすアッパーなビート、宙を穿ち、旋回するスペィシーなギター・リフが炸裂するオープナー"San Angeles"は、加味されるシンセがどこか近未来チックなフレーバーを醸し出す。他にも"The Eliminator"や"Earth-Like"といった楽曲では、従来のバンドサウンドをビルドアップしたようなアグレッシヴさが見える。対して"Martin Rev"を筆頭に、個人的には本作中のベストトラックだと感じる"Abracadabracab"や"Solar Exodus"といったトラックでは、ミニマムな音数を効果的に鳴らし拡げていくサウンドでサブリミナルな感情を刺激する。

ドラマーが代わったとはいえ、そこにCINEMECHANICAばりのマス・コアな展開を持ち込むわけでなく、ベースに拡がるのは驚くほどに「これまで通り」のMASERATI節だ。反復という名の「リフ・レイン」を降らせるディレイ・ギターの合唱は随所でこれまでになく攻めており、片やそのギターを押さえ、太いリズムと、終局の解放へと向けて抑制された電子音を配置する楽曲においては従来型を脱構築しようとしているようにも聴こえる。

失ってよりいっそうその偉大さが分かるJerryのリズム。あのグルーヴ感を超えることはおよそ容易ではないけれど、その大きな山へ向かう力強い一歩がハッキリと感じ取れた良作。

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