EXITMUSIC/Passage

★★★★☆

この音楽がもたらす煽情性は犯罪にも等しい

OK Computerに収められたRADIOHEADの名曲"Exit Music"と同じバンド名を冠する、Aleksa PalladinoとDevon Churchから成るNYCはブルックリンのデュオ/Exitmusicのデビューアルバムが素晴らしい。彼らが鳴らすサウンドは、エモーショナルで、ピュアで、美しい。彼らのサウンドの核にあるのは、熱。一種幻想的なニュアンスの背後から立ち現れる、荒々しく激しい半ば暴風のような熱量に圧倒される。そこに理屈が入り込む隙間はない。聴き手はただただ過剰なまでに濃密な、感情という名の嵐に打ちのめされる。嬲られ、慰撫され、叩きのめされ、浄化される孤独な魂。アルバムトータルで一つの極点を描くというよりは、それぞれに激しいピークを迎える楽曲群からは、言わば峻厳な尾根を一気に縦走するような迫力を感じる。

明滅する電子音、光を振りまき旋回するコーラス/そしてときに感情を振り絞るような痛切を放つヴォーカル、ブリザードのような轟音ギター/膨れ上がる重低音。それらは、アンビエントに流れることなく全てにおいて直接的な力をもって作用する。美しい蹂躙。そこにあるのは「感情」という名のエレメントが放つ圧倒的な力強さ。まるで何かのサウンドトラックでもあるように語られる音楽は、間違いなく聴き手を、言葉を超えた昂揚へと誘う強い感情に満ちている。個人的にはDREAMENDのデビュー盤を聴いたその時と同じ感覚も思い出した。ナイーヴな精神がそのままに強く膨れ上がるとき、そこに触れた人間は、動揺にも似た強い感覚に突き動かされる。ノスタルジックなアルバムアート・ワークに心動かされた人は必聴。彼らのサウンドは、その期待を決して裏切らないから。

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