DREAMEND/As If By Ghosts

★★★★☆

Ryan Manon、Derek Virta、Mike Murlarzの3人から成るシカゴのスロウコア/ポストロックバンド、Dreamendのデビューアルバム。ともすればフッと立ち消えてしまいそうな繊細な「歌」と、激情の渦となって聴き手を飲み込むドラマチックな轟音により紡ぎあげられた幻想的な世界が展開されている。

メランコリックなギターのベールに包み込まれ、繊細なボーカルが幽玄的な雰囲気を醸し出すオープニングトラック"Of Raven And Winds"は、終盤で突如、最前面で轟く生々しいドラムの嵐とその背後で鳴り響く轟音ギターにかき消される。その流れから再びドリーミーな世界へと舞い戻り、美しいチャイムの音色とEITSを思わせるような小刻みなドラミング、旋回するディストーションギターに包み込まれるインストナンバー"Elipsis"に続き、JJ72 meets ポストロックと形容したくなるような劇的ナンバー"Four Days In May"へと展開する。 見知らぬ無人の街、そこにたった一人で取り残されたような異様な焦燥感を掻き立てるギターフレーズから始まる高速インストナンバー"Almighty"は、初期GY!BEの雰囲気。穏やかな光と冷たい影の双方を連想させる、メランコリックな歌もののTr.5、6、7を経てアルバムはクライマックスへ。まばゆい光を撒き散らし、終盤でMogwaiのhelicon 1張りに炸裂・飛翔するギターが心地良いTr.8、光に満ちた高みへと昇りつめていくドラミングと、クリアーなトレモロギターが織り成すメランコリックな空間が、EITS顔負けの美しい轟音を奏でるTr.9、10は文句の付けようがないぐらい素晴らしい。

今年買ったポストロックバンドのアルバム中では1,2を争うぐらいの素晴らしい作品。アルバムのアートワークにそれぞれ異なる写真を挿入しているところも手作り感満載で面白い(インナースリーブには心霊写真のようなネガが入っていた、、、)EITS、GY!BE、Mogwai、Lowあたりが好きな人は是非ご一聴を。

Maybe We're Making God Sad And Lonely

★★★★☆

 シカゴの3ピースポストロックバンド、Dreamendの2ndアルバム。オープニングトラック"A Place In Thy Memory"、深く濃密にリヴァ―ヴがけられた空間を、美しい蝶を思わせるトレモロギターが何度も何度も旋回する。煌びやかな光を放ちながら降り注ぐ音の燐粉、燦然と打ち鳴らされるハイハット、白昼夢のような混濁の中から立ち現れる覚醒のギターフレーズが素晴らしい昂揚感をもたらす。

「I'd like to tell you a ghost story that'll really raise the hair on yer head...」
南北戦争時代の記憶を訥々と述懐する女性のナレーションと、ほの暗く明滅するキーボード/グロッケンが多層的に絡み合い、美しい夢の世界を浮遊するTr.2"In Her Little Bed We Lay Her"は、展開ではなく、蕩揺う音それ自体が強烈な昂揚感を放射する素晴らしいナンバー。さらにアルバムは、ジャングリーなギターワークとRyanの甘い歌声が錯綜するシューゲイジングナンバー、"Cant Take You"、ノスタルジアの波間でリフレインする歌と共鳴し、クリアギターが白く輝く"Iceland"を経てクライマックスへと向かう。

 「浮遊感」
彼らの特徴を集約する言葉。作品全体に渡って聴き手を包みこむ夢中の感覚。幻想的なフィードバックノイズを背景に牧歌的なコーラスが歌われる終曲における万能感、絶対的な幸福感はまさにこのバンドの音を象徴している。ジャケットのアートワークはGY!BEの作品を手掛けることで知られるWilliam Schaff。全6曲30分強と短めですが、2作目にして自分たちの音を確立した感のある良作です。是非聴いてみてください。

http://www.dreamend.com/#

The Long Forgotten Friend

★★★★

Ryan Manonを中心とするシカゴのポストロック/シューゲイザーバンドによる3rd。輸入版ジャケットのイラストを手掛けるのは、前作と同じくWilliam Schaff。である一方、EITS×GY!BEとも形容可能だった従来のメランコリックかつダークな轟音ポストロック路線を期待して臨むと、いささか面食らう。

本作ではRyanによる幻想的なギター・レイヤーと、これまた夢幻に巣食うような歌がこれまでになく強く、全面に渡って打ち出されている。穏やかな光を放つスライド・ギターとピチカートされる弦楽/牧歌的なヴォーカルが交じり合う"If Only For A Day"、暖かなメランコリーが重ねられていくスロウコア・ナンバーの"Are You Walking"辺りでは、未だ華やかなりし残り香を十分に感じさせるが、続く"Scratch"で心象風景に潜り込んでからの中後半部では、ひたすらに仄暗く、内向的なサウンドスケープをシームレスに紡ぎ出していく。その幻想的な景色の美しさや、脱け出しがたい心地良さは極めて強く、同時にそれは(冬の日の朝にベッドの内で感じるのにも似た)憂鬱にも繋がり得る温もりを孕んで響く。暖かなメランコリーに満ちた室内で窓を打つ雨粒のように跳ねるピアノを聴く"Third Casket"で、涙腺を掴まれない人などいるのだろうか。これを聴いてると、MONTGOLFIER BROTHERSなんかを好んで聴いていた数年前の自分を思い出したりも。

http://www.myspace.com/dreamend