AKIMBO/Harshing Your Melow

★★★★

01年リリースの1st。長らく廃盤になってたのが、今年Tentacle Recordsより再発。オリジナルの10曲22分に、LAパンクのカルト/The Screamers(全く知らんバンドだわ)のカヴァーなど2曲がボートラで追加されている。

ここでは純然たる3ピース。でもって展開構成もかなり直接的。ただ、端々でのアクセントの付け具合はやはり絶妙で、突き刺さるフィードバックノイズの破片や瞬間的にドライブするベース・リフの挿入などが、混乱の爆音渦中における覚醒!っちゅう感じで非常に鮮やか。ハード・コアの暴力にパンキッシュな鮮烈を織り混ぜるような、異ジャンル混合の巧みの片鱗がハッキリ感じられる。これまた格好良い作品。

Forging Steel And Laying Stone

★★★★☆

シアトルの豪腕ハード・コアバンド/Akimboの06年リリース4th。熱く重く、んでもって絶妙な展開で暴れる音塊のロールにやられた。痺れた。小踊った。

オリジナルメンバーはJon Weisnewski、Nat Damm、Jared Burke Eglingtonの3人。今作ではそこにもう一人、Patrick Cunninghamがサポート・ギターで入ってる。激しく捻転する重量感に充ちた音像。酷く歪んだ2本のギターの爆音と、爆発的に交錯するリズム隊。剥き出しの音塊による直接性と、変則的に折り曲げられるヘヴィな音塊。重厚だが抜け感のあるシャウトをかますJonのヴォーカルも好みのドツボ。

まぁ言うたらハード・コアそのものな音なんだが、特筆すべきはその端々にハードロックのダイナミズムが挿入されるところで、そのスマートかつ強引な音の出し引きが非常に格好良い。ばくばく出増すアドレナリン。

展開の美味みが突出してるのが下記2曲。
まずTr.6"Tina, Bring Me the Axe!"。世の理を全否定するような、剥き出しの敵意で打ち立てられる歪んだ音壁から、高速でバーストするリズムとシャウトの混濁へ。そこから一気に70sハードロッキンの明快な律動へ大転換する瞬間の落差がヤバイ。それからTr.11"Maximilian: Jungle Warrior"、こちらも序盤は凶悪かつジャンクな音像で圧しまくり、中途のドラム・フィルから一気にメロディアスに弾むリフで解放する展開。もう不可避小躍りですよ。

ライブ盤かよ!と思うような爆音の封じ込め具合も見事だし、しかし勢いやら重さだけで圧しまくるわけでない器用な展開が、すげーハイセンス。先のIn First Person同様、普段あんまりこの手のを聴かないよという私のようなリスナーに対しても、かなり訴求力あるイカシタ作品だと思います。

Navigating The Bronze

★★★★

07年リリースの5th。今作ではオリジナルの3名に、Aaron Walters がギターで加わった4人体制。叩き出される音像はさらにいっそう下層へ沈下。張り倒さんばかりのバスドラ主体のリズムを先頭に、密なる量感でゴリゴリ押しまくる猛進的な展開は、眼前の障害をブッ潰す!!って感じの直線的な指向性が大。なので、前作におけるような強引なる転換が生み出す落差の快は、抑え目。

トレモロ使いで空間を引き伸ばしたり、ドラムソロのみから成るトラックが飛び出したり、執拗でドロニッシュな反復があったりと、部分部分で「トリッキー」な場面を挿入しつつ、それらが全て、荒く粗く剥き出しでブツカッテクル暴力的なパートの強調に向け働いてるように聴こえる。前方への破壊力に重きが寄り、上下の揺れが少ない分、終盤若干しんどい気もするが、強烈な圧力漲り暴発する音はやっぱ格好良い。これもええ作品です。

Jersey Shores

★★★★☆

コンセプト="nature will fuck you up"
テーマ="sharks, in particular, will totally fuck you up"

シアトルの剛腕ハードコア・トリオ=AKIMBOの6thアルバム。前作と同時期にレコーディングされ、その後大幅なリプロダクトを経てバンド自身初となるコンセプトアルバムとしてリリースされた。良いわぁ!やっぱコイツラべらぼうに格好いい。前作でビミョーに残り燻ぶっていた欲望のカケラを吹き飛ばす轟音ドラマに、我が昂揚中枢は完全制圧。空間を圧するマッシヴなリズム隊、突き立てられる刺激的なリフの行軍、滾り立つ生々しいエモーションにパンクの鮮烈な激情・・・其れ等がブルージーな濁流に併呑されてウネリ立ち、整然と邁進し、暴力的に切り開かれた裂け目から猛然と噴出するのです。

今作で、AKIMBOはヘヴィ・グルーヴが生み出すダイナミズム/巨大なカタルシスを完全に手中に治めた。海岸線へ打ち寄せる波音のサンプリングへ血潮のように混ざり込み、緩やかな旋回ののちやがて巨大なリフが第一の衝撃波として空間をかち割るオープナー"Matawan"で勝利を確信。Nat Dammの叩き出すドラム・ロールを中心に、爆風のように凄まじいグルーヴが空間を埋める。怒号のようなリフ、爆発的に「溜め込まれる」グルーヴ、力強く滑らかに、泥クサく厚く降り積もり吹き荒ぶ灼熱のテンションに宿る圧倒的な昂揚感。平穏に根差す感傷と憂鬱、狂熱に浮かされた「異物」の暴力的な気配とがけたたましく満ち引きする濃密度の楽曲群は、繰り返しになるがトンデモナク強烈な磁場を形成して二度と離さない。湧き上がる衝動が臨界点に達し弾けるTr.3"Lester Stillwell"では、射精しそうな興奮をもたらす快楽の∞グルーヴが私の中枢を蹂躙破壊。悶絶リフ/剛腕リズムが巨大な掘削装置と化し頭上を周回/裁断し続けるTr.4"Rogue"、Tr.5"Great White Bull"へと狂騒は引き継がれ、狂熱の残滓を引き摺る物憂い空気が堆積するTr.6"Jersey Shores"にて冒頭の波音へ回帰。48分間の物語は終焉を迎える。

ジャケットや表題からも推し量れるが、本作ではJersey Shore shark attacks of 1916がテーマになっている(ちなみに各トラックのタイトルには、関連する町や犠牲者の名前等が付されている)。平穏に潜む狂気をピリピリと感じさせる、全編に漂う緊張感は見事で、かつ楽曲自体のカッチョ良さもかなりキテる。初めに「次作はコンセプトアルバムだ」と聞いた際にゃ、ここまで出来の良いものが出てくるとは正直思いもしなかった。NEUROTから初陣となった今作で、より多くの耳にこのバンドの音が届けば嬉しいなと思ったり。

http://www.myspace.com/akimbo



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