IN FIRST PERSON/Lost Between Hands Held Tight

★★★★

US/フィラデルフィアの3ピースによるデビューアルバム。これが今、個人的にドツボな音。

激しく歪んだへヴィな音塊
折り重なる分厚い怒号
直情的なリフの鋭利
烈しく錯綜する激した音の多重層が
非常に強く輝くハードコア・サウンド

突発的に噴出するカオティックな音の乱打に紛れがちだが、鳴り渡る音の土台に在るのは、メタル/ヘヴィロック的な様式。エモーショナルな絶叫から始まるTr.1"The Beast"は、終盤でPelicanにも通じる艶かしいメロディック・リフの奔流へと飛び込んでいく。

全力でもんどり打つような激しいテンポ・チェンジと、突発的なブラストの応酬。瞬発的なリフ/リズムの断片を、出会い頭の交通事故的に衝突させる展開が非常に熱い。半ば捻じ伏せるような強引さでもって、強烈な転換を連続させていくその様からは、さながら数種の爆弾がアチコチで炸裂していくような、デタラメで破壊的な昂揚を覚える。

加えて、半ば爆音にかき消されながら、後景で叫ばれる言葉は非常にポリティカル。3者それぞれがヴォーカル・パートを取るスタイルで、特にドラマーのヴァネッサによる紅一点は、随所でとても鮮やかな瞬間を生み出している。

厚く堆積する混沌めいた音の重層が、終局で一気に豪快なタテの律動へ収斂するTr.7"Deconstructing the I/It"を始めとし、カオティックに渦巻く破壊的な音塊と、明快なリフがもたらす肉体への直接的な快楽の瞬間の組み合わせ方が、かなり巧い。全7曲/25分という短さゆえに可能な鮮烈、というのもあるだろうが、個人的にはかなり昂奮させられた一枚。滅法格好良いです。

http://www.myspace.com/infirstperson