ACROSS TUNDRAS/Dark Songs Of The Prairie

★★★★

コロラド州デンバーのトリオによる1st。ディストーションペダルと癒着したかのように打ち放たれるヘヴィな音塊が、獏とした音景の中で揺らめきながら鳴り響く。

ドゥーム・メタルと形容するには陽的な因子が強く感じられ、ストーナーというには重々しく、鬱々とした気配がより濃く漂う。歪められた重厚なギター・ノイズが背後を厚く塗り固め、前景においては何ともメランコリーな光を放つリフが折り重ねられていく。Pelicanのメロウなパートに共通するものも感じられるが、各所で投げ遣りに放たれる歌声が何とも心地よく響く。荒涼として広がる原風景の中、朧に霞むその声は、強いノスタルジーを荒々しく描き出していくようだ。

溢れ出す分厚い音の奔流は、とてもトリオによるものとは思えない量感を伴う。屈強なリフが効果的なブラストをかましながら、重厚な基底部の上でユルユルユルリと展開していく楽曲に、始終身体を揺らされる感覚がなかなかに心地良い。退廃的な光を孕んだアコースティック・ギターの響きと、男女混声ヴォーカルが柔らかに満ち充ちる"Aura Lea, Maid of Golden Hair"にて幕引き。もう一捻りあってもいいかなとは思うけれど、個人的にはかなり好きな作品。

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Western Sky Ride

★★★★☆

2ndアルバム。Black SabbathとNeil Youngからの影響を表明するサウンドは、空雷の如き爆音リフと渇き切った情感とが交差するHEAVY ROCK。

"ストーナー・キャラバンが聖地エルサレムを目指す"ではないが、今作"Western Sky Ride"からは、移動を強いられる民の息遣いめいたモノが聴こえてくる。立ち昇る圧倒的な諦念と殺気。物語性の豊かなHR/HMという点において前作ではPelicanとの近似も上げたが、今作での極限までに荒涼とした風景はもはや別物。

始終においてディストーション/ファズに寄り掛かっていた前作と比べると、今作では各種エフェクターの踏み分けが極めて効果的に行われる。感傷的に揺らめくスライドギターは、投げ遣られる悲哀の歌声と交じり合い、吹き荒ぶ爆音の渦中へと呑まれていく。カラカラに乾いた空間が、地響きのようなリズムによって爆ぜていく。怒りよりも憎しみよりも強く漂うのは悲しみの匂い。ドロドロとした情念とはむしろ間逆の、ひたすらに渇いた叫びの合唱が強く印象的。前作から一気に深化し、特異な世界を確立した感のある傑作。

赤茶けた大地を行く流浪民
吹き抜け嬲る砂塵の舞い
彼方に轟く稲妻の轟音
崩落する景色の中で
遠く歌が鳴いている

Old World Wanderer

★★★★☆

ナッシュビルへと居を移した、Tanner OLSON率いるトリオによる4作目。前作"Lonesome Wails From The Weeping Willow"ではその掴みどころのない抽象的な音像に肩透かしを喰らったが、今作にて実にファットな爆音へと回帰。彼らのウマみである砂まみれの轟音が、渇いた大地を席捲する。

ジャンル的には数多バンドが跋扈する、BLACK SABBATH系譜のHM/STONER。ではあるが、彷徨するヴォーカルの悲哀を筆頭に、流浪を思わせる土気色のキャラバンが、全景をなんとも言えぬ心象の揺らめきへと誘う。

その独自色の世界をそのままに、キナくさいヘヴィネスのうまみを存分に炸裂させていくのが今作。大地を発破するダイナマイトのようなリフ回しを起点に、次々と溜め込まれては噴出するマグマのようなグルーヴがとにかくエキサイティング。新たなベーシスト/Matt Shivelyの手数の多いプレイも相当ヤヴァイ。地を這う怒涛の熱量と、立ち昇る噴煙のごときギターの咆哮、そしてときに宙空へと投げ出されるメロディの幸福な放擲感。それら要素がベストなバランスで入り乱れ、重厚な残像を残して消えてゆく。孤高の大地を突き進むキャラバンが、聴き手の心象に確実な轍を刻む快作。

http://www.myspace.com/acrosstundras