Pelican/envy/KTL@鰻谷SUNSUI

さぁ今回も無駄に長いライブレポをどうぞ。05年7月以来、2年ぶり2度目となるPelicanの来日ツアー。19時に会場のサンスイへ到着すると、予想していた以上の人の入り。ギュウギュウではないが、動けば隣に触れるレベルで後方まで埋まっている。8割方はenvyメインの客と見た。

さて本日一発目はKTL。SUNN O)))のStephen O'malley/電子音楽家Peter Rehbergから成るユニットだが、こんな記事を読み、興味本位で観に行かなくて良かったワと後から激しく思ったSUNN O)))のライブだっただけに、今日のこのKTLは、それこそ全人類耳栓必携!なビビリ具合参戦したわたくし。待つこと20分、ついにその男がステージ上に!、、、って見えんわ。濃霧の如く敷き詰められるスモークにより、8割方視界が閉ざされる。そして始まった暗黒のヘヴィ・ドローン。なんというか、これはもう「音」というより「震動」だな。ボロっちいライブハウスであれば崩壊を招致しそうな、強烈な重低音が織り成す波動。

低層:ゴッゴゴォォオオォオォオオオビリビリッビリビリッ
中層:ボボッボボボボボッヴヴヴブボボボボ
上層:キーンキキィーンキッシャアアァアアァ

ラウドさはそこまで言うほどではないが、単純に物理的な衝撃として音塊が、衝撃が飛んでくる感覚は初体験。なんか触れる空気がたまに熱を持って感じられ、思わず「音エネルギーって熱量に変換されるのかしら?」などと変なことを考えていた。後ろから観ていて面白かったのは、通常のライブであれば前列の人と人の間に後列の人が立つ入れ子構造(前が見えるように)が普通なんだが、今日のは皆、無意識のうちに物理的な衝撃から逃れでもするように、前列の人の身体の後ろへ隠れるようにジリジリ移動していたようで、最終的にかなり直線的な人の列が幾つも出来上がっていたのに笑えた。一部で超低周波我慢大会の様相を呈していた音の嵐は、上層のノイズが2の"Theme"らしきメロデイを漂わせ、20分ほどで終了。ネタ的な面白さはあるが、金払ってこれだけ観に行こうとは思わんな。。

続いて20時15分よりenvy。こちらは03年にMOGWAIの前座で観て以来。オープニングは"further ahead of warp"、たぶん。荘厳なギターのヴェールが場を覆い、ドラム/ベース/ギターが放つ音塊が落雷のごとく〜という形容はもうやめておこうか。相当な轟音/ノイズにも関わらず、各パートがしっかり分離して聴こえる。ドラマチックな旋律から、いっせーのーで、でバーン!とくる轟音。轟音の中で単発的なフレーズを叫ぶTetsuya Fukagawa。「この大いなる苦悩に充ちた世界でもがき苦しむ人間の絶望的な悲しみと、しかしその絶望の中にこそ見出される光、救済」を描くようなサウンド。ときおり、ハードコアばりにリズムが音が暴れだす楽曲がいくつかありその辺は格好良いんだけど、大半を占めるセンチメンタル・エクスプロージョン系のサウンドには移入できなかった。

そして最後、Pelican。意外と早くセッティングも終わり、21時30分スタート。一発目は予想通り新譜から"Bliss In Concrete"。が、いきなりBrianのベースにトラブル発生。ほとんど泣きそうな顔で音の出ないベースを叩くBrian Herweg。いや、そんなに焦らなくても、、、床を見ればSansAmpらしきものがある程度で、エフェクターらしいエフェクターもほとんど無いシンプル・セッティングなのだが、いやぁ電気系統ってコワイな。そんなこんなで仕切り直しとなった"Bliss In Concrete"だが、結果としては最高!めくるめくリフが次々と出し入れされ、メタリックな黒い快楽がぶんぶんと振り回される。終盤で踏み鳴らされるツーバスの勢いそのままに、"Dead Between The Walls"へ。邪悪な装いの縦のリフが、皆さん頑張って頭振ってください!ってな具合で繰り出される。さらに続いて、なんと1stから"Drought"!!!前回演らなかっただけに、これには興奮。重機車の如く行進し、次第に加速するリフ/リズムがヤバ過ぎた。演奏も前回来日時とはまるで違う安定感で、少なからずハラハラさせられた(笑)ギターソロも、何の危なげもなく弾きこなしていた。

この後さらに2nd/3rdから3曲ずつ披露。振りすぎた私の首も結構疲労。4弦をDにドロップした黒のStingrayで、Brianが爆音の中を気持ちよさそうに泳いでいた"Sirius"や、本編最後の"Red Ran Amber"なんかを聴いていて思ったが、今日のセットで演った2ndの楽曲は、いかにも"へヴィ・メタル"な縦の単純快楽衝動は抑え目で、代わりに空間的な拡がりを持った音が主役。ファズがわーっと全体を埋めつくし、その中でクラッシュが散り、ベースがその中で鳴っているというか。これもenvyとのツアーを希望したpelicanなりの仕様なんだろうか。アンコールで演った楽曲なんて、それこそこれまでのPelicanとは似ても似つかんようなナンバーで、輪郭の不明確なファジーな爆音が全編を覆っていた。新曲がこんなんだったら嫌だが、ライブだからいいか。そんなこんなで80分間、みっちりと魅せてくれたPelicanが終了し帰宅しました。



=Set List=(記憶に拠る)
01.Bliss In Concrete
02.Dead Between The Walls
03.Drought
04.Lost In The Headlights
05.City Of Echoes
06.Sirius
07.Aurora Borealis
08.Far From Fields
09.Red Ran Amber

[Encore]
10. ???(新曲か?)

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