PELICAN@十三 Fandango

 スーツで行くのが何となく憚られるライブハウス、Fandango。職場をこっそり抜け出し、ひとっ風呂浴びてから向かう。19時ジャストに到着すると、メンバーはセッティングの真っ最中。ほどなくフロアの照明が落ち、開始。

 ステージ中央にベーシスト、両脇を2本のギター、そして背後をドラムスが固める。厳かな立ち上がりを予測していたこちらの心理を見透かしたわけではないだろうが、冒頭から艶やかな光を放つ単音ギターの花が乱れ咲いた。オープニングトラック"Sirius"。直後、そのギター音の萌芽を押しつぶすべく、圧倒的なスケールのディストーションギターがフロアを狂熱の渦へと誘う。鼓膜をつんざくフィードバックノイズから雪崩れ込むのは、同じく新譜からのナンバー"Red Run Amber"。バイオリンの弓を用いて奏でられる美しいギターのヴェール/反復する朴訥なベースラインに酩酊する中盤から、嵐のような終盤へ。riff、riff、riff、、、膨大な熱量を放出しながら、爆音という名の音塊が弾け飛ぶ。緩慢な円弧を描く横揺れのグルーヴと、強靭なリフが生み出す縦乗りリズムの快楽。この2つが併存するペリカンのサウンドは、だからとても気持ち良い。

 「自分たちを日本に招いてくれた人達にとても感謝している」そんな言葉に続いて、旧譜から"gw"、"Angel Tears"を披露。情感的な新譜からの曲群と比べ、この2つのナンバーはこの上なく荒削りな響きをもって鳴り渡り、なんともカッコ良かった。"Autumn into Summer"・"Last Day Of April"を経て、やはり最後に持ってきた"March to the Sea"。漆黒のブリザードを思わせる轟音ディストーションが吹き乱れ、せり上がる灼熱の音塊に飲み込まれながら彼らの演奏は幕を閉じた。70分に渡るひたむきな演奏を終え、放心したように座り込むベーシストの姿が印象的だった。心地良い充足感とともに、会場を後にしました。



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