XIU XIU/The Air Force

★★★★☆

Jamie Stewartによるソロ・プロジェクト、Xiu Xiuの5th(?)アルバム。催眠的なヴェールを纏った混然たる音の奔流に、数多のインストゥルメンタルが覚醒的に、鮮やかな響きの花を咲かせる。

Tr.1"Buzz"Saw"
しっとりと微睡むピアノ・フレーズに、覚醒的な響きのスネアが打ち込まれる。非常に強い存在感を持ったJamieの声と不可思議なコーラスが溶融混濁し、一瞬にして彼岸の彼方へと聴き手を連れ去っていく。繊細なサンプリングやフルートのキラメク潮騒を後景に、狂的に歪んだ歌、音像が覆い被さりノイズに埋もれていくTr.2"Boy Soprano"、破裂するリズムを左右に従え、幽鬼的に振れ泳ぐJamieの声が空間を埋めるTr.4"Vulture Piano"など、相当に高い次元で鳴らされる、極めて特異で刺激的な音の群れ。


時にゴシックの壮麗さで圧し、片やオリエンタルな匂ひでもって酔わす、半ば神懸かったサウンド・コラージュ。上から何かが降臨してきそうな、はたまた地の底からヤバイものが這い上がってきそうな、浮世離れした強烈なその、音。

予測不能なファクターが強すぎた前作は、通して聴くにはかなり辛いものがありましたが、今作ではそうしたトリッキーな部分が高いスキルの下完璧な統制化に置かれて鳴り響き、結果として非常に強い求心力・昂揚感を持つに至っています。間違いなく彼の最高傑作。素晴らしい。

XXL(Xiu Xiu LARSEN)/Spicchiology?

★★★☆

Xiu XiuことJamie Stewartと、イタリアはトリノのポストロックバンド/Larsenによるユニット。飛び交うノイズと牧歌的に響く生楽器が絡み合い、独特の温度を伴う空間を創り出しています。

重めのビート主体に進行するドラムスを下敷きに、自由に空間を走る電子音と、一見親しみ易げでありながら、その実ひどく異質な空気を撒き散らしているバンジョーやフルート、ハーモニカといった生楽器を重ねていく音作り。大まかな進行を見れば、取り立てて奇を衒うことのないドロニッシュ・サウンドなんだけど、時折ブワリと背後を埋めるアコーディオンや、前面で仄暗く明滅するエレクトリックピアノなどの鍵盤の調べは、異界めいた地へと非常にわかりやすいリンクを貼ってくれるようで、非常に良い。また、これはたぶんJamieの手によるものだと思うのだが、随所でギャリギャリと空間を引き裂くノイズの音声は、不協和音としての刷新性と、ストレートに高揚を煽るカッコ良さを併せ持った独特の鳴りっぷりを見せており、この辺のセンスは本当にすげーなとやはり思わされる。

全体的に非常によく出来たアルバムだと思うんだけど、このユニット名同様に、それぞれのバンドの音を足して2で割ったような(どちらか言えばLarsenの色が強い)サウンドなので、とりわけ大きなサプライズには欠ける。Xiu Xiuの新譜での狂ったポップネスなんかと比べると、少し物足りなさは感じるけど、それぞれのバンドの音が好きな人は、聴いてみて損はないと思います。

Always

★★★★

その奇態をアーティスティックに、POPに鳴らし魅せることができる稀有な才人/Jamie Stewart率いるXiu Xiuの2012年新作。

細胞分裂するPOPの芸術。片手間の「ながら聴き」を許さない痛烈なインパクトが炸裂する。この完成度、06年の傑作The Air Forceを超えたかも!?散乱する音の衝撃、それを一瞬で結晶させるメロディのキレ、乱反射する色と光。そんなのがおよそ尋常でない感情のアップダウン下に展開するトンデモな劇場(激情)型ミュージック。

毒々しい燐粉を散らしながら、しっかりポップに着地するサマがイヤらしいほどに素敵な"Hi"で開幕。Angela嬢との、フラつきながらも心地よいエモーションに寄り添う"Honey-Suckle"みたいなトラックがあるかと思えば、続く"I Luv Abortion"は誰がどう見たって「キ印」なサウンドが破裂するトンデモな展開だったりする次第。落下と上昇。躁鬱の藝術。堕ちては上るメロディ/サウンドがやばいぐらいに気持ちいい。

「Experimental」ちゅう形容を借りて、勢い思いつきだけで酷い音鳴らしているバンドはようさんおるが、やっぱ凄い人はスゴイのだ。この手の狂人じみたパフォーマンスって、出だしのインパクトはともかく、大概は中途でこちらが冷めてきちゃったりするのだが、今作は最後まで落ちない、落とさない。その引力こそが、このアルバムの完成度の高さを表しているように思う。良い意味でこれだけ唖然とさせられる作品は稀少。ステキです。

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