THIS IS A PROCESS OF A STILL LIFE/ST

★★★★

 ミズーリ州はモンタナの5人組、TIAPOSALの1st。いくぶん飽和状態の感もある叙情系ポストロックシーンにおいて、形式を踏襲しただけのなんちゃってバンドとは一線を画する、強い芯を持ったサウンドが奏でられている。

 静謐な空間を穿つようにリフレインするパーカッションと、柔らかなディレイギターのコントラストが素晴らしいオープニングトラック、"Oh God, The Lights Are Going Dim"、月面にたった一人で降り立った宇宙飛行士の心情を連想させる、恐いぐらいに感傷的で美しいTr.2"No Memory Of The Airshow"は、ゆったりとしたリズム隊とrhodesピアノ、リヴァーヴがかったギターのレイヤーに覆われ、やがて雄大に轟くトレモロギターに飲み込まれていく。

 メランコリックなメロディラインやテープコラージュのセンスもさることながら、磨石で磨きぬかれたかのように繊細な光を放つ、各インストゥルメンタルの輝きの素晴らしさは筆舌に尽くし難く、中でもギターフレーズの響きの美しさは異様なほどである。繊細な光を放つ音の綴れ織り、気づけばその柔らかな音の衣にすっぽりと包み込まれている。静→轟音という単純なアプローチに依存することなく、音像空間が醸し出す雰囲気自体を煮詰め、蒸留した後に提示する手法が非常に新鮮。部屋の空気をガラリと一変させ、全7曲に渡って持続的に放出される昂揚感に酔いしれました。

http://www.still-life-music.com/av.php

Light

★★★★

 15ヶ月あまりの短期スパンで届けられた、ミズーリ州モンタナの5人組ポストロックバンドTIAPOASLの2nd。秋の夜空に拡散した郷愁の音色は、華やぐ春の空気を内包した柔らかなそれへと変化。前作において特徴的だった、ピンと張り詰め異様なまでに澄み切ったサウンドから、今作では春の陽だまりのような柔らかさをたたえた、ある種の澱みのようなものを随所で感じ取ることができるアルバムとなっている。

 2本のギターが情交、絡み合いながら上昇し、伸びやかに煌びやかに拡散していく。時折り降り注ぐディストーションギターさえも、ここでは穏やかな昂揚感を伴って反響する。空間に美しい波紋を投げかけるパーカッション、今作でも大々的に取り込まれているローズピアノの豊潤な旋律は本当に素晴らしく、ゆっくりと、しかし確実に美しいサウンドスケープを脳裏に描き出していく。

 「ポストロック」という言葉が食傷気味に捉えられる現在、これだけ端正かつ正当なアプローチにも関わらず、聴き手を強烈に惹きつける魅力を持った楽曲を創り出せるバンドは数少ない。というか知りうる限りでほとんどいない。個人的にかなりオススメのバンドです。