SLEEPING PEOPLE/S.T

★★★★

元Rumah Sakitのメンバーも含むサンディエゴの4人組、スリーピング・ピープルのデビューフル。転調/裏打ち/変拍子/マイナーコードが乱れ飛ぶ、刺激的な変則インストゥルメンテーションが提示される。

叩き込まれて転回(ローリング)する硬質なドラミングと、鈍い閃光とともに刻みこまれる無数のギターリフが乱舞踏し、見事なまでに隙の無い、鋼の質感の構築物を一瞬の砂塵とともに創り上げていく。ベストソングはTr.6"Johnny Depp"。その間隙に膨張するグルーヴを挟み込んだドラミングが、怪しく明滅するスラッジ・リフと絡み合い、プログレッシヴなうねりとともに炸裂するダークな昂揚感を放つナンバーだ。

テクニカルな演奏が産み出す独特のテンション、相当に変則的なリズムを全体にひしめかせながらも、意外やこの手のバンドの中では一番といっていいほど、アクセシビリティの高い作品。By The End Of TonightともRumah Sakitともまた違う、独特の世界観を持った素晴らしいアルバム。

http://www.sleepingpeople.com/4-sound.htm

Growing

★★★★

前作から2年ばかしでドロップされた2ndアルバム。もともとKasey Boekholt(Guitar)/Joileah Maddock(Guitar)/Brandon Relf(Drums)の3人でスタートし、そこへRumah Sakit〜Tarentel〜Howard Helloといったバンドを渡り歩いてきたKenseth Thibideauがベーシストとして加入、現4人体制となったUSサンディアゴのインスト・バンド。

計算づくのリフ/リズムの乱れ打ち!
降りしきる鉛色の五月雨!
構築される鋼の音像!

なんて。マス寄りのインスト・ロックという基本設計に変わりは無し。ただ、相当に無機質で、プレイヤーの体温すら隠匿してしまうようなストイックさが強く匂っていた前作と比べると、その外装には結構な変化が。

柔らかなパルスを主体とした82秒間のオープニングトラック"Centipede's Dream"では、無数の音が単一でないリズムで拍動。レーベルメイトのSybariteにも通じるダンサンブルな音場を形成。前作譲りのギラリとした鋼のアンサンブルで魅せるTr.2,3,4では、ファットさを増したベースにまず耳が行く。空間を膨張させるベースラインの唸りの中で、複雑に絡み合うツインギターとテクニカルなドラミング。

ギターの掛け合いは相変わらず奇天烈で、単純にリード/リズムで割り切りすることなく、各々でややこしく場を刻んでいく。それを含む4者がフイにピタリと方向を揃え、一気に驀進する様がとてもキモチヨク興奮する。

マシーンめいた質感を醸し進行するギターリフは前作同様だが、一方で直接的に身体を揺らしにかかる、野太く直情的な瞬間が端々で見られるのが前作との違いか。無機質なアンサンブルの塊を分かり易くリフトアップする強さが増した反面、どこへ転がるか分からんスリリングさが減少。ために、幾分モタついて感じられる部分もあるので、全体としては一長一短といったところか。

各メンバーのソロトラックを挟んでみたり、ラストではRob Crow(Pinback)が歌っていたりと、「マスロックで括られることが嫌だ」というバンドの意識が色濃く出た感のする作品。

http://www.myspace.com/sleepingpeople