SILVER SUN/ST

★★★★★

牛乳ビンの底のような、いまどき漫画でも見ない丸メガネをかけたJames Broad率いるSilver Sunのデビューアルバム。サーフロックと形容される彼らのサウンドは、夏の海辺を疾走する車の窓から流れ込む風のような心地良いスピード感と、それでいてハードロックからの影響もありそうな骨太の演奏、そしてバンド名同様サンサンと太陽が降り注ぐ海岸線が目に浮かぶような陽性メロディーに満ちている。ボーカルのJamesは、思わずこっちが「おいおい大丈夫か!?」と言ってしまいそうな情けないヘロヘロ声だったりするのだが、それがSilver Sun特有の厚みのあるサウンドと抜群のコントラストをなしていて、楽曲をより魅力的なものにしている。

と色々書いたけど、なんといってもほんとに曲が良い!ディスクをプレーヤーに入れ、1曲目の"Golden Skin"のエッジの効いたギターが聴こえた瞬間から、まさに息つく間もないマジカルポップワールドが展開されていく。そして彼らが凡百のギターポップバンドと違うところは、合間合間で上手く挟まれる、"Far Out"や"Yellow Light"のような、横揺れの気持ち良さを内包するゆったりとした骨太のグルーヴを鳴らすことができるところ。特に夏の終わりの一抹の寂しさを感じさせる"Yellow Light"から、ノイジーなギターと共に一気に加速する"Lava"へ、そして再びグッとトーンダウンして美しいコーラスワークで聴かせる"2 Digits"へと続く流れは最高。そして要所要所だけでなく、全編に渡ってきれいに流れていく完璧な構成を持ったこのアルバム、すごいです。ハッキリ言ってジャケはほんとありえないぐらいダサいけど(笑)、それだけで避けて通るのは勿体なさ過ぎる大傑作アルバム。

Neo Wave

★★★★





You Are Here

★★★★

彼らがまだ"SUN"名義で活動していた頃のEPに収録されていた4曲+"Lava"、"Last Day"のシングルから3曲ずつをコンパイルした日本独自企画のコンピレーションアルバム。全10曲中1stアルバムと被るのは2曲のみ。しかもその他の曲がどれも疾走感溢れる素晴らしい曲ばかりで、ファンとしては非常に嬉しい内容となっております。

'B' Is For Silver Sun

★★★★

同じく日本独自企画のコンピレーションアルバム。こちらはアルバムタイトルから分かるように、既発のシングルのB面曲を計11曲収録しています。ここでもおよそB面曲とは信じがたいような素晴らしくキャッチ-なメロディーが溢れ出す、Silver Sun流ギターポップワールドが展開されています。彼らには珍しくムーグ音が大きくフュ-チャ-され、ハンドクラップと相まって駆け抜けていく"Angel Eyes"や、いつにもまして骨太なギターリフが登場し、Silver Sun流のハードロックを打ち鳴らしている"Made For You"なんかが特に良い感じ。3rdアルバムの発売がホント待ち遠しいです。

Disappear Here

★★★★☆

 実は自分の中で5本の指に入るぐらい大好きなバンドである。黒縁メガネの文学青年(中年!?)、James Broad率いる3ピース/シルヴァー・サンの7年ぶりとなる3rdアルバム。いやはや7年、途中Bullets名義でデモ音源を出していたりはしたものの、ほとんど何の情報も無いこの期間の長かったこと長かったこと。しかし、、、ディスクをトレイに乗せてプレイボタンを押した瞬間、そんな歳月の流れも忘れて思わずニンマリしてしまった。この音、この(有り得ない位ダサい)ジャケセンス、、、こいつらほんっと何も変わってない!

 「サーフポップ」と形容される彼らのサウンドは、UKバンドでありながら英国の曇天など微塵も感じさせない陽性のメロディーに埋め尽くされている。風を切って加速するキャッチ-なメロと肉厚なバンドアンサンブル、そしてそこに乗るジェームズのヘナチョコボイスが一体となり、全10曲/30分40秒を駆け抜けていく。

 絶妙なセンチメンタリズムを含んだ珠玉のメロと、畳み掛けるように展開する楽曲の疾走感がたまらないTr.1・Tr.2、ためを効かせたへヴィリフを落とし込み、横揺れのグルーヴが織り成す至福の空間を生み出しているTr.3、速射砲の如きパパパパコーラスと雪崩のようなディストーションギター、そこに降りかけられる電子音が生成するポップミュージックの魔法に一撃KOされた名曲Tr.4、80sっぽいバブリーなシンセの使い方が新境地を思わせるTr.5、鉄壁のコーラスワークと泣きのソロギターで魅了するTr.6、再びトップギアにシフトチェンジし、思わず頬が弛緩してしまいそうな甘いメロを、抜群のドライブ感でかき鳴らすTr.7・8、海岸線のサンセットを思わせる感傷的なTr.9から、新たなアンセムソングとなりそうな終曲"You Can't Kill Rock&Roll"へ。

 「捨て曲なしでトータルの流れもバッチリ」なんて作品にはそうそうお眼にかかれないけど、この人らは1stに続きこの3rdでもそんな素晴らしいアルバムを創り上げてしまいました(しかもこのアルバム、03年の春には完成してたとか)。漠然とした物言いになるけど、”ロックを愛する全ての人に聞いてほしいアルバム”と言ってしまいます。「ここで消滅する」なんて悲しいこと言わないで、これからも頑張ってくれ〜。そして再度の来日を切に希望。夏の苗場なんて抜群にハマると思うんだけど。

Dad's Weird Dream

★★★★

James Broad率いるパーフェクト・ポップバンド、Silver Sunの4th。7年のブランクを経て再びこの世に姿を現した前作から一転、そこから1年半を待たずに今作を放出するハイペースっぷり。

何故ナゼどうして彼らはこれほどまでにキャッチーな曲を連発できるのか。分厚い曇天を豪快に吹きばすメジャー・コードの炸裂に、一面にサンサンとした陽光を撒き散らす珠玉のメロディが、息つく間もなく"溢れ出す"

ブースター全開にて叩き出される、野太いディストーションギターの鳴りっぷりが何とも印象的な今作。スタジアムさえ余すことなく揺らしうる豪快なアンサンブルを手に入れながら、一方で全く褪せることなく疾走するエヴァーグリーンなメロディが素晴らしい。バックグラウンドに70sハードロックを感じさせる骨太なアンサンブルの上、ヘロっとした歌声が珠玉のメロディを迸らせる。そのスキルの高さはTr.2"Sunday Girl"の複雑にしてリズミカルな展開を見ても明らか。

個人的ベストトラックは、日本盤のボーナストラックとして収録されているTr.14"Confusion"。ハンドクラップと共に駆け抜けるメロにて秒殺、熱っついロッキン・フレーズで聴き手を高めるギターに悶絶、一瞬の泣き落としにハラリとさせられた直後には、再び溢れ出す珠玉のセンチメンタル・ウェーブに、一気に昂揚の沖へと引き去られる。完璧だ!素晴らしい!

トータルでの比類なき完成度という意味で、自分の中では1stが依然として揺ぎなく彼らのベストアルバムの座に君臨しているのだけれど、(メロディの良さは当然のこととして)今作は聴けば聴くほどに(一見ただのお馬鹿に見える)バンドの(隠れた)素養の高さが浮かび上がるような、何とも魅力的な一枚。そしてそんな深みに気づくまでもなく、一瞬にして心を鷲掴み離さない、ロックの快とポップの陽に満ち充ちた快作!オススメでございます。

http://www.myspace.com/silversunuk



back