SEVEN THAT SPELLS/The Men From Dystopia

★★★★☆

相変わらず尋常でないバイタリティでリリースを続けるクロアチアの天才/Niko Potknac率いるSTSの8thアルバム。エクスペリメンタルなクラウト・ロックあるいは天然色の爆音サイケを鳴らしてきたここ数作と比べると、本作では宇宙カラーとでも言うべく大深度のダークネスがググイと強まり、その濃密度のスペースから繰り出される触手の如き爆音因子にぐねぐねと翻弄される。クレジットを見やれば3ピース体制ながら、とてもそうとは思えん濃いぃサウンド。

まさかの徹底したワン・リフでラストまで押し切ってしまうオープナー"In"、かたや宇宙空間でハードロックと密教がメルトしたかのような"Aum"は17分間に及ぶ独創を鳴らし、続いてレーベルメイトでもあるNADJAを思わせる深淵へと誘うヘヴィ・アトモスフェア"Zero"へと雪崩れ込む。さらには「誰やねん!?」という突っ込み必至のデス声から幕開ける"Rock Ist Krieg"は、どこかネジの外れた感のする爆音マスロックを撒き散らし、その撒き散らされた断片を攪拌するかの如きラスト"Out"のオリエンタル・サイケデリアへと帰結する。

このバンド、爆音の煙り方がzOoOoOmのライブでのそれと同んなじでほんまに好きなの。たぶん自分が最も好きな音の形態。zOoOoOmが完全に音沙汰なしになってしまっている現在、とりあえずどんどんリリースしまくってボクの心を癒してほしいのね。

Black Om Rising

★★★★

ハイペースでリリースを続ける、クロアチアのインスト・バンドによる4th。Acid Mothers Templeから河端一/津山篤の両名が参加し、完全にぶっ飛んだサイケデリック絵巻を展開した前作とはまた全く別モノの音編成。Guitar/Bass/Drum/Sax・Keyの4者で上程されるのは、より即効性の高いグルーヴィ・スペース。

フリーキーに揺れる爆音Saxへ、クラウトロック寄りの硬いリフ/リズムを掛け合わせるオープニング"Fluxion"。Mogwaiの"Fear Satan"めいた旋律で掴み、ひしゃげたギターの爆音と共に狂騒が全体を呑んでいく展開は極めて速く、熱い。昂揚中枢へ的確な切り込みをかけるタイトなアンサンブル。スピーディな反復構成で小躍りしたくなるような熱量を溜め込みながら、一気に輝かしい爆音の狂喜へと飛び込んでいくサマに思わず笑みが浮かんじまう。

邪悪な音響/ビートの変拍子/中近東めいたsaxの怪気炎/ファズ、ディストーション、クリア・ディレイによる一斉解放/硬質なリフ/ポリリズム/メルトする空間/ジャズ/プログレ/マスロック/サイケデリックetcetcetc...

こんだけのファクターが目まぐるしく入れ替わって進行し、息つく間もなく展開する。拡散、収斂、爆発、捻転、暴力、情動、歓喜に狂喜と、インスト・ロックの醍醐味を超ナチュラルに叩きつける楽曲群は、ハッキリ言って物凄くハイレベル。個人的に好きなツボを押しまくられる、絶品ウマウマな好盤。

※今作は表面がCDで裏面がDVDというヘンテコな仕様になっており、DVDには06年12月のZagrebでのライブ模様が30分超収録されている。

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Cosmoerotic Dialogue With Lucifer

★★★★☆

Acid Mothers Templeの河端一(gt.)を迎えておっ広げられる、クロアチア発の爆音サイケデリック人力コスモ。うわっははは!なんじゃいこれは!凄すぎてシッコ漏れそう。「ウルトラ」や「メガ」で形容される事物にブツかると、その図抜けたデカさ故に畏怖を通り越して笑いの要素を感じるのだが、その意味で本作は完璧なるウルトラ・メガ。笑っちまうぐらいに巨大で喧しく華々しく振り切れ突き抜けておる。

過去最高のテンションで供される50分間の爆音パラダイス。のっけから2本のギターが弾き倒され、弾きずり倒されてノタウツ浄土。脳味噌を蕩かす濃密な混沌と、そのカオスを振り払う驚異的な上昇気流の爆裂アンサンブル。視界は歓喜に煙り、アタマは昂然としてぐっちゃぐちゃ。螺旋状をトップスピードで翔け巡るNiko/河端のギターが強烈に白光するオープナー"Cosmoerotic Giveaway"、The Men From Dystopiaの"U"を思わせる旋律から入り、阿鼻叫喚のクラッシュ・アンサンブルへとダイブする17分超の"Stara Planina (slight return)"、アチラの恍惚を撒き散らす高速旋回の根底で、ドスの効いたTvrtkoのベースがグルーヴする"Return Of The Captain Beefstake's Love Apparatus"で絶頂を誘い、さらにさらに、荒ぶるリズム/吹き荒ぶ轟音に煙る視界の彼方で野郎臭全開のヴォーカルが咆哮する"Space Of Eights"に至っては、ラストで噴出するフリーキーなSaxがもはやコチラの衝動を完全に解き放ち昇天。再び眩暈を誘う絢爛をブチ撒ける"Cookies & Milk/Breakfast With Azrael"の饗宴から、ラスト13分間の"Torture Vessel From The Triangle World"でめくるめく爆音の伽藍へとズッポリ嵌め込み、オワル。

ハイパー・アグレッシヴでウルトラ・メガに爆音な本作は、個人的にこれまで出た作中で最も好きだ。09年には異種スタイルのサイケデリック・アルバムを4枚出すつもりだとのことで、またどんなぶっ飛んだ奇態で魅せてくれるのか、ホントそれだけを楽しみに生きろ!と言われてもハイっ!と元気良くお答えしてしまいそうなぐらい楽しみだ。

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Future Retro Spasm

★★★★

クロアチア発/肉食系サイケデリック・ロケンロー。2010年リリースの6thアルバム。踊れるロックちゅうのはこーゆーのを言うんじゃい!ガハハハッ!!ってな哄笑が聞こえてきそうな天然色の爆音が、再び。

音の系統は4th"Black Om Rising"に近い。天空を舞い咲き焦がすフリーキーな爆音と、地を這うグルーヴィなポリリズム。ウルトラメガに花咲く大輪の爆音下に、超自然的に組み立てられるダンスなグルーヴが無上の快を喚起する。

鉛色を叩き込むリズム隊に、フリーキーなsax、Niko Potocnjakのメガロカオティックな爆音ギターが被さりブチ上げる。秘儀めいた妖しいフレーヴァーを匂わせながら熱狂してゆくオープナー"Olympos"、野獣的ポリリズムが爆裂のダンス・ミュージックを形作る"G"、高速旋回する4者の爆音が激突して火花を散らす"Terminus Est"、サイケデリックな陶酔が天空より降り注ぐ14分間の長尺トラック"The Abandoned World Of Automata"、アルバム中最もイカれた爆音がクラッシュする"Death Star Narcolepsy"は、しかし中盤でいきなりの強制停止(したり顔のNiko Potocnjakが目に浮かぶ)を見せつけ、狂熱のリフレインから快楽の無限淵へとダイブ、ラスト"Quetzalcoatl"でもやはり異常に攻撃的なポリリズムをツマミに、STS流のハイパー・サイケデリアを刻みつけてオワル。個人的には今回も『音の理想郷』とでも言えるサウンドなのだが、敢えていうなら前作・前々作と大きく次元が変わってない、という点で☆は4つにしておこう。とっくに別の地点へ行ってるだろうNikoのイマを追いかけるのに、現在の契約体制じゃ到底間に合わんのだろうね。

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Acid Taking And Sweet Love Making

★★★★

途切れぬテンションでリリースを続けるクロアチアの奇才/Niko Potocnjak率いるバンドの7作目。

新譜、とはいえレコーディング・タイムは2006年に遡る。で、"レッツ・ゴ〜トゥー・サ〜ン・フラーン・シスコ〜♪"ってなイロっぽい女声に導かれるオープニングを皮切りに、ダダ漏れのごとくあふれ出すは陽性ヴァイヴの光り輝くエレクトリック・チューン。猛烈な勢いで蛇行するベース・ラインが死ぬほどしんどそうではあるが、そんなリズム隊とくだんのコーラスを従えて、悠然と弾き放たれ駈け巡る電撃のギター・スラローム。天も地も始も終もお構いなさげのハイパー・アグレッシヴなエンドレス電撃譚ではあるが、どこまでも果てしなくぶっ飛んでいながらも、どこかカッチリとした芯を感じさせるグルーヴが毎度のことながら素晴らしく、最後までココロが離れない。

どっこにも文句ない音像ながら、先に書いたようにレコーディング時期はもうずいぶんと昔のハナシ。なのでもはやこのサウンドは過去のモノ、といった感はどーしてもしてしまう。願わくば今年こそ、新譜が3枚ほどリリースされるような、そんな年になりますように。さておき今作、Amazonでの取り扱いも始まったみたいだし、是非是非お手に取ってみてくださいな。

Myspace

Acid Taking And Sweet Love Making

★★★★

相変わらず尋常でないバイタリティでリリースを続けるクロアチアの天才/Niko Potknac率いるSTSの8thアルバム。エクスペリメンタルなクラウト・ロックあるいは天然色の爆音サイケを鳴らしてきたここ数作と比べると、本作では宇宙カラーとでも言うべく大深度のダークネスがググイと強まり、その濃密度のスペースから繰り出される触手の如き爆音因子にぐねぐねと翻弄される。クレジットを見やれば3ピース体制ながら、とてもそうとは思えん濃いぃサウンド。

まさかの徹底したワン・リフでラストまで押し切ってしまうオープナー"In"、かたや宇宙空間でハードロックと密教がメルトしたかのような"Aum"は17分間に及ぶ独創を鳴らし、続いてレーベルメイトでもあるNADJAを思わせる深淵へと誘うヘヴィ・アトモスフェア"Zero"へと雪崩れ込む。さらには「誰やねん!?」という突っ込み必至のデス声から幕開ける"Rock Ist Krieg"は、どこかネジの外れた感のする爆音マスロックを撒き散らし、その撒き散らされた断片を攪拌するかの如きラスト"Out"のオリエンタル・サイケデリアへと帰結する。

このバンド、爆音の煙り方がzOoOoOmのライブでのそれと同んなじでほんまに好きなの。たぶん自分が最も好きな音の形態。zOoOoOmが完全に音沙汰なしになってしまっている現在、とりあえずどんどんリリースしまくってボクの心を癒してほしいのね。

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Superautobahn

★★★★

クロアチア発極楽逝き/規格外の爆音サイケデリアを打ち鳴らすSTSのニューアルバム!!!と言いつつ録音されたのは何時なのか!?アルバムタイトルの如く、まさしく溢れ出すことアンストッパブルな天才Niko Potocnjakの前に、アルバムリリースがまったく追いついておりません。

今作は14min+21min+21minの長尺3トラックが並ぶエレクトリック曼荼羅仕様。AMTの河端氏がギターで参加しているのもあって、形態としては"U"に近いか。だけどもその頃には無かった煌びやかで、アッパーなリフ/リズムが前面に反復して踊っております。そのオープナー"The Wall"は、同じくAcid Mother Templeの津山さんを思わせる読経めいたヴォーカルと合唱し、尋常でない熱量を無尽蔵に放射する。そのイカれた反復模様はさながら新世紀型クラウトロック。

続く"The Pyramid"へ至ってはサイケデリックな曼荼羅っぷりがさらにぐねんぐねんとうねり出し、時間感覚も捻くれよとばかりにギターが雄たけび吹き荒れる。さらに"The Colossus"へ至ってはブラスセクションの咆哮までもが加わって、もはや構築なのか溶解/瓦解なのか不明になるほどのカオスで世界を満たす。リズム/フレーズの反復とイキモノのように自在に沸き立つ轟音ギターが空間を溶かし、眩い白光を思わせる密度で充満するサマが素敵に過ぎる。日本へはたぶん来年ぐらいに行くぜぇ!という全く信の置けないNikoの言葉にちょびっとだけ期待しつつ、次なる動向を楽しみに待ちたいと思います。

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