LIGHTS OUT ASIA/Garmonia

★★★★

Chris SchaferとMike Yastadの2人から成るユニット、Lights Out Asiaの1st。彼らはMogwaiのツアーサポートを行ったこともあるそうで、「Mogwai + Boards Of Canada」なんて形容で紹介されていたりもします。

シネマティックな旋律とエレクトロニカビートが織り成すアンビエントな音響空間の中に、果てしなくノスタルジックな「歌」がゆっくりと溶け込んでいく。そして時にそれらを全て包み込むかのように奏でられる、シューゲ譲りのギターのベール。ここでは"静寂美"という言葉が浮かんでくるような流麗なサウンドスケープが展開されています。

ディストーションギターが豪快に炸裂したりすることはなく、メロディーの起伏も緩やかである。しかしながらLOAの音楽には聴き手の感情を激しく揺さぶる「エモーショナル」な世界観がある。暗闇の中で、スピーカーから流れ出る音の波に身を委ねている時に覚える感傷的な気分は、言葉では上手く言い表せない。Boards Of Canadaが好きな人は一度聴いてみてください。

Tanks And Recognizers

★★★★

前作"Garmonia"が04年の愛聴盤にもなっていた、USウィスコンシン州のバンド/Lights Out Asiaの2nd。今作からMike Rushが正式メンバーとして加入し、3ピース体制となっている。サウンドの基本は前作と同じアンビエンス寄りのエレクトロニカ・ゲイザー。精緻さを増したパルス、一段と深みを増したエモーショナルな音像が、月下の大輪の如く咲き誇る。

Boards Of Canadaばりのエレクトロニカ、平熱のリズムが席捲するオープニングトラック"Roy"。ノスタルジックで、同時に旅情にも似た強いエキゾチズムが匂い立つサウンドはやはり特異。ウワモノだけのフワフワゲイザーズとは一線を画す濃密な気配に、部屋の空気が一瞬のうちに支配されていく。緩やかなブレイク・ビーツへ、オリエンタルな弦楽やチェロの旋律が絡み、クリアギターの音とともに郷愁の連鎖を描くTr.2"Ring Of Stars"、ヴァイオリンの弓により引き起こされる荘厳なギターの地鳴りを下敷きに、ダンサンブルなビート/壮麗なディストーション/ノイズが空間を蹂躙するTr.3"Four Square"など、前作からかなり深化した音像は相当に良い。

サンプリング・コラージュによる細やかな郷愁の掻き立てと、ここぞと言う場面でのエモーショナルな歌による介入が素晴らしい。星雲の彼方で絶えず明滅するエレクトロニカ/囁かれる微小なサンプリング・ヴォイスの反復により溜め込んだ昂揚を、ラストで一気に解放し拡散させるTr.5"March Against The Savages"では、最近のSigur Rosばりの多幸感でもって、一つのハイライトを描いている。

同様の手法で魅せるTr.7"Art Divided Science"を経過しながら、全9曲/47分に渡り、切れ目の無い美麗な昂揚で包み込む快作。ノイズの一つ一つまでが美しく響きます。残響から日本盤もリリースされたようで、もし来日など叶えば非常に嬉しいんだけど。

Eyes Like Brontide

★★★★☆

US/ミルウォーキーのエレクトロニカ・ゲイザーによる3rdアルバム。今時「MOGWAI + Boards Of Canada」というような形容にトキメク人がどれほど居るのかは不明ながら、そうした形容がなんとも似つかわしく、同時にその安直な形容からは推し量れないほどに素晴らしい音像を展開するのがこのLOA。過去のレビューを読んでもらえば分かるとおり、個人にはもうメロメロぞっこん。ただひたすらに素晴らしい。

旋律が感傷を掻き立てる
拡がる音像は旅情を刺激する
残響までもが美しいノイズ
組み込まれる微細な昂揚
高まる鼓動にシンクロするビート
その全てが完璧な世界を形作る

前作・前々作からの流れを汲んだ最新作。脳裏に描き出されていくその音響空間は、もはや文句の付けようの無い美を湛える。穿たれる各音はゆったりと交じり合い、極上のエモーショナルとして溢れ出す。静動のカタルシスではなく、アンビエントな揺らぎの昂揚ともまた違う。紡がれる一音一音が確実に意識を捉え、深い深い昂揚の澱みへと感覚を沈める。今作には10分超の楽曲も2曲含まれるが、その重層的でクリアな景色の渦中には、ただの一瞬も余剰を見出すことがない。あまりの調和の滑らかさに忘れがちだが、随所で射し込まれるChris Schaferのビロードのような美声は筆舌に尽くし難い昂揚を生み、またサンプリング・ヴォイスの扇情性も従来以上に高いラインを描いている。

これほどまでに心が安らぎ、同時に圧倒的な郷愁と昂揚を覚えるサウンドを、私は他にほとんど知らない。なぜここまで嵌るのかある意味不思議でもあるが、個人的には激賞に値するバンド、そして作品だと思う。

http://www.myspace.com/lightsoutasia