Julie Mittens/S.T

★★★☆

オランダのパワー・トリオによる新作。セルフ・リリースのライブ盤はじめ、これまでに数枚のリリースがある模様。ギター/ドラム/ベースがノイジーに、渾沌と激を交わしながらアブストラクトな音景を象っていく。ムハッ、かなりイイ!

リズム・フリーの爆音がウヮンワンと揺れ続けるオープニングトラックを聴いていると、すわ!リリース元Holy Mountain(La Otracina,Six Organs Of Admittance.etc)十八番の世界か!?と思うが、リズム部隊の侵攻で一気に世界が動き出す。

フィードバック・ノイズにマミレながら、超大な音圧をリリースするAart-Jan Schakenbosのギター・プレイ。ほぼ途切れることなく掻き毟られる空間は果てしなくラウド。その茫洋とした爆音に呑まれながら、jazz/時にfunkのリズムを弾き出すMichael van Damのベース・プレイ。これがキリリ鮮やかに空間を繋いでいる。リズム/ノン・リズムで叩き続けるLeo Fabriekのドラミングは、強く意識に飛び込んでは来ない形で、しかし確実にこちらの耳を捉え続ける。

当初からその"全景"に注意を払うバンドが多そうなこのジャンルにおいて、Julie Mittensの音からは非常に個別的な印象を受ける。即興が放つ緊張と熱量、それが上手くブツかり合った上に出現する抽象的な構造物は、ために非常な磁力を曝している。ちょっと格好良い言い方をするなら、「ただのノイズでしかなかったモノが"音楽"へと成り上がる瞬間」みたいなものが作中何度か味わえる。インスタントなリスニングには不向きだが、個人的にかなり気に入った作品。

http://www.myspace.com/juliemittens