FLIES ARE SPIES FROM HELL/Red Eyes Unravelling

★★★★☆

劇作じみた轟音とリリカルなピアノの旋律が渦を巻くポストロック。英チチェスターの5人組による09年末リリースのデビュー・フル。静動のコントラストではなく、渦巻く音の濁流で魅せる轟音百景。ストーリー性も孕んだ轟音の移り変わりを背景に、印象的なピアノ・フレーズが次々と散りばめられては展開する。情操楽器としての威力を存分に見せ付けるこの鍵盤の旋律が、そこはかとなくダークで、脆く、胸を抉り取るように破滅的な感傷を孕んだ音世界へ聴き手を容易くリンクさせ、巻き込んでいく。GY!BEの世界観をさらに等身大に落とし込んだような"King Sly"、暗鬱なワルツを奏でるフレーズ/リズムが東欧のバンドめいた漆黒の影を描く"Mountain Language"は先行した07年のEP収録のナンバー。電撃の暴風雨が吹き荒れる"Wallow in Threat"は、しかしその中を駆け巡る重厚なピアノの旋律こそがなんとも劇的で痺れる。ループする音の浮遊感と、宙空を走る轟音の撃墜感覚が双璧を成す"Welcome Wolves"も凄く良い。

全7曲、どれも極めて完成度の高い楽曲がズラリ居並んでいるが、ベストトラックは"Glass Light Shatters"。ノスタルジックな立ち上がりから力強く息吹く中盤へ、やがて感極まった鳴き声をあげるギターに導かれて素晴らしくエモーショナルな重奏が出現していくサマに撃ち抜かれます。作品の私的な感情/世界観へリンクする感覚は、Maybeshewillのソレとも似てるかも。これはかなり良い作品!

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