遅ればせながらBloc Partyの1stをレビュー。以前ライブで目の当たりにした際にも強く感じたが、なんといってもリズム隊の躍動感が素晴らしい。際立っている。
オープニングトラック"Like Eating Glass"、活き活きとしたドラムビートが転回し、硬質なギターが鋭角に突き刺さる。そしてフロントマン、ケリー・オケレケのこの声！つんのめるように吐き出される彼の声が、バンドが放つ圧倒的なグルーヴを完成型へと誘う。
Bloc Partyが弾き出すサウンドは、攻撃的かつ非常にクール、知的に響く。なんだか微笑ましくなるぐらいに若々しい活力に満ちたマットのドラミングと、抜群にメロディアスなフレーズがこのクールネスと絶妙に絡み合い、冷えたグルーヴともいうべき素晴らしい昂揚空間を生み出している。
序盤からダイレクトに感覚中枢を刺激、昂ぶらせ、昂ぶらせ、そして落とす。「So
Fucking Useless!?」のシャウトが飛び出す鳥肌ものの展開を見せるTr.3"Positive
Tension"でも顕著だが、リスナーの精神を一気に解放した直後、驚くほどあっさりと終わる展開が多く見られるのもこのアルバムの特徴か。アルバム終盤にかけて放出される熱量はどんどん増幅。高速のリズム隊が整然と暴れるTr.12"Luno"を聴いて興奮しない人はそうそういないだろう。初来日の際には、ここまで大騒ぎされる存在になるとは思いもしなかったけれど、それに十分値するだけのものを持った非常に良いバンドだと思う。
2ndアルバム。あちこちで言われるように、その音像は大きな変化を遂げている。それでいてそのサウンドは"紛れもなくBloc
Party"なロックンロール。デビュー盤にて強烈な印象を放っていた、転がり尖り突き刺さる剥き出しの音塊の「ロール」は、今作にて大地を捲くり上げエグリ呑み込まんとする強靭な波動の「ロール」へと変じ、立ち現れる。
原音に数多の武装を纏って鳴り渡るインストゥルメンタルが、飛ばされ激突し絡み合いながら大きな景色を描いていく。前作においてもただザクザクと刻む荒々しい衝動の快だけでなく、美麗な音の拡散をもって拡がりのある昂揚を描き出していた彼らだが、今作では展開/転回する音の全てから、限りなく緻密な計算と意識が感じられる。結果、その衝動は倍加されよりダイレクトに、その昂揚は極めて厚みのある、それでいて徹底して澄み切ったものとなって満ち充ちている。
個人的なベストトラックはTr.6"Where Is Home"
ブゥンと唸るノイズに乗せて、讃美歌の如きオケレケの声が立ち上がる。デジタルな質感のトリッキーなビートの転回を下敷きに、左右を飛び交い錯綜する歪んだ爆音。ツイストするギターにより穿たれた亀裂から、怒涛の如く溢れ爆発的に旋回し突き刺さり耳を裂く予測不能な音の衝撃が、凄まじい昂揚を殴り描いていく。これがライブで完璧に再現されたなら、フロアを凄まじい恍惚が埋めるであろう素晴らしいナンバー。
唯一ケチをつけるならば、相当に中身の詰まった作品なだけに最後の2曲には余剰を感じる。蒼い旋律を流麗に奏でるギターリフが心地良い、Tr.9"I
Still Remember"あたりでサラリと〆るぐらいで個人的には丁度いい。こんなことを言えるのも、どの楽曲も本当に隙が無く高いクオリティを持っているからなのだけど。知的に独創的で刺激的。鮮烈なデビュー盤に続く、これ以上ないまでに素晴らしい2ndアルバム。
デジタル先行で不意打ちリリースされた3rdアルバム。数多付帯音で武装した、熱くクールなアンサンブルを叩きつける仕様は前作よりその度合いを増し、より即効的でアグレッシヴな展開が強く耳につく。
警報のように鳴り渡るギター音と跳ねるリズム、ファンキーとも取れるオケレケの声が錯綜する"Ares"で着火、完全に楽器然としたVo.が複雑に重なり飛び交う"Mercury"は、極圧のビートと怪しいブラスが背後で激突するこれまたアッパーな内容。初期のストレートな迎撃アンサンブルを思わせるのは唯一"Halo"ぐらいで、あとはほぼ全ての楽曲に何らかの過激なエフェクトが埋め込まれている。
滑らかに疾走するリズム隊に、ヒールで突き刺すようなギター・リフが踊る"Trojan
Horse"や"One Month Off"のような瞬発的な楽曲もあれば、片やメランコリーな旋律と歌唱で緩やかに燃やす"Biko"のような楽曲もある。この辺、悪くはないが過去の遺産を装飾しただけという感じも否めない。一方で先の"Mercury"しかり、オケレケ他の「声」が効果的に足し重ねられ、どこか終末的な予感のするダークな熱を放つ"Zepherus"あたりは、新しい側面を見せつつその昂揚度も高くて素晴らしい。黒々とした衝動を存分に解放する"Better
Than Heaven"も同様。
気になったのは、今回そうして惹かれた楽曲の多くにおいて（ライブで再現出来んのでは？というレベルを超えて）既にバンドとして演る意味が無く聴こえたところ。バンドの本意なんて当然不明ながら、ちょっと急ぎ過ぎてるような感じはする。
http://www.myspace.com/blocparty