BARDO POND/Batholith

★★★★

Philadelphiaのサイケデリック巨頭による新作。John Peel Sessions等を含む、過去に録音されながらこれまでリリースを見なかった楽曲をコンパイルしている。とは言えそうした作品の性質にも関わらず、全体の質感は非常に統一されており申し分ない。個人的には今作で初めてバンドの音に触れた。

ドラッギィだ、との評から漠然と想像していた粗く暴力的な側面はほとんど感じない。フィードバック・ノイズ/ディストーションの奔流がもたらす心地良い酩酊感。微睡みにも似た物憂い重みで脳を痺れさせるセッションは、ストーナーともシュゲーイザーとも異なる例え様のない昂揚の波を繰り返し重ねていく。

即効的ではないが、終わりへと至る道程は絶えず強烈な磁場に満ちている。さながら春の陽だまりめいた、狂気と紙一重の物憂い心地良さが確実に中枢を侵し、殺していく。緩やかに昇り詰める土臭いアンサンブル、控えめな神聖を感じさせるIsobel ollenbergerの素朴な歌声、狂ったチューンで放蕩を繰り返すノイズ・ギターが一体と成り紡ぐ白熱のサイケデリアは、GALAXIE 500直系の朧な景色をイメージさせる。

存分に酔い痴れた頭に鳴り響くラストトラック"SSH"での轟音に、ここまで焦らされていた自身に気づく感覚がなんとも鮮烈。ギャーとかウォーッとかいった楽曲とは間逆から来る絞め殺しの昂揚が、ちょっと久しぶりで新鮮だった。引き出しも多そうなバンドなので、また他の作品にも手を出してみたい。

http://www.myspace.com/bardopond