ALL THE SAINTS/Fire On Corridor X

★★★☆

A Place To Bury Strangersに引き続きKiller Pimpが送り出す、ジョージア州の3人組によるデビュー盤。グランジィな爆音リフを霞がかったリヴァーヴ空間が包み込む、艶かしく歪んだダーク・メランコリー。シューゲイズ+グランジを実行する現代型のサウンドながら、全体としては80sテイストの怪しい気配も匂わせる。
ライブハウスから洩れ出す轟音めいた、昂ぶりを予感させる粗い音像の小インストからTr.2"Sheffield"へ。大きく波打ち、叩きつけられるギター/リズムの咆哮と、リリカルな歌の揺れ。叙情をかき鳴らすアンサンブルを断ち切るように不協和音めいたギター・リフが踊るTr.3"Farmacia "は、Echo&The Bunnyemenを思わせる毒っ気が印象的。

シューゲ+グランジと書いたが、影を纏った激しいギター・ロック群には最初期のRadioheadを思わせる手触りも。音の陰影やメロディの叙情性からは、英国産のバンドのそれを強く感じる。一方で、BRMCばりの漆黒を表出させるTr.10"Mil Mil"のような楽曲でラストを飾るあたり、懐の深さもチラリ覗かせる。

J&MC系譜の退廃的な爆音を一挙解放させる終盤の展開含め、非常にバランスの取れたデビュー盤。先のAPTBSと比べると初聴時のインパクトは劣るけど、勢いまかせでなく世界観を伴った音像にて轟音を鳴らせる実力を持った良いバンドだと思う。

http://www.myspace.com/allthesaints