ADORABLE/Footnotes 92-94

★★★★

当時最強の王国とも言えるCreationに所属し、92年から95年の活動期に2枚のアルバムと6枚のシングルをリリースした、英国コヴェントリーの4人組/Adorableのベスト盤。

マンチェスター・ムーヴメントとブリットポップ、その狭間に咲いた短命のアンサンブル。OASISのデビューの影に埋没するように消えていったバンドではあるけれど、当時特有の空気を纏ったサウンドが熾す独特の昂ぶりは、今なお褪せずに響いてくる。

冒頭、デビュー・シングルのタイトルトラック"Sunshine Smile"が流れ出す。上層からキラめき落つ単音のギター・フレーズ。グルーヴが野太くうねり、リズムが燦然と走り出す。力強く歪んだギター/ノイズの奔流が、絶対的な充足の波と鳴り辺りを覆い、Pete Fijalkowskiの投げ遣りを装った声が繰り返し振れていく。

まるで終わりの見えている夢に漂うような、幸福な酩酊と痛いまでの感傷がせめぎ合う空間。残響する端音までもがナーバスに、過剰な自意識を誘うように鳴り響く。天上の華を掴み取らんとする野望と、なお変わらぬ日常を見やるような憂いの揺らぎ。

「ただの格好つけ」だと言われたり、果てはCREATIONから無かったかのように扱われるなど、かなり酷い仕打ちを喰らっているバンドだが、House Of LoveでもBoo RadleysでもそしてOasisでもないサウンドは、彼らなりの個性を持って確実に響いている。もしかするとそれは、何処にも咲き誇ること適わなかったバンドの影を照射した、現在ならではの視点かもしれないが。アルバムたった2枚のバンドなので、それぞれを買って聴くほうが良いという声もあろうが、それがし難い現況においては(アルバム未収のトラックも含めて)とても有用なベスト盤。

http://www.myspace.com/favouritefallenidol