THE MARS VOLTA@ZEPP 大阪

寒い、高い、遠い、しかも雨
という(個人的)四重苦を乗り越えて、Mars Voltaジャパンツアーの初日を飾るZepp大阪へ。開演ギリギリなんとか到着。当日券で中へ。

個人的には03年のサマソニ以来となる彼らのライブ。フルステージで観るのは今回が初めて。PA卓前で待つことしばし、予定を少し押して18時20分、全ての照明が落とされた会場に、モリコーネの大仰たる西部劇ナンバーが高らかに鳴り渡る。大歓声の中現れたアフロを始めとする8人のメンバーと、後景に引き上げられたサイケデリックな緞帳が昂奮を煽りまくる。

1発目は新曲"Rapid Fire Tollbooth"
真っ黒な極太のリフとバスドラが文字通り"叩きこまれる"、なんとも荒々しいヘヴィ・チューンにタマゲル。獰猛な黒い音塊に、金属質なセドリックのシャウトが突き刺さるその様は、テクニック云々以前に何とも原初的な衝動に満ちた激しさを感じさせる。15分超に及ぶ展開から、続けざまに次なるジャムへと移行。瞬間、ステージから飛び降りるセド。前のほうでナンかやってるぞ!?と思ったら、オーディエンスの歓喜の波が怒涛の勢いで後方へ移動。横を見るとそこにはセドリック。ビニ傘を振り回して突入してきたセドを囲み、周囲は一瞬にして狂騒状態に。大盛り上がりのオーディエンスを前に、ステージ上では凄まじいセッション。

音を拡散させ、刻み、叩き落すオマーのギタープレイに悶絶。ジョン・セオドアの脱退に従って、今ツアーに新ドラマーとして加入しているDeantoni Parksの手捌きは、セオドアのしなやかに弾け飛ぶ肉塊とはまた違い、抜き身の刀を思わせるような、なんとも生々しい鋼の質感。オマーのリードに従っての掛け合いで場を切り刻むその様が、非常にスリリングで昂奮。全く先が読めないセッションだが、ベースラインに身体を乗せて踊りまくると、気持ちのよいことこの上なし。最高。

以前観た時とは、各パートの安定感がまるで違う。フリーキーでありながらも、一定の枠内で繰り広げられる怒涛のセッションは、相乗効果として凄まじい昂揚感でステージを埋めていく。

鍵盤上で踊るようにキーボードを奏でるアイキーが好きだ。バンドの屋台骨を担うと見せかけて、実は築き上げられたリフの牙城に立て篭もるようなホアンのベースが素晴らしい。時として完全に場を染め上げてしまうエイドリアンのサクソフォンが熱い。そして、怒涛の変態と化して扇情的なギターをかき鳴らすオマー、そのアフロと求愛のダンスを踊るかの様相で情熱的に絡み合うセドリックの放つ凄み。

ステージは8人が織り成す濃厚な音の濁流による圧殺感と、飛び道具的に使われるエフェクトがけたギターを軸に据えた解放の瞬間を、巧みな入れ子構造にして展開。緊張と拡散、官能的な揺らぎと暴力的な縦の律動が、非常に高い次元で次々と繰り出されていく。

開始から1時間を経過したところで、ノレずに置いていかれて寝た子も起こす"Viscera Eyes"へ突入。アルバムに忠実な展開ながら、内部で行われる各動体の自由度は段違いに高い。アルバムで気になった、楽曲の周りに在る額縁のような枠組みを良い意味ではみ出していくような、その完璧に構築された熱情の美学に酔い痴れる。ラストは"Day Of The Baphomets"。新譜中でも最も分かり易い沸点を持つこのナンバーで、本日一番の大盛り上がり。後半のマルセルのボンゴの速射は、ちょっと中々ないぐらいに昂奮した。まさしく怒涛の1時間半、アンコール無しで本日終了。4重苦を乗り越えて来たかいがあった、素晴らしいライブでした。

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