THE ZUTONS/Who Killed The Zutons

★★★☆

リヴァプールからまたまた飛び出してきた変り種バンド、Zutonsのデビューアルバム。Coralのレーベルメイトと言うこともあり、どうしても引き合いに出されてしまうが、小さな部分で共通点を感じることはあっても、大きく見るとZutonsはCoralとはまた違った独自のサウンドを持っているように思う。

初っ端なから登場する、サイケデリックな酔狂ギターサウンドと場末のパブを思わせるサックスが印象的な"Zutons Fever"、めちゃくちゃ怪しいコーラスと軽やかなパーカッションからデヴィッドの突沸するシャウトと共に怒涛のグルーヴを見せる"Pressure Point"、そして、「これぞZutonsの持ち味!」と思わせるファンキーでソウルフル(しかし詞はダーク)な楽曲が素晴らしい"You Will You Want"、と冒頭3曲で完全に彼らの世界に引き込まれる。アルバムはその後、美しいコーラスとカントリー要素の強いアコースティックナンバー"Confusion"、同じくアコースティックながらもこちらはアップテンポでスリリングな"Havana Gang Brawl"を経て、独特の詩世界を含めたズートンズワールドを展開していく。

ソウル/ファンク/ブルースにエレクトロニカ、カントリーポップ等々、かなり色んな所から色んなものを吸収しているが、Coralのようにそれが1曲の中にごった煮的に混ざり合わさっている感じではなく、各曲ごとにそれらの各要素が独立して現れているように感じた。その分どの曲にもストレートなカッコよさがあり、時折瞬間沸騰的に熱くなるボーカルもまた良い。LIVEもかなり盛り上がりそう。

Tired Of hanging Around

★★★★

 現UKロックシーンにおいて、なかなかに特異な立ち位置を取るリヴァプールの5人組、ズートンズの2ndアルバム。「ライブでの"熱"をハッキリ感じ取れるような作品にする」という声に違わず、そのファンキーでブルージーでジャジーな酔狂サウンドは、しかし普遍的なロックンロールのダイナミズムを内包し、微塵のブレも感じさせぬ骨太さを持って鳴り響いている。

 ストレンジなコーラスが現出し、狂ったサクソフォンは踊り咲き、果ては突如として空間を席捲するエレクトロニカが溢れ出す、、、といった前作での不意打ち的な仕掛けは皆無。ここで鳴らされる音塊は、極めて熱く/厚く/ソウルフルでストレートなロックンロール。抜群のメロディと、タイトに引き締められた音のグルーヴ。全ての音が過不足なく組み合わされて溢れ出す様は、まさしくライブでの強烈なパッションを閉じ込めることに成功している。そして何と言ってもvo.デヴィッド・マッケイブのこの声。なんたる強きエモーション!と思わせる彼の声が、作品全体をグイグイグイと牽引していく。温かな闇の中で明滅するキーボードに乗せ、ソウルフルな彼の声が響き渡るTr.4"Someone Watching Over Me"は、かの素晴らしきバンドToploaderを彷彿とさせる珠玉のナンバー。

 普遍的という言葉は、時としてネガティヴな事象を指すフレーズとして捉えられることもある。が、こと彼らのこの作品に対しては断じて否。その特異なサウンドに肉を付け、大勢を熱狂させるスタンダードにまで押し上げてしまう力量を手に入れた、途轍もなく「普遍的」で素晴らしい作品だ。

http://www.myspace.com/thezutons