ロンドンで結成された4人組、The VeilsのデビューアルバムはROUGH TRADEからのリリース。
少し気が早いかもしれないけれど、思わずこれだけの評価を付けてしまいたくなった
新人バンドのアルバムは本当に久しぶり。
さらりと吹き抜ける春風のような、穏やかな光と共に郷愁にも似た感慨を思い起こさせるアコギの音色と、
背後で密やかながら絶妙に自己主張している流麗なギターワークやストリングスが印象的なTr.1、
さらに厚みを増したサウンドと畳み掛けるようなメロディーに引き込まれるTr.2とfolk-popの要素を感じさせるTr.5､
そしてゆったりと美しい旋律を描くピアノストリングスとともに昇華していくTr.8、
これら4曲は元SuedeのギタリストBernard Butlerがプロデュースを担当している。
他にもゆっくりと燃え尽きていくような 叙情的なメロディーが素晴らしいTr.3"Lavinia"や、一転してへヴィーなリフと重厚なドラムサウンドを轟かせるTr.4"More
Heat Than Light"等 様々な表情を見せるアルバムであるが、なんといっても特筆すべきはボーカリストFinn
Andrewsの声。 Strokesのジュリアンにも似た朴訥だが聴き手の胸を掻き毟る焦燥感に満ちた低い声から、
少し鼻にかかった独特の色気を放つ高域まで、感情の振れ幅を見事に表現する彼の声の存在感は凄い。
よく聴くとバラエティーに富んだアルバムに、大きなまとまりを与えているのはこの声によるところが大きいと思う。
サウンド的には王道ともいえる英国ロックだが(ただしTravisやHavenともまた違う。西海岸の穏やかな日差しを連想させる音の響きがThrillsを思い起こさせる瞬間もあれば、Longpigsに通じる不安定さを感じる部分もある)、
気品さえ漂う純粋で力強い音が物凄く新鮮に響きました。お薦めです。
XTCのBarry Andrewsを父に持つ、、、
といった形容は既にして不要か。23歳の若き天才/Finn
Andrewsをフロントマンに据えるUKのブライテスト・ホープ、The
Veilsの2ndアルバムは、こちらの期待を遥かに凌駕する素晴らしいものになっている。
03年の1stアルバムリリース後、Finnを除く全てのメンバーが脱退。ソロとなった彼を見て、今後はその類稀なソングライティング能力と天賦の声により、若くして渋い立ち位置を占めるシンガーソングライター畑に行ってしまうのだろうと思っていた。
ならなかった。
新たなメンバーにて蘇生したThe
Veilsの今作には、烈しくも脆く、劇的に美しい音が濃密な渦を成している。迸る情熱と英国特有のロマンチシズムを継承したその音は、近年稀に見るUKロックの快作。引き締まったグルーヴの螺旋上へ、妖しく薫り立つ情感が絡み付く楽曲群は、メロディ/組成/展開のどれをとっても非常に高いクオリティを持っている。
"Not
Yet"
激しい振れ幅を見せるバンド・アンサンブルと、ジェントルに咲き乱れる鍵盤の音色が完璧に溶融し、その昂揚の臨界点を無限に塗り替えながら強烈な音を叩きつける。ザラついたバーストで最奥を抉り取るFinnの声は、既にして神懸っている。
"Jesus
For The
Jagular"
深層の泥沼を這い回るFinnの苛烈な歌声に、妖しく明滅する鍵盤が踊る。幽鬼じみたゴチックなコーラスの城壁へ、吹き荒れるノイズが蔦と成り絡みつく。
"Pan"
エリオット・スミスを思わせる、強烈な情動を孕んだ重いピアノ・ラインが輪舞。神の慈悲を希う聖なる静謐の瞬間と、奈落の喚きを思わせる重厚なアンサンブルが交互に立ち現れ、やがて破壊的なシャウトと共に劇的な暴圧の終焉へと向かう。
"Nux
Vomica"
月下を行進する冷たいドラムラインの昂ぶりへ、鋼の質感を剥き出しにしたギターの殺意が振り下ろされる。狂おしく鳴り渡るキーボードの絶頂と、のたうつヴォーカルの色香に酔い痴れる劇的ナンバー。
様々な表情を見せる楽曲群を、見事な統一感で纏め上げるのはやはり、Finnの声。美しい獣の呻きを思わせる、凄みのある低域を伴って歌い上げる彼の声は、ちょっと筆舌に尽くし難いまでに素晴らしい。フラジャイルな質感を纏った激情迸る、神聖にして不遜なまでに美しいこの音の感触は、あの不遇の天才在したバンド・Longpigsを思わせる。
密閉空間のロマンティック
閉じられた世界のラプソディー
禁忌的なエロティシズムを背後に孕んだ旋律が
繊細華麗に劇的に鳴り響く
Nux
Vomica [ヌックス-フォミカ]
マチン科の有毒植物
別名『嘔吐を催す木の実』
噎せ返るような情感が充満する傑作
http://www.myspace.com/theveils