...AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD/ST

★★★★

今ではすっかり有名になったTODの記念すべきデビューアルバム。地鳴りのような音とともに始まるこのアルバムで、すでに現在の音の基本形がしっかりと完成していることが分かる。3分前後の曲が多い中、7分近くに及ぶTr.5のGargoyle WaitingからTr.7にかけての、これでもか、これでもか!!!とこちらに全てを叩きつけるように暴発するサウンドは凄まじいの一言。録音状態は良くないが、それがまたカオティックな雰囲気を生み出している。

Madonna

★★★★☆

TODを知るきっかけとなった作品であり、彼らを一躍有名にした2nd。冒頭のMistakes&Regretsから、狂気のノイズとエモーショナルなメロディーが完璧に一体となり、混沌とした空気と共に何度も何度も繰り返し打ち寄せてくる。特筆すべきはドラム。絶えず劇的な変化を生み出し続ける作品中において、休むことなく多彩なリズムを刻み続ける手数の多さは圧巻。そして作品中唯一、大々的に美しいストリングスが導入されるTr.10からなだれ込むのは、間違いなくこのアルバムのハイライトであろうA Perfect Teenfood。エネルギーの塊のようなアルバム中においても最も激しく、聴き手の全てを鷲掴みにするような怒涛の演奏を見せている。

呪術的で混沌とした空気と強烈なノイズギター、それが信じられないぐらいに美しいメロディーを伴い、静と動の完璧なバランスの上に構築された、とんでもないアルバム。まさに唯一無比の存在感を放っている。

Source Tags & Codes

★★★★

彼らの3rdにして、これまでの集大成とも言えるアルバム。今作においても、激しいギターのフィードバックノイズが吹き荒れているが、前作までの怪しく魅惑的な雰囲気は少し身を潜め、変わりに大きく導入されたストリングスが、よりメロディアスになったメロディーと一体となり、「壮大」といった言葉がぴったりとくるようなドラマテックなサウンドを展開している。

一般にエモーショナルな音と聞くと、ともすればむさ苦しい感じを想像してしまうが、彼らの歌はリスナーの感情をかきむしるような熱さを叩きつけながらも、決して押し付けがましくなく、例えていうならば大気が満ちるように大きな塊となって空気を一変させ、聴き手を包み込む。4人のメンバーが共に古代マヤ文明の研究にも関心を持っているということも、この大きな潮流を感じさせる曲調に反映されているのかもしれない。

Worlds Apart

★★★★

 4thアルバム。一言で言うならば、「激的」から「劇的」へ。アルバム中で鳴り渡る楽曲はどれも、非常にドラマチックな響きを伴いながら展開されている。

 冒頭、いきなり映画のクライマックスシーンを思わせる過剰なオーケストレーションとコーラスが登場し、"Will You Smile Again"の激しく打ち鳴らされるドラムの嵐へと雪崩れ込む。ヒリヒリと空気を焦がす激情を、文字通り叩きつけるようにリスナーに提示していた初期のスタイルと比べると、今作ではそのエモーションをストリングスや美麗なメロディーが包み込んでいるようにも感じられる。メロディーのアクセシビリティーはこれまでの作品中最も高く、どこぞのメロコアバンドかと思うようなイントロが飛び出すタイトルトラックや、美しいギターフレーズを空中に散布し、その中をボーカルが悠々と泳ぎ回る"Let It Dive"(某所でオアシスの新曲だと紹介されていたり)など、今まで有り得なかった陽性のヴァイブを感じる瞬間が多々存在する。

 とはいえ、ここで鳴らされる音が放つ空気はやはりTrail Of Dead以外の何物でもなく、随所でかき鳴らされるギターの暴力性は全く衰えることを知らない。Tr.7"Caterwaul"を始めとして、同一のフレーズを幾度となくリフレインし、意識を昂揚へと導く手法が随所で見られることも、今作の特徴といえる。多分に賛否が分かれそうな作品だが、私はかなり良いと思いました。

※ちなみに最近、オリジナルメンバーのNeilがバンドから脱退したそう。バンドは新たに2名の新メンバーを加え、ツインドラム体制で演ってるとか。

So Divided

★★★☆

オリジナルメンバーであったNeilが脱退、代わってDoni(Drums)とDany(Bass)が加入することで5人組(時にツインドラム体制)となった新生TODによる5th。これまで同様、昂まるインストナンバーで幕を開ける今作は、混沌を振り払うかのようにドラマチックな音絵巻を敷き詰めてみせた前作を踏襲するようなアルバムになっている。

ミドルテンポで刻まれるギターリフ/マーチングドラムの拍動に、華々しい金管楽器が絡みつけられ、さながらビッグバンド風のグルーヴを放つ"Naked Sun"、くっきりとした輪郭のドラム・ラインに、模糊として不穏なピアノの旋律やシンセの膜を被せる"Life"など、一聴して「これまでに無いような」肌触りの表層をもった楽曲がいくつも見られる。全編に渡って共通しているのは、前作以上にそのキャッチーなメロディが前面に押し出され、メジャーな質感のエモーションが強く匂ってくるところか。

激しくかき鳴らされるギターの暴力と、そのノイズの緞帳の向こう側でピュアな激情を叫んでいた最初期のスタイルは、もはやここにおいてはほとんど跡形も無い。世界の巨大な悪意に対して単身殴りかかっていくような、焦燥に満ちてどこか絶望的でもあるそのパッションは変わらずサウンドの根底に燻っているのだけれど、メンバーチェンジを経てこの短期間でリリースされたことの意義が、ここで鳴らされる音からはほとんど感じられない、というのが正直な感想。敷き詰められたオーケストレーションが、前作のように彼らの音のユニークさを際立たせる方向ではなく、没個性化のベクトルでもって響いているように聴こえるのも、少し残念。グッド・メロディをノイズの夾雑に乗せてブチかますような、そんなサウンドはもう聴けないのだろうか。笑ってしまうほどに突き抜けている終曲"Sunken Dream"に一縷の希望が見えるような見えぬような。

http://myspace.com/trailofdead

Festival Thyme

★★★★

コレって続く新作は、ひょっとするとひょっとするかもよ!?と思わされた先行EP。楽曲様式としては過去2作の流れを汲んだ、メロディアスでドラマティックな轟音。ながら、ともすれば虚仮脅し的だった前作での作為感が綺麗に消え去り、ほとんど余裕とも言える大スケールで悠然と鳴り響く轟音が強烈な昂揚を生んでいる。

美しいピアノ・ラインで撃ち、劇的なストリングスで砕くオープニングはその名も"Bells Of Creation"なる大仰ナンバー。オアシス顔負けのアンセミックな一品ながら、この否定しようの無い昂揚感は何!?旋風のように吹き荒れるインストゥルメンテーンを中敷に、猛烈な歓喜感動衝動を巻き起こすサマが圧巻。続く"Inland Sea"も全くの同スタイルで、リリカルな鍵盤が描く透明感/折り重なる数多器楽が靄成すファンタジックな轟音が溶け合って爆発する。メロディが良い/歌が良いなんて誉め言葉は久しく使ってなかったが、Tr.3"Festival Thyme"でのパーカッシヴに乱舞する器楽に乗る、歌/メロの昂揚感には抵抗不可。もれなく持ってイカれちゃう。ラストチューン"The Betrayal Of Roger Casement And The Irish Brigade"は、一転して黒々としたカオスを敷き述べるプログレッシヴなインスト・ナンバー。もうね、なんも言うことありません。4曲で完結するEPだからうまく纏め切れてる、という面はあるにせよ、新譜への期待が爆発的に高まった素晴らしい一枚でありました。

The Century Of Self

★★★★

2年4ヶ月ぶりとなる6th。その「終わり」を信じた前作のダメっぷりから一転、コレはかなり良い!と、予想を覆す好内容に驚きそして喜んだ。先行EPからその予感はあったのだが、今作ではバンドが持つ天賦のメロディセンスに、既に爛熟すら感じさせる劇性が至極ナチュラルにハマっている。ベーシスト/Neil Buschの脱退後に加入した新メンバー2人は既にバンドを去っており、今作ではまた別の3者を加えた6人編成。一種の惨めさすら感じた前作とは対照的に、今作で鳴らされる音には、語らずとも溢れる巨大な自信が漲って聴こえる。

背後に悠久の「史観」を匂わせるドラマティックなインストから入る趣向は不動。その「大仰」にこそ「美学」を感じさせる開幕曲"Giant's Causeway"(先行E.Pでは長尺バージョンの"The Betrayal Of Roger Casement And The Irish Brigade"として収録)は、流れるままに華々しいアンサンブルが炸裂する"Far Pavilions"へと突入。相当数のインストゥルメンタルをパーカッシヴに打ち鳴らす演陣に、青臭くエモーショナルなヴォーカルが抜群に映えて一挙に盛り立てる。壮大なユニゾン/コーラスもふんだんに「プログレッシヴ」な螺鈿細工を施した楽曲はかなりゴージャス。にも関わらず、そこに不自然な重みは皆無。Interscopeを離れ、再びインディペンデントな立ち居地に戻った上で「不要なダビング工程を廃した」という生の勢いが、この開放的なヌケの良さに繋がってるのかもしれん。

暗いポルカ調にも聴こえる序盤から、分厚いグルーヴの合算へと転調するTr.3"Isis Unveiled"にしても、その複雑な厚みの中で変化する「メロディ」こそが最高の旨味。ピアノを始め、ストリングス群がアザといまでの煽情で巻き上げるTr.5"Bells Of Creation"では「オアシスかよ!」ってなツッコミも聞こえてきそうだが、Tr.6から連なる中後半のナンバーは、それこそ90s優良期のUKギター・ロック史にも近接する昂揚をブチかまして聴こえる。個人的なハイライト・トラック"Fields Of Coal"にしてもそうだが、此処には呪術的なグルーヴ/ノイズを暴発させていた最初期のスタイルは跡形も無い。それでいて、それとはまた全く別の方角から「やたらと喧しく、頭デッカチで垢抜けないが、妙に心を動かす熱さでもって踊りかかってくるような」初期寄りのカタルシスが復活して聴こえたところに、意外な驚きと喜びを覚えた。バンドを以前から知る人もそうでない人にも、今作はオススメしたいです。

Tao Of The Dead

★★★★☆

新作に対する昂揚感、だけでなく、次は一体どう出てくるのかわからない、そんなワクワクするような期待が入り混じるバンドってそう多くないんだが、このTRAIL OF DEADはそんな数少ないバンドの一つ。個人的にはまさしく「起死回生」の一撃だと感じた前作"The Century Of Self"からちょうど2年、特に大きなアナウンスもなく届けられた2011年発の7thアルバム。プロデューサーにはかつてバンドのデビュー盤を手掛けたChris"Frenchie"Smithと、YYY'sや!!!なんかも手掛ける売れっ子Chris Coadyが就任。バンド自体は再び4人編成となっている。

結論から言うと、コイツは前作以上にすんばらしい!その核たるUSエモの熱い濁流に、初期にはやや呪術的な、中期以降では一貫して劇的な装飾/展開を持ち込んでいるTOD。持ち味のドラマティックなサウンドから、うまくクドさが取れた前作の流れを踏襲し、かつ今作ではアルバムトータルでうねり立つ世界観に、よりいっそうフォーカスが合っている。それをプログレッシヴだと言っていいのかわからんが、あきらかにトラック単体よりもトータルでのインパクトがキワ立っている楽曲群。アガり、急降下し、大旋回し回転するその全てでもって「世界」を成すジェットコースターのような展開は、その意味では初期頃に感じた興奮も再燃させる。スタジアムクラスの雄大なメロディラインを完全に掌握したサウンドは、随所で劇的な炸裂を見せながら、カタルティックな興奮を刻印するように叩きつけ、叩きつけしながら突き進む。

ちなみに2枚組のLimited Editionでは、トータルがPart1(35:50)とPart2(16:32)に大別された仕様の特別盤が付いており、そんなとこからも今作の「見せ方」へのコダワリが伺える(DISC2にはボートラとしてPart1部のデモテイク30分超を収録)。先に「プログレッシヴ」の形容を躊躇ったのは、そのフレーズに漠然と付随する様式的なムダがここには皆無だから。間口の広いメジャーなスケール感と、濁流のように押し寄せるグルーヴが最高のバランスで結びついた、既発アルバムの中でも屈指の快作。Conradの手によるジャケットは好みから外れるが、それも踏まえてオススメできる、無二の世界に撃ち抜かれる快作!

http://www.myspace.com/trailofdead



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