TITUS ANDRONICUS/The Airing Of Grievances

★★★★☆

USニュージャージー州/グレンロックの5人組による1stフル。ワタクシ、既に十代のガキンチョって頃でもないんだが、ここには思わず我を忘れさせ、身体を突き動かす鮮やかな衝動が詰まってた。

カテゴライズすらなら、パンク/ガレージ。なんだけど、満ちているのは圧倒的に陽なる熱量。自分の浅い引き出しから例えるなら、Flogging MollyやDropkick Murphysあたりの情熱的で豪快で爆発的な熱気に満ちた空間も連想したり。

遠く響く弾き語りののち、爆発的に音が溢れ出す"Fear〜"に始まって、全9曲/45分を熱い音塊がノンストップで疾走。大胆なストリングスや時に混声合唱をも織り込んだ畳み掛けるようなアプローチは、パンキッシュに突き抜けたArcade Fireみたいでもある。だけどもその辺の装飾がキモにはならず、いわば完全に舞台照明役に徹して聴こえるところが決定的に違う。

スポットライトに照らされたステージに浮かぶは、Liam Bestonの圧倒的なヴォーカル。叫び、ガナリ立て、情熱的に歌い上げるその存在感は別格。シンプルなコード編成の裏では、ハーモニカや鍵盤による意外に凝った音作りがされてるんだけど、このヴォーカルが見事にそれをブチ壊す。ワンマン・バンドって意味ではない。なんというか、愛する悪ガキのために全員で丁寧に砂の城を築き上げ「さぁ思う存分壊せよ」って言ってるような連帯感。最高のヴォーカリストと至福のメロディをかき鳴らすバンド陣による、シンプルで最上のロックンロール。意外な地点からヤラレタ感のある快作!

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The Monitor

★★★★☆

この2ヶ月、我が家のスピーカーを占拠し猛烈な勢いでロールしているUSニュージャージー発のインディ・パンク/Titus Andronicusの2ndフル。

コンセプトは南北戦争だッ!という時点でぶっ飛んでるが(ちなみにタイトルは当時用いられた合衆国海軍の装甲艦のことらしい)、クレジットを見やればトータルで20を超える人間が参加しての音楽劇。そらもうごっつい頭でっかちになりそうなもんだが、どっこいサウンドの奔りっぷりは微塵も変わらず、クソ熱い!冒頭、何者かが騙るAbraham Lincolnの演説により幕を開け、随所で高名なるスピーチを織り込み演出しながらぶっ飛ばす。バタつくドラム、かき鳴らされるギター、そしてモロくその勢いでワメき叫ぶヴォーカルが巻き起こすプリミティヴで激ノイジーな、胸を鷲掴み打つ感情の嵐。最っ高に熱いメロの反復から、爆発的に増幅する分厚い音の奔流に吹っ飛ばされる"Richard II"、駆け抜けるリズム/これぞアメリカ!を思わせる鍵盤の煌きっぷりに胸躍る"A Pot In Which To Piss"、吹き鳴らされるバグパイプ共々、アイリッシュなフレーズが全開するラスト"The Battle Of Hampton Roads"での昂揚感などなど、全10トラック/60分超を何度も何度も聴かせ切り、そのたびに褪せぬ昂揚を叩き込む傑作。ドでかいコンセプトに呑まれず逆にその大波を乗りこなすような、こんなエキサイティングなアルバムは滅多にない。

Myspace
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