THE STILLS/Logic Will Break Your Heart

★★★☆

カナダのモントリオールで結成された4人組バンド。これがデビューアルバムだそうで、結構あちこちで話題になっていたので購入。音のほうはというと、きらきらしたUKギターロックが好きな人は気に入るだろうなぁって感じですね(実は買うまでCoral系サウンドのバンドだと勝手に思い込んでいたんですが、全然違った・・・。)

Tr.1、"Lola Stars And Stripes"でいきなり祝祭のように輝くギターサウンドがパーっと広がります。Tr.2の"Gender Bombs"でも感じたんですが、この空気中に溶け込むように鳴り響くギターサウンドを含め、音響空間の雰囲気がLongwaveに似てます。ただ、このStillsのほうがLongwaveよりも「歌」に重点を置いている感じで、先のTr.1にしてもサビの「lola...lola...」のフレーズで結構グッときます。Tr.7"Let's Roll"も同じ系統のサウンドで、「Let's Roll...」とりフレインしながら飛翔していくこの曲は、将来彼らのアンセムソングになりそう。他にもSmithやCureっぽい曲とか、エレクトロニカ要素の少ないNew Orderみたいな曲もあったりして、個人的にはけっこう好きな感じ。

難を挙げるとすれば、サウンド的にドラムが結構前に出てきてるわりにはそのリズムが単調なのが気になるところ。あと、アルバム前半の流れに対して後半ちょっとしんどいかな、といった所でしょうか。でもこれからコンスタントに良い曲作っていきそうなバンドなので、ゆっくり頑張っていって欲しいです。

Without Feathers

★★★★

前作から3年。幾多の確執、それに伴うメンバーチェンジを経てリリースされたモントリオールの5人組/The Stillsの2nd。化けた。これはほとんど別バンドかのようだ。

徹底的に澄み渡る叙情性を、凛とした夜気の中へと拡散させた前作に対し、今作は生身の人間の息吹をモロに感じさせる、良い意味にロウで、祝祭的な響きを孕んだアルバムだ。前作でのオープンニング"Lola Stars〜"で見せた、キラキラと宙空に舞い散るクリアギターに変え、極めてジャングリーなギターワークとバウンシーなリズム隊、そして背後で気品に満ちたヴェールを形成するキーボードが絡み合うTr.1"In The Beginning"が、その音の激変ぶりをまざまざと感じさせる。何てオーガニックなんだろう。根源的な部分で人間性を肯定する、祝祭的な響きを孕んだTr.6"Oh Shoplfter"を始め、Broken Social SceneやAracade Fireといった同郷バンドに通じる楽曲が多く見られる。ちなみに今作からBSS絡みのメンバーがキーボード奏者として迎え入れられているが、その鍵盤の旋律が炸裂し、一気に駆け抜けるドラミングや歓喜のブラスセクション、メランコリックなメロディと絡み合うTr.9"It Takes Time"において、かつてないダイナミズムを産み出している。

"Without Feathers"
タイトルはウディ・アレンの古典作品に対するトリビュートによるとのことだ。しかし、舞い落ちる無数の羽毛を冠した前作に対し、燃え落ちる花束により飾られた今作のジャケ写を見るだに、これが暗に意味するところは明らか。見せかけだけの華やかさに満ち、皮肉にもその刹那的本質だけは共通項として持ち合わせてしまっている80sリヴァイバル・ムーヴメントへのアンチ・テーゼ、そして決別を示すかのような今作。一瞬の拡散がもたらす飛翔感を代償に、有機的に組成されていくアンサンブルによって莫大な昂揚感を沸きあがらせることに成功した、何とも野心的な良盤。

www.myspace.com/thestills



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