THE SECRET MACHINES/September 000

★★★★

インディー時代の6曲入りミニ(?)アルバム。ライブで演っていた曲(のちにこのアルバムTr.5収録のものと判明)の素晴らしさに惹かれて購入。この作品、先に紹介した「Now Here Is Nowhere」とはかなり音の質感が異なります。

暗闇の中で静かに明滅するキーボードの単音が何度も何度も繰り返され、その空間へ溶け込むようにディストーションギターがいつしかサウンドの深淵から忍び寄り、そして全てを包み込むように炸裂するTr.1"Malconi's Radio"。そんなポストロック的手法に加え、ボーカルもまた枯れ系バンドのそれに近い非常にエモーショナルで渋〜い声。さらにドラムスも「Now Here〜」で聴ける大気をビリビリと震わせるようなダイナミックスタイルではなく、小技の効いたドライブ感のある演奏(特にTr.2ではベースと共にミニマルな手法で気持の良いグルーヴを生み出している)。

良い意味で非常にインディーチックな音作りながら、既にその音の持つ空間的な広がりは相当なもの。ライブでの雰囲気はこの作品にこそよく現れてると思う。良いです。

Now Here Is Nowhere

★★★★

テキサスはダラスのトリオ、The Secret Machinesのメジャーデビューアルバム。各所で「ボンゾばりのドラマーが存在するバンド!」と書かれているのを見るとさすがに言い過ぎな感じはするが、確かにBenjamin Curtisの叩き出すリズムにまず注意を引き付けられた。

数秒の空白の後、いきなり炸裂するドラムスにより幕を開けるオープニングトラック"First Wave Intact"は9分にも及ぶ大曲。大気中に拡散するように鳴り響くエレキギターと背後の空間をスペーシーに塗りつぶしていくシンセの音色、ゆったりと歌い上げるボーカルJosh Garzaの声により導かれ、次第にリズムは加速。とても3人編成とは思えない分厚い音の渦に聴き手を引きずり込みながらこの長尺ナンバーを聴かせきる力量は中々のもの。一方でTr.4"Nowhere Again"では、思わず飛び跳ねてしまいそうな軽快に疾走するシンプルなロックサウンドが鳴らされ、かと思えば「狂気」期のピンクフロイドのような音空間を展開するTr.6"Pharanoh's Daughter"が飛び出してきたりと、多彩な曲群が存在しながらも全編に渡って自分たちのカラーがしっかりと存在する作品。

Ten Silver Drops

★★★★

ミニアルバムを含めれば今作が3枚目となるSecret Machinesの新譜。その音の形容にCANやKraftworkの名が用いられ、クラウトロックばりのリズムが取り沙汰された前作に対し、今作では彼らの持つ広大な空間形成能力が、より強く全面に打ち出されているように感じられる。

オープニングトラック"Alone, Jealous And Stoned"
柔らかなメロディで空間を揺らすキーボードを主に、軸のぶれないドラミングが粛々と積み上げられ、スペーシーなギターリフが嫋やかに織り込まれていく。貫禄さえ漂う雄大で温かな空間は、ピンク・フロイドさえも引き合いに出したくなるような、心地よくスケールのでかい世界を創造している。ミニマリズムの反復により莫大なグルーヴを形成し、ジワジワと湧き上がる轟音に飲み込まれるTr.5"Daddy's In The Doldrums"のような前作譲りの展開もまた同様に素晴らしいが、やはり今作で目がいくのはその温かくエモーショナルなメロディと、広大な空間の敷設能力。

肥大した、とさえ感じた当初の印象に相反し、聞き込むほどに引き込まれていった今作。欲をいえばアルバム全体で1つの世界観を提示して欲しかったのと、このヘンテコなジャケをどうにかしてほしかったことぐらいか。試聴機での流れ聴きではちょっと本質を掴みにくいかもしれないけれど、何気にかなり良い作品だと思います。

http://www.myspace.com/secretmachines



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