SEACHANGE/Lay Of The Land

★★★★☆

UKはノッティンガムの6人組、Seachangeの1st。マタドールと契約したUKのバンドはベルセバ、アラブストラップ以来とのこと。全く期待せずに買ったんですが意外や意外、かなり良いですこのアルバム。「Hives並にキャッチーで切れ味鋭いギターリフと時折ブチ切れた絶叫をかますボーカル」と書くと、”あぁまたその手のバンドか”と思われてしまいそうですが、Seachangeのサウンドは昨今のガレージバンドとは全く毛色が異なります。

メンバーがその影響を口にする、Sonic Youth譲りの刹那的な雰囲気の乾いたギターリフがかき鳴らされ、時にその背後を一気に塗りつぶしていくシューゲばりの轟音サウンドがかなり異質、かつこのバンドの最大の特徴でもあります。曲調にしても、Strokesを連想させるスカスカでキャッチーな音が飛び出したかと思えば、グランジ直系の暗い闇をまとったへヴィな曲(Tr.1"Anglokana"、Tr.11"Come On Sister"など。メンバーはやはりNirvanaもかなり好きらしい。)もあったりと、一括りでは定義できない面白さがあります。階層を成しながら、クライマックスに向けて段階的にその厚みを増していく轟音の壁が本当にカッコ良い。情感豊かに奏でられ、全編に渡って曲群に格段の深みを与えているヴァイオリンやチェロの響きもまたこのバンドの魅力。

激情的かつ知的なサウンドは、UKよりはUSインディー的。聴き込むほどに引き込まれる、中毒性の高いアルバムでもあります。最近のTrail Of Deadが好きな人にもお薦めできると思います。
http://www.matadorrecords.com/seachange/ecards/0404/#

On Fire, With Love

★★★★

ヒンヤリとした、英国バンドに特有の翳り
グランジの持つ破滅的な闇
刹那の激情をかき鳴らす
Sonic Youth系譜の乾いた轟音ギター

この3者が同居するバンド、Seachange。
前作から2年、待望の2ndアルバムをリリース。

デビュー盤において所々に在った、深淵な闇をどこまでも掘り進めていくかのようなダークでへヴィな側面は幾分その鳴りを潜め、代わって彼らの大きな武器の一つであるタイトかつアグレッシブなバンド・アンサンブルが、鋭利な刃物を思わせる峻烈さで空間を切り刻んでいく。

キャッチーなメロディを、背後に秘められた底知れぬ憂い/余りある焦燥の気配と共に暴力的なギターノイズに乗せて吐き出していくTr.5"The Key"での畳み掛けるような展開、豊かなシンセのヴェールが昂揚に満ちた憧憬の念を掻き立てるTr.6"Shooting Arrows"、激しい情感を迸らせながら、クライマックスへ向けて次第に厚みを増していく轟音ギターの壁が立ち現れる"No Backward Glances"など、独自の音のカラーはそのままに、メロディセンスに一層の磨きがかかった素晴らしい作品。

現段階ではメールオーダーのみ、オフィシャルでのリリース予定は立っていない本作。これだけの良質な作品が多くの目に触れることなく埋もれてしまう、といった事態にならないことを祈る。そしていつの日にか、この轟音の壁が日本の地で打ち立てられる日を夢見て。

http://www.myspace.com/seachangemusic
http://www.seachangemusic.com/