凛として時雨/Inspiration Is Dead

★★★★

埼玉の3ピース、凛として時雨の2ndフル。空間を鮮やかにエグるアンサンブルに、選び取られた言葉が描くキレイな崩壊感。そこまで特異なことはやってないはずなんだけど、高い演奏スキルが可能にする皮膚レベルの感覚表現が、とても鮮烈。

しかし演奏巧いなー。高域をツンザクギターに、押さえ所をしっかりわかってるベースプレイ、各所で強烈にロールするドラムの掛け合いがガッチリ組んで、クルクルクルと目まぐるしく転回。神経を逆さに撫で上げるTKのカナキリ・ヴォイスがナーバスなテンションを敷き詰め、キャッチーなメロで切り込む345の女声が鮮やかにそれを解放していく展開が、なんとも劇的。

序盤3曲ででガッと飛ばし、華々しい炸裂を繰り返し見せ付けながらTr.4"Knife Vacation"で一つ目のクライマックス。しばしスローに落とし込み、Tr.8"I Not Crazy Am You Are"で再び激しく壊れた部分を打ち出していくサマがかなり格好良い(この曲ラストでギターがあげる咆哮は鳥肌もの)。全42分があっという間に跳んでいく。

うまく言えないんだけど、単純に音に厚みが出たってこと以上に、バンドが持つ独特のエモーションが前作よりダイレクトに刺さってくるように感じた。それもあってか、個人的にはそのタイトル/歌詞/メロディの色んな部分で、あとちょっとした一線を越えた途端、一気に聴くのが恥ずかしくなりそうなクサさも感じるんだけど、そのギリギリ感が今は結構な中毒性として作用しているような気がする。ついでに言うと、今作はメロディ/フレーズとして印象に残っている部分が多いのでこれから飽きるかもしれんのだけど、現時点ではウヒャーめっちゃ格好ええ!というのが率直な感想。

Buy

Just A Moment

★★★★

前作から1年9ヶ月、知らん間にメジャーへと移籍していたバンドの、その移籍後一発目となる3rdアルバム。キワドイまでに研ぎ澄まされた情感が、異常な過激さをマークする複雑な構成下に突き刺さる。この唯一無二、ギリギリのテンションはやっぱたまらん。

開始早々、MAXIMUMブーストで音が狂い咲く。悲痛なまでに感傷的なフレーズが宙空に踊り、乱舞するギターの/リズムの白刃がズタズタに切り裂いて捨て置き魅せる異形の昂揚。耽美というよりナルシスティックな内向を匂わすTKのヴォイス/詞に、半ばあざといまでのキャッチーさで切り込む345の女声、そして時に生臭いまでの手数/リズムで叩きまくるピエールのドラムと、単体で見れば好きになりっこないはずのパーツ/パーツが、しかし合算すれば途端に魅力的/刺激的に映る不思議さよ。

そのキワドイ感覚を張り詰めながら、既に堂々たるナチュラルさで繰り広げられる劇的な音の空中戦。異種フレーズ/リズムの混合に加え、音像の振れ幅自体も増した今作は、その相乗でコチラの耳を昂揚を存分に揉みしだく。もっぱら狂騒と凪のコントラストで魅せていた前作よりも、全体が一本線上でスッと流れて響くのはそのためかしら。過激な表出部も含めて一連の滑らかなダンサンブルに溶かし込む"A 7days Wonder"が個人的なベストトラック。オールインストにて素敵な轟音whirlpoolを生む"A Over Die"も凄く良い。リリカルな大輪が首を垂れるラスト2トラックがやや重たすぎるキライはあるけれど、全体としては前作同様か、それ以上の充実を感じる快作。

Buy

Still A Sigure Virgin?

★★★★☆

メジャー2作目、1年と4ヶ月のスパンでリリースされた4thアルバム。

全9トラックの鮮やかで、痛烈な衝撃。過去最強にキワ立つテンションと突き抜けた情感が鼓膜を襲う感覚に、痺れるような興奮が背筋を駆け昇る。これはもう、文句のつけようがどこにも無い。焦燥と崩壊の感覚を核にした、攻撃的で、ナイーヴな音の結晶。くるくると転回するギターはエレクトリックな情感を過激なまでに塗り込め放埓に解き放ち、リズム/フレーズ面からサウンドを魅惑に肉づけるベース、全ての爆心地たるドラムが鬩ぎ合い、狂い咲く。

アルバムを貫く破壊的なアタック感と、感覚中枢を鷲掴む情感豊かなフレーズの遊泳が、最高のバランスで全編を貫いている。個人的に最も好きなEP"Feeling Your Ufo"に近いこの感覚に、ただただ興奮。恥ずかしくなるぐらいにリピート中。

Myspace
Buy