POISON THE WELL/Versions

★★★★

杜塚さんのレビューに惹かれ購入した、USフロリダの直情型ハードコアバンドの4th。個人的には初聴なので分からないが、幾つかのレビューを見る限り、前作とはだいぶ音が変わっているらしい。

のっけからフルスロットルの怒号。このヴォーカルのインパクトは、、、思わず御口が半開き。あらゆる負の因子を炸裂させるJeffrey Moreiraの絶叫歌唱は、否定的感情が内包する途轍も無い破壊力を、まざまざと感じさせる。

例えるならそれは、鎖で身体をガンジガラメに拘束され、その眼前で肉親を殺められんとする獣の咆哮のようであり、その捨て身の絶叫は、思わず抱きしめたくなるような痛々しさを感じさせる。当たり前のように完璧な演奏を奏でる各器楽の激しい鳴りっぷりさえも、ここでは楽曲を盛り立てるというより、このヴォーカルの破滅的突撃を食い止めるべく後ろから羽交い絞めにするかのような、ストッパー的存在と化して聴こえるぐらい、この声が放つ熱量は凄まじい。

一方で、『惨劇は笑劇にリンクする』という格言があるように(いや、正確なところは知らないが、そういった意味の言葉がね)、余りにもネガティヴな音の炸裂っぷりは、言わば実世界の感情と余りにも乖離しておりクロスせず、逆に聴いていて非常に愉快な昂揚を掻き立ててくるようにも感じられる。

『夕暮れの荒野へ向かい、決して戻らぬモノを思い嘆き大絶叫、夜は失った其を思い、悔恨の情で枕を塗らす』ようなTr.4"The Notches That Create Your Headboard"から、『そんな夜を越し朝を迎え、さて、気を取り直して今日も叫ぶか!』と、カチリ場を切り替え突っ走るTr.5"Pleadomg Post"へ連なる流れなどは、なんというか、思わず笑ってしまうほどのコミカルさを感じたり。

ファストな混沌ナンバーから、スローテンポの叙情色濃い楽曲まで、ヴァラエティに富んだ全41分を、件の声にて完璧に纏め上げ聴かせきる作品のクオリティは、たぶんかなり高い。苦手なモノが多いこの畑のジャンルの中で、珍しく個人的にツボに入った一枚です。

http://www.myspace.com/poisonthewell