PARTS & LABOR/Stay Afraid

★★★★

ポップな爆音ノイズをブチかますブルックリンの3ピース、P&Lの2ndアルバム。とにもかくにも突き抜けた、このウォール・オブ・ノイジーサウンドの気持ち良さ!

叩き、叩いて、叩きまくる爆裂ドラムに、歓喜的なノイズでもってラッシュをかけるハイパーなギターワークが踊り狂い、合わせてツイストするエレクトロニカは鮮やかに空間を彩り、ディストートされたボーカルがトドメとばかりに昂揚中枢を強烈にアジテートする。とんでもなくノイジーでありながら、素晴らしくポップでキャッチーなメロにより、突き抜けた陽性の昂揚感を撒き散らしながら驀進するサウンドが、ちょっと最近なかったぐらい爽快にテンプルを側撃、揺らし、奮わせる。

Lightning Boltのハイパーサウンドを、強烈なポップネスにより牽引していくかのような楽曲群は、どれも潔いまでに突き抜け、刺激に満ちて、脳内に鳴り響く。このノイズ⇔ポップのバランスは個人的にドツボ。ベストソングはTr.8"Springtime Hibernation"。祝祭の如きエレクトロニカが飛び交い、爆裂ドラムが歓喜を増幅、絶妙にエスニックなメロディが歌われる様は、さながらノイズ塗れのDropkick Murphysと言ったところか。ライブが物凄く観てみたい!
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Mapmaker

★★★★

前作から1年余りでリリースされた07年発3rd。ドラマーのChris在籍時最後の作品となるのだが、のっけから「このアルバムでの主役はオレ!」と言わんばかりのアッパーなビートが打ちまくられる。

今でもライブのオープニングを飾ることの多い"Fractured Skies"は、爆竹のように発破するリズムと滑空するギター/シンセ、そして高らかに飛翔するヴォーカルの高揚感が渾然とする激良ナンバー。過激なノイズをぶっちゃけながら、一瞬後に浮上するメロディのエモさに瞬殺される"Brighter Days"、精緻さを増したドラムに対し、ノイジーな触れ幅を増したインストゥルメンタルが咆哮する"The Gold We're Digging"や"New Crimes"でもそのメロディの蒼さと熱さがとにかくヤバい!その勢いは後半にきても衰えず、ウエスターンなギターを基調にマジカルでドリーミーな荒野を駆け抜ける"Fake Rain"で完全にぶっ飛ばされる。中近東な旋律も織り込みながら壮大な爆音を炸裂させるラスト"Knives And Pencils"で賑やかにクライマックス。

エクスペリメンタルなノイズ⇔エモーショナルなメロディの振り子を、その陽性のグッド・メロディへとちょい傾けてみせた好アルバム。また次作ではその方向をグッと転換してみせるわけだけど、今作は今作で、ここにしかない良質のエモーションが詰まっております。
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Receivers

★★★★☆

08年リリースの4thアルバム。ドラマーの交代と新たに女性ギタリストを迎えてレコーディングされた本作は、バンドの一つのターニングポイントとも見える大きな変化を見せている。

その変化を一言で言うなら「ハーモニーの向上」
無数のパルスがぶつかり合う「刺激」や「アジテーション」が目だっていた従来と比べて、格段に空間的な調和を増した楽曲群は、彼ら本来の素晴らしいメロディラインを何よりも強く描き出す方向にシフトした。

これまでその手数の多さやエネルギッシュな律動をたたき出していたドラムは、今作ではむしろクラウトロックを思わせる端正なリズムで滑り出す。祝祭的な輝きを増したメロディは、疾走するリズムや湧き起こるフレーズに乗って増幅し、随所でドラマティックな昂揚感を炸裂させ、美しい残響の余韻を置き土産に遷っていくのだ。初っ端の"Satelite"の輝かしい興奮に打ち上げられ、美しいレールの上を疾走し続ける全7トラック/35分間。今のところ、彼らの作品の中で最も好きな作品がコレ。
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Constant Future

★★★★

再びトリオ編成に戻ってレコーディングされた2011年発の5thアルバム。

そしてプロデューサーにはDAVE FRIDMANN。ハーモニックな音響空間が素晴らしい昂揚を生んでいた前作からの流れを見れば、この起用は必然だったかも。珠玉のメロと美しいノイズが織り成す音の祝祭。やや長めの尺で占められていた前作と比べ、各トラックはコンパクトに纏められ、纏められた分その色合いを増し、ヴァラエティに富んだエモーションを鳴らしている。

ファンタジックな電子音(脳内イメージとしては、変則的なステップを踏みながら森からゴブリンがワラワラ出てくるハッピーな感じ)が耳を惹く"Echo Chamber"、デイヴ・マジックとも言えるひしゃげた美しいノイズが積算し、そこへ旋回するリリックが重なる"Rest"、さらに個人的なベストトラック"Hurricane"では、完全に調和されたメロディとノイズ、ノスタルジックな韻律の洪水に魅了される。まさにあっという間に吹き抜けていくカラフルで賑やかな音の風。後にはなんだか無性に嬉しくなるような興奮が残りマス。彼らが持つ、掛け値なしのグッドメロディと上を向く強さに溢れた好アルバム。

Myspace
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