NIK BARTSCH'S RONIN/Holon

★★★★

スイス出身の作曲家/ピアニスト、Nik Bartsch率いるRoninの通算5作目。杜塚さんのレビューを見て知った作品。

尋常でない緊迫を湛えたミニマル・ミュージックは、さながら妖めく光彩を放つ鉱石のよう。激しく無機質なフレーズから、リリカルな旋律までを往き来するピアノを主体に、ドラム/パーカスが冷たく澄んだリズムを叩いていく。バス・クラリネットと同調した重いウネリから、刺すようなスラッピングの煌きまでを魅せるベース・プレイが非常に強く印象的。

等しく聴き手を恍惚へと誘うものながら、ここで行われる透徹した音の『反復』は、意識を混濁ではなく覚醒へと連れていく。ストイックに組み上げられていく奇数拍子の音像は、冷え冷えと拒絶的なようでいて、その実かなり直接的に身体へ作用する。硬質の中に在り、惹きつけてやまない情感。アルトサックスが蜃気楼のように揺れる"Modul 45"はじめ、随所で小憎い色づけを行いながら、全体は一つの幻想めいたヴェールで包みこんでおり放さない。

にしても、スティックの一打やピアノの一閃がここまで鮮烈に飛び込んでくる音像には、かなり斬新で詩的な刺激を受けた。高い演奏スキルとアーティスティックな感覚が、理想的な結びつきを魅せている素晴らしい作品。

http://www.myspace.com/nikbaertschsronin