MY VITRIOL/Finelines

★★★★

UK新世代と銘打たれて登場したロンドンベースの4人組、MY VITRIOL。何をもって新世代と言っているのか、ということは置いといて、このCDはなかなかに強烈な印象を放っている。

冒頭一曲目の"Alpha Waves"では、極限まで歪ませたギター音が地鳴りのように轟き、その上を別の流麗なギター音が漂い、アルバムの世界へと導かれる。そしてその流れに乗ったまま、いきなりこのアルバムのベストトラックとも言えるTr.2"Always Your Way"のイントロへとなだれ込む。UKバンドらしい憂いを持ったメロディーが、NIRVANAやFOO FIGHTERSのようなUSバンドからの影響を感じさせる極太なリフとたたみかけるようなグルーヴを伴ったギターの洪水と共に押し寄せてくる。ボーカルSomの胸を焼き焦がすような声と、スリリングに疾走していく曲調が最高に気持ち良い。彼らの鳴らす音は、脳裏に青い炎を浮かび上がらせるような、激情を伴いながらも鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた冷たさを感じさせる。合間合間でうまく挿入されるインストナンバーも、彼らの世界観をうまく引き立てている。

ただ、短いインストナンバーが何曲か含まれていることを考慮しても、全部で16曲というヴォリュームは少々多すぎる。個々の曲のクオリティーは高いし、それなりにメリハリもあるが、個人的にはTr.10のインストナンバーで締めるぐらいの長さでも良かったかなとは思う。厳しめに評価したが、物凄くかっこいいアルバムだし、かなり好きなバンド。

Cast In Amber

★★★★

01年の1stアルバムリリース後、かなり長期に渡る沈黙を続けてきたMy Vitriol。その間、何度か浮かんでは消えを繰返していた新譜の噂。それがようやっと真実味を帯びてきた。今作は、その再始動を裏付けるべくリリースされたライブ盤。バンドが05年に行ったシークレット・ライブ/全11曲が収められている。

強烈な激情迸らせ、しかし同時に蒼い炎を思わせる冷ややかな爆音が昂然と鳴り響く。鉛色の鈍い煌めきと底深い酩酊感。空気を激しく震わせ引き裂く暴力的な音塊と、胸を焦がすメロディの感傷性が入り混じった爆音は、何度聴いてもその度に、異常に鮮やかな印象を刻みつけてくる。

グランジ色の強いシューゲイザー、と一言で形容するにはあまりにも多くのモノを内包した、様々に相反するピースが混合して溢れ出すそのサウンド。ここに収められたライブの録音レベル/内容それ自体に、図抜けた何かがあるわけではないが、ブルーライトに照らされ浮かび上がるメンバー/ステージが眼前に浮かびあがるような、なんとも生々しい空気を感じることが出来る。

また本作には、来る新作のサンプル曲が併録されている。極めて断片的なため、ココからその全貌を伺うことは難しいが、空間を舐め尽くす蒼きフィードバックノイズ/冷たい闇に明滅するメランコリックなメロディの濁流が生み出す、憧憬と衝動の入り混じった複雑にして激烈な昂揚感は、全く褪せずに在り続けているように感じられた。そのリリースが今から非常に楽しみです。

http://www.myspace.com/myvitriol



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